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第一章から第三章

見て!!!!明日消す

君とログインする青春生活。


第一章:当たり前の夜。


夜。父さんも母さんも弟も寝てて。静かすぎて自分の心音や呼吸がうるさい時間。


『ログイン中……』

スマホに表示された画面を見ると、少しだけ呼吸が変わる。


別に大したことじゃない。ただのアプリだ。

なのに、この時間は少しだけ違う。

――ナイト:『いおくん、いる?』

通知はすぐに届いた。

伊織は一瞬だけ間をおいてから返す。「いるよ」 その一言だけで会話は成立する。

――ナイト:『よかった』

その一言は軽いのに、なぜか少しだけ安心する。伊織は思う。(ナイトって、どんなやつなんだろう)。明るいのか静かなのか、男か女かもわからないが、不思議と怖さはなかった。

――ナイト:『そういえばさ、今日変な夢見たんだけど』

「またそれかよ」思わず小さく笑う。ナイトの話はいつもどこかズレていて、現実の【正しさ】からはほんの少し外れている感じだ。


同じ頃、月城夜宵は自分の部屋で机に頬杖をついていた。カーテンは閉まっていて、部屋は静かすぎて落ち着かない。学校では、誰にでも話しかけられ笑って頼られる、完全無欠のヒロインなのに、今はそのどれもが少しだけ遠い。

――いおくん:『また変な夢みたんだ?』

その文字を見て夜宵は少しだけ肩の力を抜く。(この人はちゃんと返してくれる)。それだけで良い気がした。夜宵は少し笑って 「学校がね、空に浮かんでるの。で、一人落ちて、羽が生えてた笑」 と返す。

―――いおくん:『なにそれ、意味わかんない』

夜宵は声を出さずに小さく笑う。「興味なさそうだなぁ・・・」


このやり取りは特別なことではない。ただの夜の会話。それでも伊織にとっては、自分が自分のままでいられる時間で、夜宵にとっては少しだけ素に戻れる場所だった。

同じ夜、同じ学校、すぐ隣の席にいる二人はまだ知らない。この相手が昼間の世界で普通にすれ違っている存在だということを。

窓の外では風が静かに揺れていた。何も起きていない夜。でも確実に、何かが始まりかけている夜だった。

第二章:すれ違いの温度


朝。教室はとても騒がしい。誰かの笑い声、机を引く音、廊下を走る足音。そんな音が混ざりあって、教室全体が少し浮ついている。


本城伊織は窓際の席で頬杖をつきながらスマホを見ていた。別に何かをしているわけじゃない。ただ画面を眺めていると周りの音が少し遠くなる。

「おはよー!」

明るい声が教室に響く。月城夜宵だった。いつものように誰かに手を振って、笑って、自然に輪の中心へ入っていく。

伊織はちらっとだけ視線を向けて、すぐスマホへ戻した。

「今日もすごいな・・・」

小さな声で呟く。すると隣にいた同級生、朝野雷火がニヤニヤしながら伊織に聞く。

「おいおい、お前も夜宵様のこと気になってんの?」

「別にそんなんじゃない」

「またまた〜。夜宵様は誰にも対等だから女神なんだろ?」

席を立ち、次の移動教室の準備をしに、廊下を歩きながら思う。

夜宵はクラスの中心にいる人間だ。自分とは違う場所で生きている。話しかけられることはあるし、普通に返すこともある。でも、それだけだ。

「本城くん、おはよ」

不意に声が落ちてきて、伊織が顔を上げる。夜宵が自分の机の横に立っていた。

「あ、おはよ」

「今日眠そうだね」

「まあ、ちょっと」

短い会話。それだけ。夜宵はすぐに他の友達のところへ行ってしまう。

伊織はスマホを見ながら小さく息を吐いた。

(ほんと、誰にでも話しかけるよな)

別に嫌ではない。でも、自分だけが特別なわけじゃないことくらいわかっていた。


放課後、廊下にはオレンジ色の光が差し込んでいた。帰ろうとした時、伊織は曲がり角で誰かとぶつかりそうになった。

「あっ、ごめ―――」

顔を上げる。夜宵だった。

「あ、ごめん本城くん」

「いや、大丈夫」

一瞬だけ目が合う。

その時だった。

夜宵のスマホ画面がちらっと見えた。暗い背景。トーク画面。そこに一瞬だけ映った文字。

伊織の視線が止まる。

『いお…』

そこまで見えたところで、夜宵は慌ててスマホを伏せていた。

「じゃ、また明日!」

何事もなかったかのように去っていく背中を見ながら、伊織は少しだけ眉を寄せる。

(……いお、?)

