高槻先輩と嫁
◆千尋視点◆
ーーーこの日は高槻先輩と一緒に寮に帰った。
「千尋。どうしてお前は無鉄砲なんだ。生徒会には関わるなと俺も委員長もずっと言っていただろう。」
こんこんと高槻仏陀の説教が続いていた。ちょっとゲンナリしてきた俺は、ぽそっと呟いた。
「明日、高槻先輩のお弁当も作りますから。それで許してくんない?」
「・・・。」
高槻先輩がピタっと立ち止まった。
「?」
俺は先輩を振り返って見た。あれ?ちょっと赤くなってる?
「お、お弁当?」
「明日、風紀室でお昼食べるでしょ。お弁当作ろうかなぁって思って。」
「俺のも?」
「えっと、よければ・・・。」
お。機嫌良くなった?
「コンビニ寄って帰りましょうよ。なんか食べたいものありますか?」
「なんでもいいよ。」
「なんでもいいが一番困るって。」俺は笑って言った。
コンビニに入り、高槻先輩がカゴを持ってついてきた。
「やっぱり豚生姜焼きがいいですか?」
「千尋が作ってくれる料理、他にも食べてみたい。」
「そっすか。」
なんにしようかなぁ。久しぶりにお弁当作るからなぁ。まぁ、おおざっぱなのしか作れないけどね。
俺は鶏肉やジャガイモやらカゴに入れてった。
「お菓子コーナーも寄っていっていいですか?」
「いいぞ。」
高槻先輩と一緒にお菓子コーナーに行った。俺はしゃがんで駄菓子の棚をチェックする。ブラックサンダーの新しいやつあるかな?
「千尋はこれ好きだよな。」
俺の斜め後ろにしゃがんだ高槻先輩が手を伸ばしてブラックサンダーを手に取った。
「美味しいでしょ。大きさも小腹が減ったときにちょうどいいし。」
「俺はこれだな。」
高槻先輩はリッツのチーズ挟んであるやつの小袋を取った。
「高槻先輩、塩気系好きですよね。」
「そうだなぁ。」
俺はふいと高槻先輩の方を向いた。思ったより顔が近くにあった。俺と高槻先輩はお菓子の棚の前にしゃがんで、内緒話でもしてるみたいに顔を寄せ合ってた。
「・・・千尋。」
高槻先輩がじっと俺の顔を見ていた。
「こんなとこでいちゃついてんじゃねぇよ。」
「あっ。委員長。」
ハリウッド委員長が呆れたように言った。
「い、いちゃついてなんかいません!」
高槻先輩が慌てて立ち上がった。俺はしゃがんだまま委員長を見上げた。
「委員長。なにしてんの?」
「小腹が減ったんでな。ちょっと買い食いだ。」
カゴの中を見て「お。また姫の手料理か。いいなぁ、俺も嫁が欲しい。」と言った。
俺は立ち上がって言った。
「嫁って言うな。明日のお弁当用ですよ。委員長のも作りましょうか?」
「マジか!」
2人も3人も一緒だ。委員長にはなんだかんだ世話になってるしなぁ。
「やった。俺も愛妻弁当だ。」
「たいしたもん作れませんよ。」
「かまわねぇよ。」
お弁当の約束をしてコンビニの前で別れた。委員長は笑って校舎の方へ帰ってった。
「・・・。」
「高槻先輩?」
あれ?なんか機嫌悪い?難しいなぁ。最近の1仏陀高槻は。
買い物袋は高槻先輩が持ってくれた。俺と高槻先輩は一緒に寮に帰った。
晩ご飯に親子丼を作ったら、高槻先輩の機嫌が良くなった。
なんだ。お腹空いてたんだな。高槻先輩。
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ーーー翌朝。
昨夜、メインのおかずは作っといたし、簡単なおかずをちゃちゃっと作ってタッパーに詰めた。
高槻先輩が手伝おうかって聞いてきたので、「じゃあ、おにぎりお願いします。」って頼んだけど・・・。
「あちっ!」
炊きたてご飯に悪戦苦闘していた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ・・・っ!」
ぎこちない手つきで、握ったおにぎりはというと・・・
ナンダコレ?幼稚園児の作品かよって感じだ。
「高槻先輩、やっぱりいいです。コーヒーでも入れてください。」
思わず笑って言ったら、高槻先輩がしょんぼりした顔になった。ああ、もう。しょうがないなぁ、この残念イケメンめ。
「ホラ。あーんして。」
俺はおかずの卵焼きをひとつ、高槻先輩に差し出した。
「ち、千尋・・・。」
「ん。」
高槻先輩がおずおずと口を開けた。猫舌だったっけ?熱くないのになぁ。高槻先輩の口に卵焼きを放り込む。麺つゆと万能ネギ入りの卵焼きだ。
「どうですか?」
「・・・美味しいよ。」
「よかった。」
俺はニカっと笑って、残りのおにぎりを握る。このぶちゃいくな高槻おにぎりはさすがに弁当に入れられない。後で俺が食べておこう。
高槻先輩が俺の肩越しにじっと見ていた。近いなぁ。ちょっと邪魔だ。
「高槻先輩。ほら、トーストとコーヒーセットして。」
「あ、ああ。」
ようやく離れてった。おにぎり握ってるの見て楽しいのかな?
おにぎりも全部詰め終えて、ひと息吐いた。
高槻先輩がセットしてた朝食のトーストも丁度いいタイミングで焼きあがった。お皿にトーストをのせた高槻先輩が振り返って、ぎょっとした声を出した。
「千尋!」
「ふぁい?」
俺は高槻先輩のぶちゃいくなおにぎりを食べてたとこだ。
「そんなの食べなくていいから。」
高槻先輩はダイニングテーブルにお皿を置いて、慌てて俺の手首を掴んだ。けど、もう食べちゃったよ。
「美味しいですよ?」
俺は高槻先輩に手首を掴まれたまま、指に付いた米粒を舐めた。
「・・・っ!」
米粒も無駄にしちゃいけないからね。俺はちゅっと指を舐めて、きれいに食べた。
「ごちそうさま。高槻先輩。」
そう言って笑ったら、掴まれたままの手首をぎゅっと強く握られた。
「んっ・・・なに?」
強い強い。力強い。何なんだよ。自分で食べたかったのかな?
「千尋・・・。」
部屋のチャイムが鳴った。
「あ。委員長かも。」
高槻先輩は、ハッとした顔をして玄関に向かった。なんだったんだ。
「おお。いい匂いがしてるじゃねぇか。」
「おはよう。委員長。今朝は早いですね。」
「弁当が楽しみでな。」
小学校の遠足かよ。委員長はタッパーのフタをぱかっと開けて、唐揚げをひょいっと摘んでつまみ食いした。
「あ!コラ。」
「美味いじゃないか。いい嫁になれるぞ。」と、俺の頭を撫で回した。
「ちょ、やめろってば!」
「委員長!大人しく座ってください。」
「西宮みたいに言うなよ。高槻、俺もパン焼いてくれ。」
「・・・分かりました。」
そうして、3人で今朝は賑やかな朝食になったのだった。




