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叙事詩の進行  作者: あいすに刺さる茶葉
第一章

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第5話  意志の強さ



 メルダが助けに来てくれた数分前────



「ハァ、ハァ…」


 人2人も担いでいるのにもかかわらず、過去最速の勢いでザインが階層を駆け抜けていた。


「副団長!見えました!第38階層へと続く階段です!!」


 そのノーラの発言により、ザインは更に加速した。



「着いた…ここが第38階層」


 ザインが呆気にとられたように周りを見ていた。


 第38階層は、自然がとても美しく、迷宮というより、とても広い庭園といった感じだろうか。

 庭園の中心には町があり、宿屋や、武器屋も存在する。特に上位冒険者が多いようだ。


「とりあえず、応援を呼ばねぇと…」


 人を探しに行こうとした瞬間後ろから声をかけられた。



「あの?何かお困りでしょうか?」


 とても綺麗な白髪で、思わず見惚れてしまいそうだが、今のザインにそんな余裕は無かった。


「上位冒険者さんか?!頼む!うちの団長を助けてくれ!!」


「何があったんですか?」


 冷静に彼女は聞いた。


「第37層でランク9レベルの奴が暴れてるんだ!うちの団長は俺らを逃がす為に足止めを…」


 その瞬間彼女は即座に紙に何かを記し、ザインに手渡した。


「これをあの町の酒場にいる人に渡して。」


 そう言い残し、とんでもない速度で第37階層へと向かって行った。




 そして今に至る



 メルダ・ディンスはランク8だが、巷でランク9に匹敵すると言われている強者だ。

 ローブの敵とも十分渡り合えていた。


「強いね君、まだ本気を出してないでしょう?」


 少し焦った表情のメルダが聞くと、初めてローブの敵が口を開いた。



「アタリマエダ、オマエニワレノイタダキヲハカルコトナドデキヌ。」


 とても無機質な声で喋っており、男か女かは判断出来なかった。


「あらそう?じゃあもっと上げてくよ?」


 そう言った瞬間更に彼女のレイピアを振るう速度が上がった。それに負けずと、ローブの敵も大剣であるにも関わらず、速度を更に上げていった。


(なんだこの戦い…?俺が少しでも入ろうとしたら…)


(死ぬ!)


 地面に座り込んだカインは自分がいては足手まといだと分かっていながらも、未だ恐怖で足がすくんでいた。












────それでいいのか?



 そんな声が聞こえた気がした



(ああ俺に出来ることなんてない。俺はもう十分役目を果たした。)


 そう心で嘆くと、返答が来た。



────夢を諦めるのか?






────ああ、そうだ。自分で言ったんだろ。不可能を可能にするって…自分が出来てなくてどうするんだ。



 カインは立ち上がり、落ちているファトゥムを拾い、握った。先程よりも大きな力を感じられた。





(くっ…こいつ本当に強い!!)


 メルダはまさか自分が負ける程の敵と思っておらず、困惑していた。


(1回使ってみるか…)


 その次の瞬間、美しい声が響いた。



「《絶対観測》」


(私のスキル《絶対観測》は私を中心とした半径20mの物や、生物の情報を原子レベルで観測できる。)


(《絶対観測》が導き出した答えはーー)




(この人は男で…ランク10クラス?!)




 その瞬間、レイピアが敵のローブを引き裂いた。

 現れたのは無表情な大男。体格がとてもよく、その筋肉はとても鍛え上げられていた。


(ランク10は今は存在しない筈じゃないの?!)


 メルダですら驚きを隠せなかった。ランク10クラスが存在している事自体が驚きだが、何よりも自分が相手にせねばならない事に焦りを感じていた。


「コムスメ、タタカイニオイテアセリハキンモツダ。」


 ローブが無くなったからか、彼の声は無機質なのは変わらないが、男性の声になっていた。

 その言葉と同時に彼女は腹を大剣で殴り飛ばされ、壁に激突した。


「カハァッ!」


 彼女は吐血し、その場にうずくまった。


「ザンネン、キタイハズレダッタカ」


 そう言い、動けないメルダに大剣をふり落とそうとした。


────刹那大剣をカインが受け止めた。



「?!」


 これには流石に大男も驚きを隠せなかった。何故なら、満身創痍なのに、先刻よりも次元が違う程強くなっていた。


「…」


 カインは喋らない。何かを考えている様子だ。


 彼は気づいていないが、この剣『ファトゥム』は所有者の意志が強くなればなるほど強い力を貸してくれる。

 カインはメルダを助けたいという過去に類を見ない程強い意志を持っていた。

 この瞬間ファトゥムが貸した力はランク7に匹敵していた。


 (だが、それでも奴と俺の差は大きい…ならばどうするか…)



「逃げ、なさい…貴方が勝てる相手では無いわ!」


 メルダには絶対観測により、カインの大体のランクが分かっている。彼のランクは大体4否、5か、まず間違いなく死ぬ────かに思われたが、次の彼の言葉により異変が起きた。



