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「1本の枝から始まる魔王征✖︎精算」  作者: kench
冒険者、商社の設立
1/1

EP1:燃えない木と、燃える希望

---登場人物---

ウェル・アリュー

主人公

20歳

冒険者ランク ブロンズ

いろんな面で万能でありたいと思っている。


ハラルド王国支部 ギルド受付嬢 リリア 

ハラルド出身

23歳

茶髪ロング 

スタイル良い 

顔は可愛い方

無能に厳しく、有能は尊敬。

言葉は悪いが、根は優しい。


バンダー・コーディ

20歳

ウェルとはブロンズからの同期

冒険者ランク ブロンズ

赤髪

口先だけのやつが嫌い

亡き父がゴールド冒険者

職種 斧使い

ハラルド出身

ブロンズランク 3位

2年で個人順位を3位までに上り詰めた正真正銘の期待の冒険者


---国々---


ハラルド王国

ハラルド4世

イギリスみたいな国

自国が1番偉いと思っている

商業が盛んで貿易豊富。国益が高い。

魔神族大陸からブリテンスクの次に近い


ブリテンスク王国

ブリテンスク国王

国土は大きく一部雪国

3国のリーダー国

中途半端な、貿易国。

魔神族大陸に近い。


日陽国

和風な国

武器、装備の質が良い。

貿易は苦手。良いものだけ仕入れる。

地産地消意識が高い。

魔神族大陸から遠い

獣人族大陸に近く、友好国。


魔神族大陸

地殻変動が起き、大陸一帯が魔力元素の影響により肉体変化、交戦的な性格になる。魔神族の中でも貴族は会話が可能で、自律しているが、それ以外のほとんどは野蛮化している。

