高槻先輩と仏陀
「ごめん!ほんと、ごめんなさい。」
俺と美村と園田は3人で食堂に来ていた。
俺は美村に平謝りしてる。
金髪ってとこに過剰反応して、思いっきり足を踏みつけちゃったから。
「ひどいわぁ。傷つくわぁ。ただのスキンシップなのにぃ。」
「ごめん。」
保健室とは逆方向から来たんだから、絶対にこいつじゃないのは分かってる。
「有栖川くん。こんな奴に謝る必要ないよ。あんなのセクハラだよ。今だって、謝る有栖川くんをニヤニヤ見てるんだから。」
園田の言葉に顔を上げると、美村のにやけ顔。
ーーー謝って損した。
「まぁまぁ、冗談はこのくらいにして。保健室で何があったの?アリスちゃん。」
「え!?」
美村がじっと俺を見て聞いた。
「誰かから逃げてる感じだったよね?」
「さっそく襲われたの!?」
おい。園田よ。何故に目が輝いているのだ。
「襲われてないです。大丈夫です。はい。」
「棒読み~。」
言いたくない。初日早々、知らない男にキスされたとか。
ーーー最悪じゃ!!
有栖川父の次は謎の男かよ!
俺の唇は穢れてしまったのだ。ううう。
「まぁ、アリスちゃん、同室なんだから高槻先輩に相談したら大丈夫だよ。」
「仏の高槻だもんね!」
また園田がキラキラしてる。
「高槻先輩、いい人だもんなぁ。」
俺がしみじみ言うと、2人は顔を見合わせて、違う違うというジェスチャーをした。
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「高槻先輩は1仏陀なんだよ。」
「ワン・ブッダ?」
「そ!《仏の顔も三度まで》って言うじゃない?高槻先輩は一個しか無いのよ~。仏の顔。」
「だから、ワン・ブッダって言われてるんだよね。前の同室だった生徒も、それで逃げちゃったって噂だし。」
「一回でお前の人生アウトォ~って感じ?鬼風紀の1仏陀・高槻。」
向かいに座る美村が胸の前で合掌して、チーンと目を閉じてみせた。
「なにそれ!?超怖いんですけど!!今からでも、美村!お前と同室になれないのか!?」
「あは、嬉しいけど無理っしょ。最初に高槻先輩にお願いしたのアリスちゃんサイドでしょぉ。」
「うおお!」
ーーーバカ!有栖川父のバカタレ!
そんな俺を見て、焼き魚定食をつつきながら園田が聞いてきた。
「実際、高槻先輩ってどうなの?」
「え、いい先輩だよ。昨日と今朝もご飯奢ってくれたし。」
ご飯奢ってくれる人は良い人認定。
これ、O型のルール。俺はO型。
「じゃあ大丈夫だよ。高槻先輩が厳しいのって、相手の生徒に非があるときだもん。」
「・・・そっか。だよなぁ。」
「アリスちゃん可愛いし、大丈夫よ~。」
「それ関係ないし、可愛いって言うな!」
噂だけで先輩にビビってしまった。反省だ。
俺も目の前の豚生姜焼きに箸をつけた。
高槻先輩、ごめんなさい。