「《自己境界》!!」



 彼のランクが更に上がったのだ。こんな事は見た事がない。スキルを使用したとしてもここまで大きくはならない!彼女はそう感じたが、彼の握っている剣を見て、理解した。あの剣が彼に力を貸しているのだと。

 剣から力を借りたカインは今や…今や…





()()()1()0()()()()()()。ーー》




 彼女は驚いた、当たり前だ。急に自分よりも強くなるのだから。

 通常、ファトゥムと《自己境界》を合わせたとしても、今の彼ではランク8が限界だ。だが、彼は自分の寿命を削るという条件を付ける事で、ファトゥムから更に力を得ている。



 カインから溢れる威圧感を軽く流すように大男は振る舞う。


「キサマコソコノブタイニタツニフサワシイ」


 大男は少し笑っていた。


「ワレノナハ『オーウェン・ランフェル』キサマノナマエヲトオウ」


(『オーウェン・ランフェル』?どっかで聞いた事あるな。)


 だが、今はそんな思考をしている暇は無い。

 それよりもオーウェンの問いに答えた。


「カイン…カイン・ディペンダーだ!」


「かいん、、?」


 メルダは何かを感じたが、それよりも先に彼を助けなければと、治療に専念する。





 お互いに相手を睨み合う。オーウェンも先程とは気配が違い、本気の様子であり、気配が圧倒的だ。


 カインは冷静に剣を構え相手の出方を伺っている。




────コンマ数秒の間に激しい攻防が繰り広げられた。


 オーウェンの大剣に技量が加わると脅威度は先程と段違いだ。重い攻撃を素早く、的確に振り下ろして来る。

 だが、負けずとカインもオーウェンを翻弄し、剣で自分を守る。素早さだけなら今のカインが勝っている為、出来る限りの攻撃は回避し、避けられない攻撃は受け止めていた。



 そんな攻防がわずか数分。だが、その数分は両者にとって、数時間にも匹敵する永遠のようにも感じられた。絶え間なく続いていた。



(ぐっ…少しずつ押され始めてる。自分がこの力に対応しきれていないんだ。)


 そう、いくら強くなったとはいえ初めてのしかも自分を壊しかねない力だ。そう易々と扱えるものでは無い。


 だが、オーウェンは違う。彼は何十年も修練して今に至っており、熟練度の次元が違う。



 オーウェンは集中しながら大剣を構えた。その集中力は凄まじく、彼の口元からは涎が垂れている。


(何かくる!?)


 そう思ったのも束の間オーウェンが襲い掛かる。


「デンコウライメイ!!」


 そうオーウェンが言った直後大剣がとんでもない速度と力でカインを襲う。

 その凶悪無比な攻撃は階層に大穴を空け、カインと、オーウェンは第38層に落ちていく。


 未来の第38階層にいた者の記録にはこう書き記されている。


 ──雷が落ちてきたかのような衝撃と光だった。

 と



「グハァッ!!」


 第38階層の床に叩きつけられたカインはとんでもない量吐血した。

 しかし、休んでる暇もなくオーウェンは襲いかかってくる。


(このままじゃジリ貧だ。どうすれば…)

 

 そう考えていると、オーウェンに業火が襲いかかった。当然のように彼は大剣で薙ぎ払った。


「!」


 オーウェンが見た先には大量の上位冒険者達がいた。その中でも一際目立つ者達《天頂の円卓》クラン全員が揃っていた。

 メルダの手紙により、全員が準備していた途中だったのだ。

 彼等は()()()深層の帰りだったので、ここで休憩していたのだ。


「えぇ?!特級魔術を放ったのに無傷?!」


 愚痴をこぼしたのは《天頂の円卓》クラン第一部隊のランク8の後衛アタッカー


『ベーラ・メリキス』だった。


 特級魔術は普通複数人で詠唱してやっと放てる物なのだが…流石は現最強と言ったところか普通の冒険者と魔術の熟練度の次元が違う。


「ベーラの攻撃すら無傷とは…」


 そう言葉を零したのは、《天頂の円卓》第一部隊の隊長兼クラン団長、

 

『アルバート・ヘリオス』だ。


 彼はランク9で現世界最強冒険者と呼ばれており、最もランク10に近い存在だと言われている。

 そんな存在がカインを見て驚いた様子をしていた。


(この僕に匹敵する程の力…だと?)


