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真実は手の中に  作者: 永田一樹
第一章
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第四話 地区トーナメント予選開始

お久しぶりです



四人はもうすっかり常連と言われるぐらいまでは通っている、ネットカフェにて反省会(という名なのおしゃべり会)をやっていた。

蓮もある意味地獄のような特訓を受けて既に中堅レベルと言われるぐらいにはVRMMO-RPGを楽しんでいた。本人は否定するかもしれないが。


「後二週間ほどで地区トーナメントが始まるわ」


那智が言ったその言葉に三人は黙り込んでしまう。

より正確に言うのなら、一人は面白そうに、一人は真剣そうに、一人は心配そうに、と感じが異なるけれど。


「まぁ。多分、このままだと地区予選ぐらいは普通に突破できるでしょう」

「ほんと?」

「第四話にして凛のキャラが崩壊していっている気がするわ」

「那智さん、そういうのは思っていても言わないほうがいいと思うよ」


メタな事言ってるんですかと蓮は呟く。

あら、そういうのもいいんじゃないと那智が言ったところで部屋は笑いに包まれた。


「まぁ。私と白君はともかく蓮君と凛は対戦経験が少ないから、地区予選に向けて練習を積んでおこうと思うの」

「という訳で、だ。早速だが今日はもう一回向こうに行くからな」


ニヤニヤしながら白は言う。彼にとっては久々の対人対戦でありテンションが上がるのも無理はない。

とはいえども、蓮と凛にとっては不安の方が大きようだ。


「那智ちゃん? あのしっちゃかめっちゃかの魔法使うの?」

「まぁ、それでもいいだけど。それだと蓮君と凛の練習にならないじゃない? だから今日は違うVRMMO-RPGをするわ」

「基本的な動作などは変わらないシステムの基盤が同じだからな」

「となると、アレと同じような感じというわけですか」


蓮が納得したように言った。その向こうでは白が待ちきれないと言った様子でそわそわしている。

その様子は三人の内の一人にとても健全ではない妄想を抱かせたが本人はそれを小さく首を振ることで追いやる。


「純粋な科学兵器のみで戦うというモノだしね。地区予選も始まるし、あまりゆっくりと出来ないのが残念だけど」

「那智ちゃん? ということはアノ銃もあるの?」

「私は確認してないから何とも言えないけど、多分あるんじゃないかしら」

「ほんと!? 楽しみ」

「この歳でハマると危険というあの論文も嘘では無いのかも知れないわね」


言葉を聞くだけならとても女子校生が言ってはいけないような内容だが幸いにしてこの場には四人しかいない。

テンションが上がっている凛とは対照的に蓮は落ち着いていた、少なくとも表面上は。


「やっぱり怖いか?」


だが、親しい者にとってはそのポーカーフェイスも意味の無いモノ。

蓮は少し怒りを含ませた視線で白のことを見つめた。


「やっぱり分かるものなのなんだね」

「まぁな。それは付き合いが長いっていう理由だけじゃない、俺自身通ったことがある道だからな」


蓮は同じ訓練所にいたという理由で少しだけであれば、白の過去を知っていた。

若干14歳で、一族から裏切り者として認定されたある叔父を助けるために殺人の技を学んだということしか知らないが。

しかし、連の目にはそんな過去など微塵も抱かせない友人の顔が映っている。


「今でこそ俺の行動は間違ってないと証明されたが。あの当時は、な。蓮、お前が何に悩んでるか想像できることは出来ても解決することは俺には出来ない。

それはお前が悩んで答えを出すものだからな。他人がどうとか言うのは筋違いだと俺は思う」

「そうだね。ウジウジするのは性根に合わない。思い切って言うことにしてみるよ」

「その意気だ」

「何を男同士で熱くなってるのかしら、凛が余計な想像しちゃうじゃない」


そんな二人に割り込むようにして会話に入ってきた那智が思いも寄らぬことを言った。

