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アンチ・サイコパス

 亮たちがいる室内では辰巳の嗚咽と残った歯をガチガチと鳴す音が響いていた。尋問と拷問用に使っている第三格納庫は、霧島副教が『大宮事件』の時に尋問室と使っていた場所だった。

 亮たちが前来たときは水責め用の桶や、見るからにおぞましい形をした拷問具の数々が所狭と壁に掛けられていたのに、今では跡形もなく綺麗に無くなっている。

 ある物といったら辰巳の所持品を広げてあるステンレス製のテーブルだけが、当時のまま残っているだけだった。

 一応、辰巳が気を失っている間に保持品検査は行った。財布にクズゴミ、銃に予備弾。それにケースに入ったペン型麻酔銃と、予備弾とは別に赤い弾頭の9mm弾が4発あった。霧島にはそれが何なのかわからなかったが亮にはそれが何なのかわかっていた。マナの胸に撃ち込まれた『魔弾』だ。その魔弾の1発を手に取るとスっと、ポケットに仕舞い込んだ。

 今現在この部屋にあるのは机の他に、ベルトコンベアーの上に辰巳の体を固定した板がる。コンベアーの先が木材粉砕機の口に続いている。この状況を見た辰巳の顔から血の気が引いていく。

「こっ、殺さないで…」

「さあ、それはあなた次第よ。あなたが嘘をつかずに私たちが知りたい情報を全て教えてくれたら、助けて上げなくもないわ」

「副教。まどろっこすぎる。あと2本折れば全部吐くに決まってる」

「…こんな事が、こんな事が…ゆっ…許されと思ってるのか…」

「許されるのよ。私たちはバウンティーハンターなのよ。法を超えた執行官でもある。さあ、それじゃー早速尋問をはじめましょうか」

「待てっ、待ってくれ!! その前に俺の命の保障をすると約束しろ!! それが無いなら俺は答えんぞ!!」

「あらあら」

「ぐぎややややぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 霧島が咥えていたタバコを辰巳の右耳の中に押し込んだ。800度を超すタバコの先端が外耳道を焦がし、鼓膜が焼かれる音を聞きながら悲鳴を上げた。

「君は自分の立場がわかってないようね。お互いの立場を明確にするためハッキリさせとかないと。尋問するのは私、そしてされるのは貴方よ。この場の主導権はこっちにあって、貴方にはない。加えて貴方には現法律で保証されている基本的人権や黙秘権はあるけど、私達には関係ないのよ。わかる。そうねぇ、もっとわかり易く言えば貴方の今後の生き死の決定権は私達が握っているの、それを理解したうえでさっきの発言がまだ出せるなら出してもいいわよ」

 霧島の冷淡な口調と切り目から覗かせる瞳が、怯えた辰巳を睨みつける。

 忘れてるわけではなかったが、彼女も一応国家バウンティーハンターの資格を有していて、BH学校の副教官を務めていた人物だ。加えて元公安の捜査員でもあった。当然尋問には長けているし、あの『大宮事件』の時でも、捕まえた重要参考人、共犯者、容疑者云々を言葉だけで相手の精神を崩壊させながら攻める尋問を亮はここで何度も見てきた。

「ちょっと話を脱線しようかしら」

 そう言って霧島が手にした書類の束を出して読み上げる

「加嶋辰巳33歳、元連邦陸軍第一予備隊に所属していて、階級は2等兵。入隊1ヵ月で亜民に対する暴行障害と素行の悪さで上官から強制除隊処分になると、除隊後は職を転々と変えて結局最後は民間軍事会社の下請業を行う。加えて上官に対する恨みを晴らすかのように、今回のような亜民に対する暴行や強姦を繰り返えしている。か、あんた………筋金入りのクズね!」

 霧島は軽蔑の眼差しを向ける。だが加嶋はそんか事を気にしない態度で睨みかえす。

「今回、お前は埼玉県国で発生した亜民誘拐と殺人未遂容疑の実行犯として指名手配されたのよ。まあ、もっとも亜民案件の事件なんて警察は動かないだろうし、ましてや報奨金がスズメの涙程度なら普通のハンターだって捕まえたりしないでしょうけど。普通のハンターならね」