 色々思考を働かせていたが、後回しにしてパーティに指示を出した。


「ベーラ、メギア、メルテス、ケリオス、ルーク、配置につくんだ。」


『メギア・ラーラ』ランク8

『メルテス・キラミー』ランク8

『ケリオス・シラク』ランク8

『ルーク・ゴリアス』ランク9


 どれも名が通っている者達だ。


 だが、配置につこうとした瞬間アルバートと、ルーク、カイン以外全員が倒れた。



「「「!!!」」」


 全員が驚愕した。ランク8が為す術なく倒されたからだ。全員意識はあるようだが、しばらくの間は動けないだろう。


 そんな事よりも目の前の敵に集中をと思った時にはもう目の前にオーウェンはいなかった。


「上だ!」


 アルバートは叫ぶが、ルークは受け止められず吹き飛ばされる。


 ドスン、ドスンと、地響きのような足音を立てて、彼は2人に近づいてくる。


「そこの君、名前は?」


 アルバートにそう問われた。


「…カイン・ディペンダー」


「ではカイン君。共闘して奴を倒すぞ、僕が君に合わせてやるから存分に力を振るうんだ」


「…分かりました。」





 互角否、少しオーウェンを圧倒する程の連携だった。アルバートの得意武器は長剣であり、カインと一緒である。

 カインの攻撃の後にアルバートが入れ替わり攻撃を繰り出す、そしてまたカインが攻撃を繰り出す…という最強の円環が完成していた。

 だがこれは、アルバートの技量によって完成されており、それ以外の者だったら出来なかった攻撃方法だ。


 オーウェンは殆ど受け流す事に専念していた。流石に自分に匹敵する者が2人もいると彼でも厳しい。


 ではどうするか?



「…スキルハツドウ《神霊武装》!」



 その瞬間、オーウェンに鎧が装着された。とんでもないプレッシャーを放っている。

 彼が持つ大剣も変わり、更に増えていた。

 そう、彼は二刀流の大剣使いだったのだ。その大剣からもとんでもないパワーを感じられる。


「これは、まずいな」


 世界最強が冷や汗をかいていた。それ程までに圧倒的なプレッシャーだったのだ。今の彼はランク10すら凌ぐ力を有していた。


(だがあんな強い力リスクがないわけが無い。わざわざ今使った理由…おそらく時間制限があるな)


 と冷静にアルバートは分析した。


「カイン!おそらく奴のスキルには時間制限がある!耐えるんだ!」




────そう、アルバートの分析は正しかった。確かに彼のスキルには時間制限が存在する。彼のスキル《神霊武装》はレベル6…神話級のスキルであり、

時間制限は…6時間


 そう6時間も耐えないといけないのだ。この化け物相手に。




「·····時間制限を待ってる暇は無いです。アルバートさん」


 治療を終えたメルダがそう言った。


「どういう事だ?」


「おそらく奴の時間制限はとてつもなく長いです。異力の流れで分かります。」


「クソッ!じゃあどうすれば·····」


 その時カインがオーウェンに向けて歩き出した。


「カイン君何をやってるんだ?!それは自殺行為だぞ!!」


 必死に警告するが、カインは止まらない。


「おい、オーウェン俺と勝負しろ。」


 カインがオーウェンに向けてそう発言した。


 周りの皆は必死にカインを止めようとしたが、カインはそれを無視し、進んだ。


「イッタイイチ……デカ?」


「ああ、それも一撃だけだ。俺とお前が最強の技を相手に放って先に膝を着いた方の負け、、お前が負けたらこの場を去る。俺が負けたらこの場を好きにする。そんなルールでどうだ?」


「カイン君何を言ってるんだ!死んでしまうぞ?!そもそも彼がそんな提案飲むわけが…」



「…イイダロウ」


「な、何故奴が提案を…」


「アルバート君、彼はおそらく武人。正々堂々とした勝負は受けたくなっちゃうものなんでしょ。」


 そう、オーウェンは立派な武人であった。だからこそ強い意志を持った目の前の少年と力比べをしたかったのである。



(なあ、頼むファトゥム俺の寿命をもっとやるから分けてくれ、皆を守る事ができるありったけのパワーを!!)






────────そんな物は要らない。その意志の強さ、輝かしさそれを魅せてくれたそれだけで十分だ。



 そんな声が聞こえたような気がした。彼が持つファトゥムのパワーが増えていく。

 それに応えるようにオーウェンの双剣もパワーが増していく。




 オーウェンと、カイン両者は武器を構えた。




 永遠とも呼べる静寂の数秒が流れる。他の冒険者達も彼等の戦いを見守るつもりだ。



「イクゾ?」


「こい!!!」



「神霊絶技!」



「ディペンダー流奥義!」


 とんでもないプレッシャーがこの階層全域に広がった!





────そして両者技を放つ





「《天獄》ーー!!」

「《虹の橋》ーー!!」





 両者の技が交差する。とんでもないパワーの押し合いのようで、ランク7以下の者はその余波だけで失神してしまった。


 このままだと死人が出る!そう思ったアルバートは次の行動に出た。


「ッ!!《スキル絶対防御》!!」


 彼のスキル《スキル絶対防御》は放出系のスキルから完全に防御するという最強の対スキル能力だ。今回は余波の異力を完全に防いでいる。






 両者の交差はとても眩い光を放つ────






 先に膝を着いたのは────



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