千尋と放課後
昼飯を食べ終えて、食堂を出る時に
「今日は生徒会のメンバー、食堂に来なかったなぁ。」
と、園田がつぶやいた。
俺は高槻先輩の言葉を思い出す。
「高槻先輩に生徒会の奴らには近付くなって言われたんだけど、なんで?」
園田が、あ~ってゆう顔をして
「実はね・・・」
と、言いかけたのを美村が止めた。
「ストップ。変な先入観植えつけちゃうから、直接見るまでは黙ってた方がいいよ~。」
ーーーああ、確かにそうかも。
美村の言葉に、俺は納得した。
高槻先輩のこともあるしね。
美村と園田がこしょこしょ話してる内容は聞こえて無かった。
「それに、何にも知らないでエンカウントした方が、面白いもの見れるかもよ?園ちゃん。」
「美村くん、ナイス!」
ーーー保健室事件以外は問題なく、初日は終わった。
放課後、俺は教室で高槻先輩を待つ。
「高槻先輩、来るの?じゃ、俺逃げるねぇ~。」
美村よ、何故逃げる。
「高槻先輩来るまで、僕は残って有栖川くんと話してるね。」
「ん~。じゃ~ね。園ちゃん。アリスちゃん。」
「また明日な。」
初日だから、気を使って一緒にいてくれるのかな?
やっぱり、園田っていい奴だな。
なんだかんだ雑談してたら、高槻先輩が来た。
「千尋。」
「あ。高槻先輩。」
「悪いな。待ったか?」
「大丈夫です。園田が残って一緒にいてくれたんで。」
高槻先輩が園田を見た。
「そうか。ありがとう。」
「いいえええ。有栖川くん、初日だし。僕も話たかったので。」
園田が顔を赤くして、どもった。
「帰るぞ。」
「はい。園田も帰ろ。」
「ううん。僕はこれでっ!また明日ね。有栖川くん。」
園田はバタバタと教室を出て行った。
「?」
ーーー変なの?
高槻先輩が苦手なのか?
俺は、1仏陀の話を思い出した。
でも、それなら美村と一緒に逃げてるよな?
てゆうか、チャライ美村と違って園田に問題は無いだろ。
「千尋。」
廊下で高槻先輩が俺を呼んだ。
「あ。すみません。」
俺は高槻先輩のとこに駆け寄った。
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校舎から寮まで、高槻先輩と並んで歩く。
ちらちら下校中の生徒達がこっちを見てる。
俺は、ちらと高槻先輩を見た。
ーーー風紀の鬼。仏の顔が一個だけって。
そんなに怖そうに見えないけどなぁ。
あんた1仏陀なんすか?なんて
本人に聞いてみたいけど、さすがにそれはな~。
「今日、保健室に行ったんだって?体調は大丈夫か?」
「え?ああ。大丈夫です。ただ・・・」
ーーーハッ!ただ眠かっただけ、なんて言ったら、ヤバいよな!?
「ただ?」
「初日だし、緊張して疲れちゃったみたいで。」
えへへ、と笑ってみせる。
「無理はするなよ。」
高槻先輩が心配そうに言った。
・・・やっぱり、後輩想いのいい人だよなぁ。
人の噂なんか、聞くもんじゃないって。
「高槻先輩。ありがとう。」
俺は二カッと笑った。
「・・・。」
高槻先輩はちょっとだけ驚いたみたいな顔をして、ふいと前を向いた。
「いや。」
一緒に寮の部屋に戻ってから、高槻先輩は風紀のお仕事があるって、また校舎に戻っていった。
そんなに気を遣わなくていいのに。
申し訳ないって言ったら、気にするなと先輩は言う。
それに、俺一人だと危ないからって・・・だから、なんで?
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◆園田視点◆
高槻先輩が有栖川くんを迎えに来た。
・・・え。千尋って呼んでんの!?
すでに下の名前、呼び捨てなの!?
しかも、なんか優しい目で見てるし。
腐男子フィルター無しにしても、高槻先輩が有栖川くんに目をかけてるのが分かる。
密かに、はうはうしながら見てたら、高槻先輩が僕の方を見た。
「ありがとう。」
と、僕にお礼を言った。
「いいえええ!!」
僕は慌てて、首を振った。
というか、高槻先輩と話したの初めてだし。
高槻先輩は1仏陀とか言われてて、やんちゃな生徒からは、けっこうビビられてる。
でも、人気もあるんだよね。
すっきりと整った爽やかイケメンで、硬派だし。
ただ、この学園のチワワ系をうざがってるし。
浮いた噂も無い。遠巻きにモテてるだけ。
噂だけど。前の同室者も高槻先輩の教育的指導という名の説教(調教?)に逃げてったらしいし。
なんか、有栖川くんには、めっちゃ優しそうなんですけどー。
・・・これって。
僕はお邪魔しないように、先に教室を出た。
ちょっと前にこの学園に来た、アイツとは大違いだ。
僕の無害な妄想趣味に彩が増えた。
ありがとう。有栖川くん。