言われた本人は完熟したトマトのように顔を赤く染めて、必死に否定する。


「な、何を言ってるの那智ちゃんってば。もう、蓮君も白君も誤解しないでね」

「分かってるよ。ってそろそろ時間だし向こうにダイブしないとな」


身長が低いというよりも座高が低いからか自然と上目遣いになっている凛の視線に動揺することなく白は答えた。

少なくとも表面上はという話だが。もしかしたら、昔より可愛くなっている親戚にちょっとばかし動揺していたかもしれない。

――それはともかくとして。

もう四時半である、休日とはいえ進学校である彼らは寮住まいという生徒も多く蓮はそんな生徒の一人だ。

門限は六時半。高校生の門限としてはいささか早いような気もするが文武両道を主としている彼らの学校は規範に厳しいのだった。


「そうね。私達はともかく蓮君は門限があるしね。少し急ぎましょう」


那智の言葉に無言の同意を返してから三人はヘッドギアを装着する。

今でこそこのサイズになったという話だが、開発当初は軽く学校の教室くらいの大きさがあったらしい。

今よりシステムや基盤が古かったため、という理由だったがそんな事は今は関係ない。

残った那智が接続先を音声入力で入力し四人は向こう側の世界へとダイブする。


いくらVR技術が発展しようが現実世界のリアルさには到底敵わない。

どんだけリアルだと謳っても結局は現実とはどこか違和感が生じる。

それは現実にある武器を使っていても残る違和感なのだろうと蓮は思った。


「さてと、全員無事にこっちに来れたわね。まぁ、一人でも居なかったらそれはそれで危険なのだけれど」


いつものように魔装装束ではない姿の那智に凛は何故か違和感を覚えてしまった。

もちろんアバターであり、所詮ゲーム内のキャラクターに過ぎないはずなのに、どうしてだがそこはかとなく違和感を感じていた。

幸いにして那智は凛の視線に気づく様子もなく淡々とシステム画面をいじっている。


「とりあえず、二人ペアで対戦するからみててね」


システムカウントが開始され白と那智の周りは無機質な白い床から機械的なデザインの床へと変わっていく。

それに伴って二人が装備しているものも変わっていく。

白は銃身が少し長めのハンドガンに日本刀のようなもの、那智はライフルと呼ばれる対戦車用の大型銃。

少し離れている所に対戦相手の姿が見える。四人は静かにカウントが0になるのを待っているように見えた。


「とりあえず、白君は前衛をお願いするわ」

「了解」


そんな二人の会話が聞こえたように感じたのは錯覚か。

白と対戦相手の一人は引きつけ合うように真っ向からぶつかり合う。二人を避けるようにして銃弾が飛び交う。

キィン、キィンと金属同士がぶつかる音が辺りに響き渡る。30×30の部屋の中を

反響しう合うように銃声とその音がごちゃまぜになって凛と蓮の耳に届いていた。


「この感覚久しぶりだな。やっぱりPvPが俺には合ってる」


戦闘を終えた白がそんなことを呟いた。

対戦結果はドロー、手が詰まっての引き分けというより蓮と凛に見せるような戦い方をしていた。


「対戦相手は知り合いなんですか?」

「えぇ。とはいってもお互いのリアルは全然知らないけどね」

「久しぶりに来たから対戦しようってなったわけだ。もちろんこっちの事情も知っててな」


つまり、白と那智が相手を言うなれば遊ぶような戦い方をしていても相手が冷静だったのはこういう事情だったのかと蓮と凛は理解した。


「さて、次は二人の番よ。ステージは高原、遮蔽物はないし広いわ」


このVRRPGでは対戦相手を決めた後、ステージが自動選択される。

苦手なステージにあたる場合もあれば得意なステージに当たるときもある。

このステージの選択形式がこのゲームの一つの売りだった。


「俺達は観戦席で見とくからな。自由に戦ってこい」


そう言って白は二人を送り出すのだった。


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