一瞬だけ、頭の中に「いおくん」という呼び名が浮かぶ。でもすぐに打ち消した。

「そんなわけ無い、よな…」

少し気がかりな思いを抱えたまま、伊織はフードを被っていつもの帰り道を歩き出した。


第三章:画面越しの既視感

六月。空は少し曖昧だった。晴れているのに薄い雲が広がっていて、窓から入る光もどこかぼやけて見える。

授業中、教師が黒板に文字を書き続ける音を聞きながら、本城伊織はぼんやり外を眺めていた。頭の片隅には、昨日見た文字がまだ残っている。

『いお…』

偶然だ。そう言い聞かせても、何故か頭から離れない。

「本城くん」

不意に名前を呼ばれ、伊織は顔を上げる。前の席から月城夜宵がプリントを差し出していた。

「先生が回してって」

「あ、ありがと」

プリントを受け取る。その時、夜宵が少しだけ首を傾げた。

「今日も眠そう」

「そんなことない」

「いや、あるよ。目が半分閉じてる」

少し笑いながらそう言う夜宵に、伊織は小さく息を吐く。

「昨日ちょっと寝るの遅かっただけ」

「夜ふかし?」

「まぁ、そんなとこ」

短い会話。でも、その空気は不思議と嫌じゃなかった。

夜宵は「ふーん」とだけ返して前を向く。その瞬間、ふわっと甘いシャンプーの香りが微かに残った。

伊織は少しだけ視線を落とす。

(…なんか調子狂うんだけど)


昼休み。教室はいつもどおり騒がしい。

「なぁ伊織、購買行こうぜ!」

朝野雷火がパンフレットを丸めながら声をかけてくる。

「俺は良い」

「またかよ!お前はもうちょっと青春したほうが良いって!」

「うるさい、余計なお世話」

雷火はケラケラ笑いながら教室を出ていく。

伊織は一人、窓際でスマホを開いた。

その時だった。

「本城くんってさ」

突然、横から声が落ちてくる。

顔を上げると、夜宵がこちらを見ていた。

「静かな場所好きそうだよね」

伊織の指が止まる。

昨夜。

ナイトが言っていた言葉が頭をよぎる。

―――『静かな場所って落ち着かない?』

偶然。そんなのわかっている。

でも最近、その【偶然】が少し多い。

「…まぁ、落ち着くし」

「やっぱり」

夜宵は少し嬉しそうに笑った。その笑い方が、一瞬だけ、《ナイト》と重なる。

伊織は思わず夜宵を見る。

でも、夜宵は何も気づいていないように、友達の輪へと戻っていった。

(気のせい、だよな…?)

そう思うのに、胸の奥だけが少し落ち着かなかった。


放課後。外は少し雨が降っていた。

昇降口には、雨宿りしている生徒が集まっている。

「うわ、降ってんじゃん…最悪」

雷火が嫌そうな顔をする。

「傘持ってねぇ?」

「持ってる」

「え、マジ?神。入れて」

「嫌だ」

「冷たっ!?」

そんなやり取りをしているとき、不意に隣から声がした。

「本城くんも今から帰るの?」

振り向くと、夜宵が立っていた。窓の外を見ながら、小さくため息をつく。

「…傘、忘れた」

「珍しいな」

「たまにはあるよ」

夜宵は少し笑う。沈黙が落ちる。でも、不思議と気まずくはない。

雨音だけが静かに響いている。

その時、夜宵のスマホが震えた。

ほんの少し、表情が和らぐ。

伊織はなぜか、その顔から目が離せなかった。

(…誰から)

そんなことを思った自分に、少し驚く。

別に、そんなことを気にする関係じゃないはずなのに。

夜宵はスマホをしまうと、「じゃ、そろそろ私走って帰ろっかな」と笑った。

「…使えば?」

気づくと伊織は、夜宵に傘を渡していた。

「え、良いの…?」

「風邪引くから」

雷火の手を取り、伊織が走り出す。

「え、伊織!?持ってんじゃなかったけ?」

雷火が戸惑いながら正門に向かって走る。

「本城くん、ありがと!」

遠くで夜宵の声が聞こえたが、伊織は恥ずかしさを隠すようにフードを強く握り、走り続けた。

正門をすぎると、雷火がニヤニヤ笑いながら聞いた。

「おいおい、伊織…抜け駆けはずるいぞ〜?」

「うるさ…」

「おい、詳しく話聞かせろよ〜」

「パン奢って」

「良いよ、わかった」

水たまりを跳ねながら走る二人の後ろで、雨はまだ静かに降り続いていた。

見たね!!!!???

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