 最後の言葉を強調しながら冷たい視線を送る。

「ああ、そうだ。その通りだよ。俺があそこをった。やったがどうした、ざまぁみろだ。へっへっへっ、なあ。それがどうしたってんだよ。社会の役に立たねぇ、俺たちの税金を無駄食いしてる亜民どもが、個人のお楽しみの役に立つならOKだろ」

「黙れよお前!! 誰が話していいっていったのかしら。亮くん」

 呼ばれた亮は無言のまま辰巳の右耳を掴むとゆっくり引きちぎり始める。

「ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やめでぇーー!! やめでぇくれぇー!!」

「どうせもう使えない耳でしょう。男が使えないモノに、いつもまでも固執してんじないわよ」

 霧島も若干ではあるが辰巳に対する態度が乱暴になっていた。口調が『貴方』から『お前』の変わっていたのを亮は見逃さなかった。霧島は元公安ではあったが社会正義は持っているし、犯罪者の悪事を許せぬ感情も人一倍ある方だ。特に亜民の子供を卑劣にも襲い、それを開き直るような輩に対して嫌悪感を抱かない方がおかしかった。

「さて、もうひとつの耳が残っているうちに話を戻すとしましょうか。最初の質問よ。お前が今日拉致(さら)った子は何処に連れて行き、誰に渡したの?」

「あっ、……ああああ……ああ…」

「何? それが答えなわけ? それとも答える気がまだないのかしら、それならこのまま木材粉砕機で足を細切れにしてあげてもいいのよ」

 髪をわし掴みし、霧島が木材粉砕機の電源をONにする。年季の入ったエンジン音が上がり、本体が小刻みに振動し始める。その振動がベルトコンベアーから板を伝わってくると辰巳の顔に恐怖の色が現れだし下半身から黄色いシミが広がい出した。

「ひぃっ、やめて……やめて下さい。言うっ…言いますから、それを停めて下さいぃぃぃぃぃ」

 この時点で、辰巳の反骨精神は粉々になり彼女の手中に落ちた。

「さてと、それじゃー最初の質問に答えてくれるわよね」

「……はっ、はいっその子は…受け渡し場所で………まってた奴に…わっ…渡した。渡したんだ、です」

「それで」

「それでって、それだけだよ。他に何もありゃしねって」

「あの場所を襲撃した時に、お前以外にも襲撃者が少なくとも1人はいたはずだよ。お前重要な所をはぶいてんじゃないわよ。全部答えるのよ、いい。全部よ。ほらその男の事もちゃんと答えなさい」

 掴んだ髪を乱暴に動かし、霧島はさらに詰め寄った。

「いててて。いっ、一緒にいた奴のことは知らねんだよ。嘘じゃねぇ、ホントに今日始めてあった奴なんだ。俺たちはいつも仕事はメールで一方的に来るだけなんだよ。時間と場所だけ、あとはその時になって詳しい内容をメールでもらう。今回も指定された場所に行って、そいつと一緒に仕事しただけなんだよ」

「そいつの名前は?」

「…しっ、知らねぇーよ」

「亮くーん。今後はこの潰れた鼻の穴を三つにしてあげて」

「やめろっ!! やめろっ!! 嘘じゃねぇ、本当だよ。本当に知らねぇーんだよ。今回の事にしたって俺たちは本来自分の名前を明かしたりしねぇーんだよ。俺たちはいつもアルファベットと数字を合わせて呼び合っていたんだよ。だから本名なんて知らねぇんだよ。それが俺たちの中じゃ暗黙のルールなんだよ。嘘じゃねぇんだよ!! 本当なんだよ!! 信じてくれよぉ!!」

 涙ながらに早口で説明する。この状況下でもう嘘をつく気などないだろう。

「あらあら、そんなに泣かなくてもいいのよ。死ねば痛みなんて感じなくなるから。わかったは…それじゃその相手をなんて呼んでたのよ」

「N2だ。確かあいつは自分からN2って呼んでた。始めて見る顔で最初は新顔かと思ったよ」

「それで、そのN2とはどうやって連絡をとればいいの? まさかそれも相手から連絡待ちなんて言うわけじゃないでしょうね」

「携帯に…俺の携帯の中に、あいつの番号が入っている。だけど使い捨て(プリペイド)だからまだ生きているかどうか知らない。」

「まあ、使ってた記録が存在するなら他に辿る道はいくらでもあるわ。それで、他に知っている事を全部吐きなさい。人、物、場所、単語、なんでもいいから思い出すのよ。さあ!!」

