眷属進化
「どうしたんだ、アル?その傷だらけのトカゲは?」
ちなみにアルと言うのは、このオークの主人だったハイオークの男の名前だ。
名前がないと何か嫌な感じだったので俺が名付けた。
あと、赤オークにはレッドという安直な名前をつけてあげた。
「主様!どうやらこのリザードマンが何者かに襲われたようで死にそうなのです!お願いします!助けてあげてください!」
なるほど、よく見ると全身緑色の鱗の肌は所々傷だらけであり出血も激しく呼吸も荒い。
だが、俺には回復を行う魔法は持っていないのだ。
正直どうすることもできない。
取り敢えずステータスを見てみるか。
《種族》ハイリザードマン
《危険度》C
《レベル》37
《能力値》
【HP】168/4200
【MP】748/2800
【魔力】1800
【筋力】2200
【耐久】2500
【器用】1800
【敏捷】4000
【精神】1500
【魅力】400
《スキル》
【HP回復:Level 3】
【MP回復:Level 4】
【気配遮断:Level 3】
【気配察知:Level 4】
【槍術:Level 3】
【水魔法:Level 4】
《固有スキル》
【気温適応】
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うん、今にも死にそうである。
だが、このままこのハイリザードマンが死ぬところを見るのも胸糞悪い。
俺な何かないのかを考える。
回復魔法がないならどうするか?
薬草などのアイテムを使うか?
いやダメだ。
ここには大した薬もないし、これ程の傷を治すことは期待できない。
どうする?
俺は必死に考える。
考える。
そして一つの方法を思いつく。
(回復できないのならば、HPそのものの量を増やせれば良いんじゃないか?なら、あのスキルを使えばもしかしたら……。)
そう俺が考えたのはHPが少なく困っているのならば俺のスキル【眷属進化】を使えば能力の底上げができてHPの量を無理やり増やすことが出来るのでは無いのかということだ。
そうと決まれば賭けになるがやってみるしかない。
アルのやつもドンドン憔悴して行っているリザードマンを見て顔をますます青くしている。
「おい!お前!俺にこれから従うと誓え!そうすればお前を助けられるかもしれない!」
「あ、あなた様は…?どなたですか?どこか暖かみのあるお声…。何故であろう…貴方様からは何か我らと同じ匂いが…します。わか…りました…。貴方様に従いましょう。」
『ハイリザードマンが貴方に忠誠を誓いました。スキル【絶対支配】が発動します。』
スキルが発動しハイリザードマンの腕に眷属の証である金色の腕輪が装着された。
俺はこの時愕然とした。
何で初対面の俺に対してここまで簡単に従うのかということだ。
普通、従うわけがないのだ。
しかも現在俺は顔にマスクとゴーグルをつけている。
完全に変人である。
そこで一つの答えに行き着く。
ただの予想であるが、《称号》【龍に愛されし者】の影響では無いのかということだ。
一応リザードマンだって龍の端くれに入るだろう。
だから、この称号を持っている俺に惹かれたのではないかということだ。
まぁ、今はそんなことを考えている場合ではないだろう。
俺はすぐに【眷属進化】を発動する。
『ハイリザードマンに【眷属進化】を発動しますか?現在ハイリザードマンは4段階進化が可能です。どこまで進化させますか?』
俺は何も考えずに4段階目まで進化すると念じる。
中途半端にして死んでしまってはいけないからだ。
俺に忠誠を誓ったのだ。
絶対に助けてやる。
『ハイリザードマンを4段階進化させます。SPを400消費します。本当に宜しいですか?』
あれ?少なくない?っと思ったがすかさず了承する。
『分かりました。ハイリザードマンの進化を開始します。』
俺の頭の中にそう脳内アナウンスされるとリザードマンは光り出す。
どうやら進化が始まるようだ。
アルのやつは急に光りだしたので驚いて浮き足立っている。
ダメだ、アルのそんな様子を見ていると、こんな状況なのに笑いそうになってしまった。
平常心、平常心。
リザードマンの形をした光はドンドンと縮んでいくと、人型の光になってそこで形を保つ。
『ハイリザードマンは魔人(下級)に進化に成功しました。進化を終了します。』
そうアナウンスされるとだんだん光が弱まっていく。
(良し!成功だ!これで何とか助かった……ってえぇ?!)
そこに横たわっていたのは美しい翡翠色の髪を持つ綺麗な白い肌を持つ美人が横たわっていたのだった。
全裸で。
「こいつメスだったのかよ!!」




