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合い言葉は真実の愛

作者: 道傳光
掲載日:2025/12/21

初投稿です。

「遂に見つけた、わが真実の愛を!」

「左様ですか、すぐお召し上げに?」

「う、うん勿論だ、真実の愛だからな」

「ではご実家の資産状況5年分を」

「その、貴族ではないので…」

「まず身元調査を国家安全保障評議会に申請致しましょう。側妃、愛妾どちらに?」

「ええと…」

「でしたら伯爵家以上で入内後に支援出来る資産がある、養女が可能な家門を今週中に一覧でお出しします、議会の認可の見込が立ちましたら殿下がその方に合うと思われる処に打診なさって下さいませ。貴族院への審議申立はこちらでしておきますので」

[F宮 新規 平民]と書かれたメモを受け取った女性文官が目の前のボードの端にピンで刺す。中心が様々な国政案件の件でびっしりとは言え…そういう扱い…

会議室と続く扉から覗く気配が刻々と増えているが、彼女はあくまで礼儀正しく僕の次の言葉を待つ。

「邪魔したね、では」

机に突いていた手を離すと、起立していた執務室の全員が略礼を執る。僕が出入り口から離れた途端、活気溢れる声が漏れて来た。

「第二国道修繕の聴聞会、開始します!」

「入場の礼は省略で、各自配布資料をお開き下さい。交通省長官、どうぞ」

落ち着いてよく通る彼女の声が、僕の闖入で妨害され焦れていた空気を鎮めている。

「妃殿下が休まれる時にお茶にお誘いになればいかがですか」

有能な侍従がいう通りなのに。どうせ通らない案件にしかならない愛妾候補の話なんかで彼女の仕事を邪魔しただけだ。


「子供は、やはり真実の愛で結ばれた両親から生まれるべきだと思うんだ」

初めて二人きりになった夜、僕が放った言葉。

婚約の顔合わせの日に「わたくしはでんかとごいっしょにこのくにのみながしあわせになれるようがんばりたいのです」と言って僕を見上げた彼女の瞳にはもう、あの時のきらきらした弾みはない。

「お世継ぎは真実の愛のお相手と設けられる、わたくしは妃として政務を負うようにというご提案でしょうか」

違う、そうじゃない、僕は君と。

「拝命致します」

「な、」

「不肖わたくしは殿下のお相手をまだ存じ上げておりませんのですが、特例としてすぐお側に暮されますよう手配致しますので」

「いや、まだ、その」

「ではお決まり次第お知らせ下さいませ」

美しいカーテシー、閉まる扉。

それから僕は真実の愛という合い言葉を使わなければ君に話しかけられないまま。



裏設定:父親も真実の愛フィーバーで手続きすっ飛ばし婚約者(現王妃)以外と番って出来たのが王太子。国を回しているのは王妃。婚約者は同じパターンは織り込み済みで国政引き受けるつもりで王太子妃になった。彼女も王族の血統で王位継承権があるので、それなりの相手となら托卵もありと王妃から許可されているが、今は仕事が楽しすぎて愛人?ナニソレオイシイノ状態。

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