「ああ…そうだ。始める前にN2が前にいた会社を調べたけど、全部架空会社(ペーパーカンパニー)だった。それでこの仕事はかなりヤバそうな感じだったんで、それ以上は詮索しなかった………あっ、待て。そうだ、確かそうだ。受け渡し場所であのガキを渡したとき、向こうの連中の1人がたしかアマテラスって言ってた。そうだ、他にも電話で話した言葉に、男のひっ…一人がクルージュの奇跡がどうとか…バチカンの奇跡何とかがどうとかって言ってたぞ」

「アマテラス? くるーじゅ? 本当にそんな事言ってたの?」

 耳慣れない単語を聞いて霧島は首を掲げた。恐らく何かのコードネームか暗号だろうと考えられるが、少なくとも敵を特定するには情報が少なすぎる。

 しかし、亮は葵を誘拐さらった連中は間違いなく一ノ瀬を殺した連中にだと確信した。ボイスの言葉が真実なら、一ノ瀬のアパートにいたあの外人は葵を追っている別組織の可能性が高い。

 相手の目的が何なのかハッキリしない以上、葵の身がいつまでも安全とは言えない。早急に葵を見つけてださないとマズイ事なる。

 亮が頭で思考を巡らせている間、霧島がさらに尋問を続けている。しかし、辰巳は末端の実行役に過ぎず、有力な情報は乏しかった。今後は時間との勝負、いつまでも教科書セオリー通りにしていたららちがあかない。

 二人のやり取りを見ている間に亮の心中では辰巳に対する激昂心が高まりだす。そして衝動を抑えきれずに辰巳が持っていたペン型麻酔銃を手に取った。

 そっと霧島の背後へと近づき、ペン型麻酔銃を霧島の首に突き刺した。

「うっ…!?」

 不意を突かれた霧島はそのまま意識を失い床に崩れた。その瞬間、辰巳の命の決定権は亮に移された。彼の行動を止める人間は誰もいない。

 突然の状況に困惑していた辰巳だったが、次第に状況を理解しだすと恐怖で顔が引きつった。

「やっ、やめろ…何でも話しただろう……だから…だから、殺さないでくれ…たっ頼む…」

 今の辰巳にとってはこれは絶望的だろう。なぜなら、既に欲しい情報がなく、聞くべき内容は全部聞いた。あとは事後処理をどうすかの問題だ。

「それは、ひょっとして命乞いか?」

「殺さないで…お願いします。殺さないで下さいぃ」

「怖いか?」

「お願いです、殺さないで。死にたくない。死にたくない、殺さない下さい…」

 辰巳の必死の命乞いする姿を顔色一つ変えずに眺めると、亮の指が『低速』『荒削り』の操作ボタンを選択した。

「お前が今日何をしたのか振り返ってみろ。先生に何をした? 葵に何をした? 彩音に、そして…マナに…何をしたか言ってみろ!!」

「本当にごめんなさい、悪かった。本当に悪かったよ、だから頼む、殺さないで―」

「俺が聞きたいのはお前の謝罪じゃない。お前の断末魔だよ!! まずはかかとまでだ」

 『開始』のスイッチが押されると、ゆっくりとベルトコンベアーが動きだし、辰巳の乗った板が投入ホッパーと呼ばれる入り口へと運ばれる。そして板の先端が2輪で噛みあわせた粉砕ローターに食われ始める。

 粉砕音を耳にした辰巳はバタバタと身体を動かし、さらに悲鳴の混じった命乞いを始めた。

「やめろっ!! やめろっ!! やめてくれぇっ!! 何でもするぅ!! 何でもするからぁ!!ひっひひひひぃぃぃぃぃ…………」

「それじゃー取りあえず叫べ(鳴け)よ」

 ゴキッボキッバキッ、バキッバキッベチッ、ポキッバキッゴキッボキッ、バキッバキッバキッベチッ、ポキッバキッ!!

