27th 瑠璃色の才、解け合う泡沫は世界
瑠璃色の才、解け合う泡沫は世界
詩:遍駆 羽御
散る桜の一時のダンス
風に揺らぐ桃色の可愛い子ら
消えていくことはきっと 新しい日々の始まりだよね
そう信じて僕らは世界とさよならをする
思い馳せるは泡沫の微睡みを背景に聞いた親友の下手くそな唄
しかし その唄は何処までも優しく 僕を癒してくれたんだ
本を片手に難解な台詞を吐いては罵倒する君の瞳だけが真実を語ってた
ここに君は居ていいのだからね……
あれから何年も過ぎて 僕は今も君の背中ばかり追いかけては
二度と来る事のない蕾が開花する季節を独り 待ってる
こうして 思い出に変わった
いつかは 記憶の水底に消えていくんだろうね
知るんだ 自分の限界を 人の儚さを
散る紅葉の一時のダンス
風に揺らぐ朱色の恥ずかしがり屋の子ら
消えていくことはきっと 新しい日々の始まりだよね
そう信じて僕らは世界とさよならをする
今日も何処かで人の命は産まれて
今日も何処かで人の命は新しい旅路へと出かける
巡りゆくMebiusの輪よ
どうか どうか 悲劇の物語を書き綴らないで欲しい
必要なのは幸福の物語だけだよ
それが許されるのならば
小説家は 漫画家は アニメーターは ゲームクリエータ-は 芸術家は
幸せが大切なことだと伝えるメッセンジャーとなろう
かつて その夢は君と僕の未来だったように
いつか 君の生まれ変わりに出会えるのならば
そっと すれ違おう
君じゃない君の物語なのだから
再生する要素を身に宿した冬景色
夢を発芽する準備をする子どもら
絶望するのは誰かの役目じゃない
希望を叶えるのは選ばれた者の権利ではない
僕らは同じ同じイキモノだから 互いに愛し 分かち合う存在だ
美しいピアノの音色と共にアイスのスプーンを咥えた少女
今はもう 夢の彼方に在るその光景
「君はまだそんな事で悩んでいるのか?」
「言っただろう。どんなに時を重ねたって人は無に帰るのだよ」
「終わらなければ始まらない。コップを世界に見立てて観るといい」
細長い子どものような指と指の間から流れる肌色の水
綺麗に切り添えられた爪へと落ちる透明な水
濡れた髪を掬う度に その持ち主の知性に嫉妬する
僕は君という天才にはなれない
「ふふっ 天才か? 君と私の時は違うのだ」
「君は私になる必要はない、天然馬鹿は意外と良い位置だよ」
季節が後 何度 巡れば君と対等な知性を手に入れられるだろうか?
その時は……
その時こそ……
やっと さよならが言えるね
それまで 心に留めておくよ 終わらない季節を