◇やきもき…
ゆっくりと話しながらの朝食を終えて、時計を見ると、午前十時少し前で。
姉が鼻唄混じりに洗い物を片付けている間、オレはなんとなくテレビを観ながら携帯とにらめっこをしている状態で。
起床して朝食を終えて、もう一時間以上は経ってる。
店までは車で片道十分くらいだと思うから、差し引いても結構な時間だよなと、そわそわしずにはいられなくて。
(ちょっと遅くね…?)
連絡無し。でもひたすら待つ事しか出来ない状態。そうなるとダメだと思いつつも、ついつい嫌な事ばっか頭に浮かんじまう…。
蒼は、今どんな気持ちで洋二さんと時間を過ごしてて、どんな話をしてるんだろう。
泣いてないだろうか。パニックになってないだろうか。
さっきから、もう何度目だろう。ため息ばっかついてるオレに、
「充月…、気持ちはわかるけど落ち着きなよ…」
姉は、やれやれと笑いなからアイスコーヒーを差し出して、
「大丈夫だよ。心配ないって」
そう言ってくれるけど、 やっぱり落ち着かなくて。
「結構時間かかってるよな…?」
「まあ…ね」
「もしかして事故とか…」
「ちょっと! 縁起でもないこと言わないの」
「ごめん…。てか、なんで蒼は店になんか行ったんだろうな? 誰も居ないってわかってるはずなのにさ…」
蒼の行動が、気持ちがわからないから不安になる。
「てか、はじめさん…、野次馬やらかして話しに入ってたりして… 」
蒼を見つけて洋二さんに連絡したのがはじめさんだってのも、すげー引っ掛かって仕方ない。
「充月のばか…。はじめ君の名前聞いたら、私まで不安になってきたじゃない…」
「だ、だってよー…」
「う~~…っ…」
ソファーにドカッと腰を降ろし、腕組みして眉間にシワをよせ、なんとも難しい顔で唸る姉につられて、オレもついつい難しい顔になっちまう…。
「…メールしてみようかな…。う~~…っ…、でもなぁ…。洋二に待つからって言っちゃったしなぁ…。でも、もしはじめ君がいて、また余計な事しでかしたりなんかしてたら… 」
携帯を見つめて唸りながら頭を抱える姉を見たら、更に不安になる。こりゃダメだ、この空気で待つのはとんでもなくキツい。
「なあ、姉ちゃん。やっぱオレらも店行かねえ? ここで心配して悶々とするより、直接…」
「行きたいのは山々です。…だけど、車がないという悲しいお知らせが…」
姉は、悲愴感を漂わせ笑顔とは言いづらい顔をオレに向けた。
「…マジですか…」
リビングのサッシの広い窓。白いレースのカーテンの向こう側は、これ本当に昼には止むのかよ…、天気予報を激しく疑いたくなるような強い雨が降ってて。
「…もうっ! 洋二のばかっ! 早く連絡来い来い来い~~っ!」
携帯にまじないを唱えるように、不在の洋二さんに八つ当たる姉を見て、
「もう無理。待てねー! オレちょっとメールするよ」
「ダメっ! 私がっ――」
二人して携帯を構えばたら、姉の携帯が鳴って。
「もしもしっ!」
慌てて通話に応じると、
「――もうっっ!! ママっ!! あ~っ! 今ちょっと大事な電話待ってるからまた後でねっ! はいはい! 充月はうんうん、大丈夫だから! はいはいはいはい! わかってるわかってる! じゃあねっ!」
…姉は丸い目をつり上げて、
「もうっ! ほんっとママっていつも変なタイミングで電話してくるんだからっ!」
携帯に向かって盛大に文句を言って鼻息を荒げた。
(母さん、頼むわ…マジで…)
苦笑いしか浮かばないオレに、
「…なんだか気が抜けちゃったね」
姉も盛大に苦笑いして、
「充月…やっぱりさ、頑張ってもう少し待とう」
「え…」
「これはきっと、私達姉弟が神様に与えられし愛の試練なのよ! 私達は洋二を信じて待つ! それを貫かなきゃっ!」
「…その試練だかなんだかはよくわかんないけど、そうだな…。やっぱり洋二さんを待つべきだよな…」
「よしっ! 余計な事考えないように、DVD観よう! DVD!」
「お、おう…」
気合いを入れて、テレビ台の扉を開けてDVDを取りだし、
「こういう時こそ、グロいホラーだよねっ!」
「姉ちゃん…それ意味わかんねー…」
「いやいや、こういう時グロいの観ると結構スッキリするのよっ」
…オレ、グロいの得意じゃないんだけど …。