種族的特徴で寿命が長い。


獣人族大陸

日陽国と友好国

第一次魔神族の侵攻の被害大

大森林を挟んで大陸の半分を奪われた。

ブリテンスク王国から今でも差別されている。

好奇心旺盛な種族。寿命が短い。



---討伐ギルド協会---


ブリテンスク本部

ギルド本部があるところ 

マスターランク冒険者のメイン拠点

貴族が多く敷居が高い 無能はゴミ扱い


ハラルド支部

バランスの良い組織

いろんな人間がいる 冒険者の命を大事にしてる


日陽支部

戦闘力が高い 日陽出身はブロンズ上位者が多いが、本部に激戦区に送られる



「ねぇ、お婆ちゃん、いつものお話聞かせて!」


暖炉の火が揺れる暖かな部屋で、元気な少女・アニスが祖母の膝に乗る。


「まぁ〜、アニスはこの話が本当に好きだねぇ。」


白髪の老女は、優しく微笑んだ。


「だって私も冒険者になりたいの!」


アニスの瞳は期待に輝いていた。


「でも……なんで勇者じゃなくて、冒険者が魔王を倒そうとしてるの?」


不思議そうに首をかしげる孫娘に、祖母は静かに語る。


「不思議よねぇ。でもね、肩書きがその通りの結果をもたらすわけではないのよ。」


「……?」


「さて、この前の話の続きからお話ししましょうね。」


暖炉の火がゆらめき、祖母の静かな語りが始まる。



---100年前---


世界の成り立

この世界は、人族、魔人族、獣人族の三大勢力によって均衡が保たれていた。

しかし、突如発生した大規模な地殻変動が、その均衡を崩した。

魔人族の大陸では、地表から魔力元素が噴出し、生態系が大きく変化した。

魔人たちはこの過剰な魔力に適応し、やがて「魔神族」として進化を遂げた。

その力は、これまでの三大勢力を遥かに凌駕し、魔神族は他種族の領土を侵略し始めた。

そして現在、人族は3大国を中心としてその侵略に対抗しているが、世界は混乱の渦へと飲み込まれていった。

そして、この混沌とした時代の中、一人の“冒険者”が歴史を変えることとなる——


ハラルド王国の西にある、小さな村。

人口は200人ほどの小さな共同体で、住人たちは互いに助け合いながら生活していた。

ウェル・アリューも、そんな村の中で育った。

狩り、畑仕事、木工、ちょっとした魔法。

村ではなんでもそつなくこなせた。だからこそ、将来を期待されていた。

——しかし、そんな小さな村の中での「万能」は、冒険者の世界では何の強みにもならなかった。

ウェルの夢は、魔王を倒すパーティの一員になること。別に、自分が魔王を倒すつもりはない。

自分はそんな大それたことをできるとは思わないが、そこそこはできると思っている。

そんな事は一握りの人間だけ。

ただ自分はその一握りの少し下くらいにはなれると思っている。

「例えるなら、スタメンではないけど、ベンチにはいるメンバーの一員」

そんな感覚だった。

主役にはなれなくてもいい。

だが、魔王を倒す瞬間に立ち会える立場にはなりたかった。

そのために冒険者になり、努力を続けた。

——だが、現実は甘くなかった。


この世界の冒険者ギルドには、明確なランク制度がある。

ルーキー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、レジェンド。

誰もがルーキーから始まり、依頼をこなしてブロンズへ昇格する。しかし、ここからが本当の勝負だった。

ルーキー時代は簡単な依頼が多く、体力とやる気があれば誰でもブロンズになれる。

だが、ブロンズ以降は各々の能力が昇格に影響する。

ギルドの冒険者のランク割合は、ルーキーを除けば—

* ブロンズ:約30000名

* シルバー:約1000名

* ゴールド:500名

* レジェンド:10名

* ???

ブロンズの冒険者が最も多く、そのほとんどがシルバーへ昇格できずに一般兵扱い。

そして、ウェルもまた、そうした“埋もれかけている”冒険者の一人だった。

ウェル・ハーゲン、20歳。

ようやくブロンズになったのが2年前。

しかし、そこから鍛錬を重ねても、結果がついてこなかった。

ブロンズランク総員数は、約30000人。

ウェルのブロンズランキングは2152位。

彼の能力は、すべて平均よりほんの少し上。

だが、それだけだった。

剣術、魔法、体術、探索能力、どれをとっても「悪くはない」。

だが「突出したものがない」——それが最大の問題だった。

冒険者は基本的にパーティを組む。


剣の腕が立つ者、体格がよく仲間の盾になれる者、攻撃魔法や回復魔法が使える者、素早く索敵や罠解除ができる者——。

自分だけの武器となる能力を持たない者は、活躍の場を見つけにくい。

そして、この2年間でウェルと組んでくれる仲間は、一人、また一人と離れていった。

(このままじゃ、俺は——)

ウェルは焦っていた。

優秀なブロンズランク冒険者は、3年でシルバーへ昇格できなければ、ただの「その他大勢」で終わる。

ウェルにとって、この最短でなれなければ資格がないと思っている。

今の順位では、ギルドに登録しているだけの“万年ブロンズ”になり、やがて引退するしかない。

そんな現実が、ウェルの喉を締めつけていた。


ギルドのカウンターで、依頼受付嬢・リリアの冷徹な言葉がウェルの耳を突き刺す。


「君は冒険家に向いてないよ。」


リリアの声が、彼の心に鋭い刃のように食い込んでいった。

彼女の茶髪ロングの巻髪がゆらめく中、無能を見るような目でウェルを見下ろしている。

スタイルは良いし、顔も可愛い方だが、その冷徹さに、ウェルは胸が締め付けられるような思いを抱いた。


薄く笑いながら続ける。


「だって、君、この間のパーティでもルーキーがいる中で足手まといだったでしょ?」


たしかに、魔力耐性の低い自分にとって苦手な魔法攻撃モンスターの複数討伐でパーティに迷惑をかけた。


「この支部でのブロンズ冒険者の中では、剣の腕はないし、戦闘における魔法の才能もほぼない。正直、誰も君と組みたがらないよ?」


淡々と、しかし楽しげにウェルを見下ろす。


「それにさ、冒険者ってのは才能がある人がなるもので、凡人が気軽にできるものじゃないんだよ?」


「……」


何か言い返そうとして、ウェルは口をつぐんだ。

彼女の言葉は事実だった。

ここ最近の依頼は低順位のブロンズ冒険者とルーキーのパーティでギリギリでこなすという事を続けている。

肩書きのブロンズ冒険者としては能力不足と、2年目のちょっとした先輩風の影響で数回組んだ仲間には見捨てられ、ギルドでは厄介者扱い。

最近は少しは自覚している。


「ま、人生には向き不向きってあるからね。依頼を沢山受けてくれるのはありがたいし、よく見た顔が無惨に死なれても気が悪いから、君は普通に畑でも耕して生きた方がいいんじゃない?」


リリアは軽く笑って手をひらひらと振る。


「じゃ、そういうことで! 次の人、どうぞー!」


彼女の態度はもう、ウェルなど存在しないかのようだった。

ウェルは何も言わずにギルドを後にした。

悔しさで頭が真っ白だった。

何もかもが嫌になり、気づけば訓練場にしていた森へと向かっていた——。


「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ウェルの叫びが森に響く。

手にした剣を、そこらの草や木に向かって振り回した。

ザシュッ! バサッ!

