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(4)雨のち雨、即ち雨



 ――。

 ――、――。――。

 ――。――。

 ――、――、――――。

 ――――、――。

 ――、――。

 ――、――、――――。

 ――、――。

 ――――。


 僕たちは壁に密着させていた背を離して、未だ雨を止める気配のない曇天を仰ぎ見る。何千何万何億もの雨々の表面に雲の色が投影され、雨は数日放置して濁ったミルクのような色を呈し、その灰色のミルクが降り注ぐ大地は、腐敗した発酵乳の息の詰まる腐臭で満たされていく。

 この灰色の雲は、何時までも晴れない。

 だからこの灰色の雨も永遠に止まない。

 止まない雨は前途の光景を遮蔽して僕たちを迷わせる。

 行き先を覆って僕たちを困惑させる。

 そこら中から響いてくる雨の嘲笑。惑わされてしまった僕たちは、先の見えない景色に怯え、逃げ出し、草陰に身を屈めて耳を塞いで目を閉じる。そうしていれば僕たちは暗闇を好きな形に変えて妄想に浸ることができるけど、腐敗したミルクの臭いが鼻を刺激して、妄想の殻の外では絶えず雨が降り続いていることをどうしても意識させる。

 それが嫌になって鼻を摘まんで息を止める。

 でも今度は、耳の中を雨音がじくじくと満たしていって、僕たちはどうやって内側に籠ろうとも、どんなに頑丈な傘で防いでも、防水性の雨具で身を護っても、付き纏う雨の残像を振り払うことができずにいる。


 たい――。

 にたい――。

 死にたい――。


 ようやく聴こえた雨音は、何時までも鼓膜を叩いて鳴り止まない。

 僕たちは再び雨下に進み出る。ズブズブズブ、と脳天から雨に刺されて、雨で濡れているのか血で濡れているのか僕たちにはよく判らなくなる。

 ズブ濡れで歩いている僕たちを見て、アジサイが嗤っているのか通行人が嗤っているのか僕たちにはよく判らなくなる。

 濡れているのかいないのかよく判らなくなった僕たちは、人が避けているのか雨が避けているのか僕たちにはよく判らなくなる。

 何かに足を取られて道端に転げた僕たちは、死にたいのか生きたいのか僕たちにはよく判らなくなる。

 路傍の側溝に人知れず引きずられていく僕たちは、何がよく判らないのかよく判らないのか僕たちにはよく判らなくなる。


 よく判らなくなって、息を止めた。




 うーん、自分の未熟さを改めて感じました。


 感想、意見、アドバイス等ありましたら是非お願いします。

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