「ぐぃううううぎぎぎぎぎゃゃゃゃゃゃゃゃぁや―――ああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 割れんばかりの悲鳴が倉庫の壁に反響して響きわたる。悲鳴が途中で止まると、顔中の血管が浮き上がり白目を向いた状態で気絶した。

 飛び散った肉片と鮮血で染まった粉砕口の中を亮が覗き込むと、『停止』ボタンを押して粉砕機を停止させた。ベルトコンペアーを後退させると、踵まで粉砕機に食われ見るも無残な状態になっていた。両足首の裂けた皮膚から吹き出る鮮血が綺麗な曲線を描いている。

 あまりの痛みで気絶した辰巳に、亮はバケツに入った冷水を浴びせて意識を戻そうとしたがダメだった。仕方なく、今度は工業用のエタノール液が入ったボトルを取り出して蓋を外すと、筋肉や骨がむき出しになってる箇所に、乱暴にぶっかけた。

「はあっ!! うぎゃぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!!」

 またも悲鳴が倉庫内にこだまする。傷口から凍みこんだエタノール液によって例えようのない激痛が全身を駆け巡る。

 既に辰巳の体は痛みによる疼痛性ショックの痙攣が始まっている。本来なら血圧降下や意識消失が起ってもおかしくない状態だが、尋問を始める前に亮に打たれた興奮剤エピの影響によって意識は保たれていた。

「ここここここここっ殺さない…で…」

「お前は俺たち亜民を随分と見下してきたな。社会に役立たない害悪だと。だけどな、お前は俺とは違って人間なんだろう。人間は他者を哀れむ感情があるだろう。彩音を襲った時マナを撃った時…貴様、心が痛まなかったのか?

 込み上げる感情を言葉と一緒に吐き出しながら亮が尋ねた。

「…おっおっ、お願いです…殺さないで…」

「お前にとっては亜民を虐げるのは普通な事だったんだろう、なら俺も普通な事するだけさ。人間は泣きながら生まれてくる。なら、泣きながらあの世に逝くのが普通だろう」

「いやだぁ…死にたくない…」

「怖いか? 安心しろ。お前だって最後は豚のエサになるっていう役目がある」

「…いやだ…いやだ…」

 怯える辰巳に向かって亮は最後通知を出した。

「俺はお前に第9条を行使する!!」

 そして再びスイッチが押された。停止していた粉砕機が再び轟音と一緒に動き出し、ベルトコンベアーに運ばれ辰巳の足を食い始めた。

 また倉庫内に不気味な音と、割れんばかりの悲鳴が響き渡る。

 ゴキッボキッバキッ、バキッバキッベチッ、ポキッバキッゴキッボキッ、バキッバキッバキッベチッ、ポキッバキッ!!

「うぎゃゃゃゃあ――――――あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かぁぁぁぁぁぁみぃぃぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――ぎゃゃゃゃあ」

 粉砕機の2輪が辰巳に足をゆっくり食い進めると、絶叫と悲鳴がより一層強くなった。

「ふっ、フフフっ、ハハハハハハっ、」 

 その悲鳴を聞ながら亮は肩を震わせて笑っている。

 久しぶりに聞いた人間の悲鳴、久しぶりに見た鮮血と血の匂い。全身を巡る恍惚感、自分の体が身震いするのを感じ、忘れていた快楽を思い出す。

 亮は心の底から湧き上がってくる歓喜の喜びを感じていた。

(そうだ! これこそが、バケモノである俺が本来いるべき世界であり、当たり前の日常なのだ。そう、これが――)

