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快楽狂と白竜の国  作者: 木太刀秋步
3章 白竜の咆哮
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3-2 潜む二人

 神殿に戻ると、神官が外で二人を待っていた。

「ああ、ようやく戻ってこられましたね。ささ、どうぞ中へ。」

 神官に促され、正門から中に入る。建物前の庭には小さな川が流れており水辺では鳥が遊んでいる。それを横目に見ながら神殿内に足を踏み入れた。神殿内の空気は清々しく気が引き締まるようだ。シエナは物珍し気に周りを見ながらついていく。しばらくすると礼拝堂が見えた。

 神殿内に建設された礼拝堂も『白竜』を冠する神殿に見合った、汚れひとつない真っ白で厳かな佇まいだ。

「へー。初めて見たが、こりゃ壮観だな。」

「毎日、竜官庁の見習いさんがお掃除をされていますので汚れひとつないんですよ。」

「屋根とかはどうしてんの?まさか登って磨いてるんじゃないよな?」

「高所は上級魔術師さんが水の魔法を応用して――」

 アリクがシエナの疑問に丁寧に答えている間に、シエナはマントの方に目配せする。

 するとシエナの瞳が一瞬赤くなり、ポンッと火の玉が出てきて、ふわふわと神殿の奥に飛んで行った。

「――聞いていますかシエナさん?」

「あ、聞いてるぞ。それよりも、礼拝堂に入れる時間はかなり少ないって聞いてるぞ」

「そうでした!行事の合間に使わせてもらう予定なので、そろそろ入りましょう!」

 アリクに手を引かれシエナは礼拝堂に入っていった。

「頼むぜヴァンス。」

 シエナはボソッと礼拝堂の外を見ながらつぶやいた。



「ふむ。ここまで真っ白だと、頭がおかしくなりそうですねぇ。」

 一方、火の玉の状態でふわふわと神殿最奥の居住区を漂っているヴァンスは目的のためにいろいろな部屋を物色していた。

 今のヴァンスなら鍵がかかっていようが魔術によるシールドがあろうが誰にも感知されずに通り抜けることが出来る。

 そして、目的を滞りなく遂行したヴァンスは、礼拝を済ましているであろうシエナと合流するため神殿の入り口を目指していた。

「ふーむ。白い建造物だけで飽きてきましたね。私が焦がして黒のデコレーションでもしてあげましょうかね」

「それはやめた方がいいですぞ魔人殿」

「おや」

 ヴァンスが振り返るといつの間にかドメイク=チュウチュスが立っていた。

 キヒヒと不気味に笑うドメイクにヴァンスは少し嫌悪感を滲ませた声で話しかけた。

「ごきげんようドメイク殿。相変わらず醜いお姿で。」

「キヒヒ。容赦ないですなぁ。これでも王都一の美人と言われる妻を持っているのですぞ?」

「いつもの自慢は結構。なぜあなたがここにいるのです?公爵風情ではここに入れないでしょう?」

 ヴァンスの言う通り竜官庁は国ではなく竜を守る者たちの管轄であり、王国の貴族であるドメイクは、この神殿内にある住居区には入れないのだ。

「キヒヒ。私は隠密が得意なもので。ここまで侵入するのは造作もないことです」

「ふむ。では私と同じ侵入者というわけですね」

「そういうことですな。」

 お互いにクツクツと笑いあった後、ヴァンスの方から話を切り出す。

「それで公爵殿は何故ここに?まさか散歩というわけでは無いでしょう?」

「そうですな。王城内で悪い話が広まっていましてな。その悪い話がここまで広まっていないか確認しに来た次第です。」

「収穫は?」

「いやはや、流石に人がいる可能性がある部屋までは入れなくてですね。勘弁して帰ろうかと思っていたところで――」

「B-28号室は今日の夕方まで住人が帰ってきません。机に面白いものがありましたのでそれを見てから帰っては?」

「…ほう。」

 割り込んできたヴァンスの言葉にドメイクは顎に手を当て、火の玉状態のヴァンスをじっくりと見た。そして、キヒッと小さく笑うとヴァンスが言った部屋に向かって歩き出した。

「キヒヒ。これは独り言ですが、ジェーンズさんが最近、ここの司祭と内密で頻繁に会っているようです。他にも自身の領土付近を統治している貴族たちとも密談をしているようで、内容は分かりませんが頭の片隅にでも」

「ふふ。了解しました。感謝します。」

 ヴァンスは火の玉の状態で器用にお辞儀をした。そして、顔を上げるとすでにドメイクの姿はなかった。


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