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第14話 再会と新たな家族

「お兄様ーーっ!!」


城の奥の間。

人払いを済ませた瞬間、一人の少女が弾丸のようにリアムに飛びついた。

シルヴィア。

10年前に死んだと思われていた、リアムの妹だ。

プラチナブロンドの髪に、リアムと同じ紫色の瞳。

成長した彼女は、息を呑むような美少女になっていたが、その勢いは昔のままだった。


「シルヴィア……! 生きていたのか……!」


リアムは彼女を受け止め、強く抱きしめた。

いつも冷静な彼が、声を震わせて泣いている。

その背中が、小刻みに震えていた。

失われたと思っていた家族。もう二度と会えないと思っていた妹。

その温もりが、今ここにある。


「ううっ、お兄様ぁ……! 会いたかったよぉ……!」


しばらくの間、二人は抱き合って泣いていた。

私も、もらい泣きしそうになった。

よかった。本当に、よかった。

彼が背負っていた孤独が、少しだけ癒やされた気がした。


感動の再会。

……のはずだった。


「……で? あのハゲ(ガブリエル)はどこ行ったのよ?」


シルヴィアが涙を拭い、ケロリとした顔で言った。

ハゲ?


「あいつ、私を置いて逃げたわね!? 信じらんない! 最低!」

「シ、シルヴィア? 師匠のことか?」

「そうよ! あの生臭坊主よ!」


彼女は腰に手を当ててプリプリと怒り出した。

その口調は、どこかガブリエルに似ている気がする。


「あのおっさん、私のこといつまでも『ガキ』扱いして! こっちは覚悟決めてたのに!」

「覚悟?」

「そうよ! 『私の体を使ってください』って迫ったのに、『寝言は寝て言え』ってデコピンされたのよ!? 失礼しちゃうわ!」


「……お前、師匠に手を出そうとしたのか?」


リアムが引きつった顔で聞いた。

私も驚いた。

あのガブリエルに迫るなんて、この子、只者じゃないわ。


「当たり前でしょ! 命の恩人だし、強いし、渋くてカッコいいし! ……それに、私にはあの人しかいないもの」


シルヴィアは頬を染めて、モジモジと指を合わせた。

口は悪いけれど、その瞳にはガブリエルへの深い愛が宿っている。

あの破戒僧、こんな可愛い子に愛されて……幸せ者ね。

そして、彼女を守るために汚名を被り続けた彼の愛もまた、本物だったのだ。


「まあ、いいわ。あいつのことは後で追いかけるとして」


シルヴィアは私の方を向いた。

紫色の瞳が、じっと私を値踏みするように見つめる。


「あなたが、エリザベートさん?」

「え、ええ。初めまして、シルヴィア王女」

「ふーん……」


彼女は私の周りをぐるりと一周し、そしてニカッと笑った。


「うん、合格! お兄様には勿体無いくらいの美人さんね!」

「えっ?」

「よかったわね、お兄様。昔から『僕の女神様』とか『運命の人』とかポエム書いてた甲斐があったじゃない」


「ぶっ!!」


リアムが盛大に吹き出した。

ポエム?


「おい、シルヴィア! 余計なことを言うな! ……というか、なぜそれを知っている!? 手紙なんて送っていないはずだぞ!」

「あら、ハゲが教えてくれたのよ」

「は?」

「あの人、諜報機関を使ってお兄様の日記を盗み見させてたのよ。で、毎晩私に読み聞かせてくれたの。『今日の兄貴のポエム』って」


「あのクソ親父ぃぃぃ!!」


リアムが頭を抱えて絶叫した。

あの冷静沈着なリアムが、こんなに取り乱すなんて。

ガブリエル殿……恐ろしい人ね。最後までリアムを手のひらで転がしていたなんて。

そして、それを妹に読み聞かせるなんて、どんな英才教育なのよ。


「へえ……。ポエム、ねぇ」


私はニヤニヤしながらリアムを見た。


「ほら、ここにあるわよ」


シルヴィアが、懐から一冊の古びた手帳を取り出した。

えっ、現物!?


「お義姉様もどうぞお読みになられては? ね?」

「やめろぉぉぉ!!」


リアムが必死に奪い取ろうとするが、シルヴィアはひらりと躱して私の手元へ放り投げた。

ナイスパス。

私は手帳を開いた。


『○月×日。今日のエリザベート様は、天使のようだった。泥だらけの頬さえも愛おしい』

『○月△日。彼女の髪に触れた風になりたい。……僕だけの女神』


「……ふふっ」

「あーあ。キモっ」

「うるさい! 返せ! 燃やす! 今すぐ燃やす!」


リアムが顔を真っ赤にして、私に飛びかかってくる。

私は手帳を高く掲げて逃げ回った。

こんなに必死な彼を見るのは初めてだ。

でも、そこに書かれている言葉の一つ一つが、私への愛で溢れていて。

恥ずかしいけれど、どうしようもなく嬉しかった。


「ふふっ」


私は堪えきれずに笑い出した。

リアムも、シルヴィアも、そして私も。

みんな笑っていた。


失われた10年間は戻らない。

でも、私たちはこうしてまた出会えた。

新しい家族として、新しい国で、新しい物語を紡いでいける。


「……よろしくね、お義姉様」


シルヴィアが、少し照れくさそうに手を差し出した。

私はその手をしっかりと握り返した。


「ええ。よろしく、シルヴィア」


窓の外には、復興した街の灯りが広がっている。

私たちの国は、まだ始まったばかりだ。

でも、この温かい場所がある限り、きっと大丈夫。


そう信じられる、幸せな夜だった。

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