 今まさに、亮の全てが完全に過去の自分を受け入れようとした時、突然聞こえるはずのない人の声が頭の中に響いてきた。

「亮兄ぃ――!!」

「なっ!?」

 その瞬間、亮は無意識に粉砕機の『停止』ボタンを押してしまっていた。

 目の前に現れたそれは、幽霊のように白く透けていた。

「…マナ!? ………マナ? なのか?」

 夢か幻か、驚く亮の前に現れたのは病院にいるはずの星村マナだった。

「マナ…俺、俺は…お前を…」

「亮兄ぃー!! 亮兄ぃー!! やめて。もうぉやめてよ亮兄ぃー。マナ…やだよう。やだよう亮兄ぃー」

 亮の頬にそっと手をかざしたマナの瞳から、大粒の涙があふれ出る。

「マナ、この男は…お前を撃っんだぞ…お前…を…撃っんだぞ…それでも―」

「亮兄ぃー…コワイ顔してる。 マナそんな亮兄ぃーやだよ。だからやめてよ、優しいフルートを吹く亮兄ぃーに戻ってよ。亮兄ぃー」

 かざされたマナの手から伝わってくるのは温もりだけではなく、マナの気持も一緒に伝わってくる。マナの悲しみ、哀しさ。そしてマナの願い。

 次第に重くドス黒かった感情や激昂心が消えていき、変わりに暖かい優しさが胸の中へと溜まっていく。

「亮兄ぃー!! マナ、亮兄ぃーが大好きだよ!! みんなの中で一番大っ大っ大っ好きなんだよ。だからマナの知ってる亮兄ぃーに戻ってよ!! そんなコワイ顔の亮兄ぃーマナ嫌いになっちゃうから。亮兄ぃー…戻ってきてよ。もう一度、亮兄ぃ…あいたいよ」

「マナ…」 

 手を伸ばしてマネの顔に触れようとした時、マナの体はゆっくりと消えていく。完全に視界から消えて残ったのは、頬に触れたマナの温もりだけが残っている。

 天井を見上げながら、亮はマナの必死な問いかけに答えた。

「あの子は…殺しをのぞんでない。だから…亜民に感謝しろ」

 粉砕機に足を膝下約10㎝の所まで食われた辰巳は、自分が助かったのが信じられない感じで、未だに理解できていなかった。

「あっあああああっ、ありがとう…ござい…ます…」


 ガチャン!


 突然、亮のすぐ後ろで物音が鳴ると、反射的に腰ベルトの銃を取り構えながら振り返った。

「おい…お前…」 

 しかしすぐに銃をおろして呆気にとられた。そこにいたのはセーラー服姿で股間を押さえ、恍惚の笑みを浮けべて座っている月宮薫だった。

「薫…お前そこで何してる?」

「あっ兄上。やばい…そいつの悲鳴聞いてたら、その…イッ…ちゃった! エッヘッヘッヘッー」

 薫は頬を赤く染めながら股を押さえていた。

 やがて衝動が収まって立ち上がると、ニコニコした笑顔で辰巳の顔を覗き込んできた。

「ねぇ兄上、久しぶりにいいおもちゃを見つけたみたいだからさぁ、このまま少し遊ぼうよ!! いい悲鳴だっよ。エッヘッヘッヘッ、なんだったら後片付けは私がしとくから。ねぇ、お願い」

 それはまるで新しいおもちゃを見つけて遊ぶ子供のような感じで、薫は自分をイかせた辰巳に興味津々だった。

 辰巳は新しく現れた薫に気づくと、ここで痛みと出血で意識を失った。

「何の用だ。まさかこの前の続きでもしに来たのか?」

「もう、兄上ったら。私は何度も言ってるでしょう、負け戦はしないって!」

「じゃあ何しにきた?」

 亮の問いに薫は人差し指を辰巳に向ける。

「話す前に、早く止血しないとこの玩具おもちゃ死ぬわよ」

 辰巳の足からは、動脈を切ったようで血が流れ続けている。恐らくもってあと5分もないだろう。仕方ないと思いながら、亮は辰巳の足の止血処置を行うことにした。

 止血処置をしている間、薫は亮の後ろで怪しげな笑みを浮かべながら様子を眺めていた。





 




 

皆さんこんばんは、朏 天仁です。今回の話は結構残酷な描写が多々ありましたが、いかがだったでしょうか? 気分を害した方がおりましたら、すみませんm(__)m

今回もここまで読んでいただいた読者の皆さんに厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございます!!

 では、次回もよろしく応援よろしくお願いします(^^)/~~~

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