斬れた草が宙を舞い、細い枝があちこちに飛び散る。

ギルドから追い出されるように去ってきた彼の胸には、怒りと悔しさしかなかった。


(何が『君は冒険者に向いてない』だ……)


リリアの嘲るような声が脳裏をよぎる。


「……クッ」


力尽きたように、大の字になって寝転がった。

空は赤から紫、そして黒へと変わっていく。


「……はぁ。」


全てがどうでもよくなり、気づけば目を閉じていた...



寒さで目を覚ましたころには、森はすっかり闇に包まれていた。


「……火を起こさないとな。」


暗闇の中、手探りで散らばった枝をかき集めた。

何度か火打石を叩くと、小さな火が灯る。

しかし——すぐに消えた。


「……」


再び枝を変えて試す。

今度は少しだけ燃えたが、またすぐに消えてしまう。

そのとき——手に取った一本の枝に、ウェルは最悪そうな顔をした。


「うっ……モイストツリーかよ。」


ヌメヌメとした感触。独特な湿った匂い。

乾燥を防ぐために自身で保湿する性質を持つこの木は、この森の至る所に生えている。

おかげで森を歩けば衣服にねっとりと付着し、洗ってもなかなか取れない。


「クソが……」


イライラしながら、それを適当に火に放り込んだ。

どうせ燃えるわけがない——そう思っていた。

しかし——


「え?」


燃えた。

消えることなく、ゆらゆらと、ほのかに暖かい光を灯していた。

しかも、いつもの嫌な匂いが、甘く芳ばしい香りへと変わっていた。

ウェルはしばらく、それをじっと見つめていた。


(……燃えないと思ってたものが、燃えることもあるんだな。)


ずっと自分には無理だと、何をしてもダメだと思っていた。

けれど、もしかしたら方法、使い方の間違いや見て来た、感じた角度を変えれば、何かを変えられるかもしれない。


このモイストツリーのように。

ウェルは火の光を見つめながら、小さく笑った。


(……俺にも、まだやれることがあるかもしれない。)


その瞬間、一本の木の枝から始まる彼の未来が、静かに燃え始めた。



翌日、ギルドでウェルが仕事の依頼板を眺めているいると、ふとバンダーが声をかけてきた。

赤髪の斧使い、ブロンズランキング3位の男だ。

たった2年でその順位になった彼はギルド内で有名な実力者で、その存在感は圧倒的だった。

同時期にブロンズランクに昇格し、最初は何度かパーティを組んだ事があったが今では、ウェルがパーティを組みたくても、彼に誘われることはまずなかった。バンダーはそんな自分に目もくれず、すれ違うだけで通り過ぎて行く。

だが、今日は違った。


「あれれ〜、みんなの"リーダー?"ウェルさんがリリアちゃんをまた困らせようとしてるな〜」


バンダーは嫌味を込めてウェルに声をかけてきた。

燃える様な赤い髪が特徴的で、彼の挑発的な笑みがウェルを直視する。


「無能なやつは邪魔だから、自分の身の丈に合う仕事をやってろ」


その一言が、ウェルの心に鋭く突き刺さった。

バンダーは、いつも冷ややかな目で彼を見ていた。

そして、今日もその言葉を口にした。

ウェルはその言葉に反応できず、何も言わずに黙ってギルドから去ろうとした。

だが、バンダーは追い討ちをかけるように、さらに言葉を続けた。


「おい、なんか言えよ。

今更自分の状況に気付いて大人しくしてても、前のお前を知ってるから余計にイラつくんだよ。

この支部の依頼は、ブロンズから2人以上のパーティからしか受けられないんだ。

つまり、この支部で顔の効く俺は、お前を1人にすることも簡単だってことだ。

わかったら、さっさとママのところに帰んな。」


その言葉に、ウェルは目を閉じて深く息をついた。

心の中で反論したい気持ちが湧き上がったが、言葉にすることができなかった。

どうしようもない自分に対して、怒りと無力感がこみ上げてきたが、黙ってその場を離れた。

その時、ウェルは強く感じた。自分の無力さを。

だが、その無力感の中に、小さな炎が灯った。バンダーの言葉が、彼の心に火をつけたのだ。


「俺は、諦めない…」


そして、昨夜のモイストツリーの枝を思い出していた。

王国に来てから、安い部屋を借りている。

その部屋に帰ってすぐ机に向かった。


「俺には、想像力がある。」


何か別のやり方で力をつけることができるはずだ。

そのためにはこの年齢に合わないくらいの資金を手にして優秀な冒険者を雇い、質の高い装備を手に入れる必要がある。

そのきっかけはあの木の枝を活かした商品を生み出し、資金を稼ぐ事だ。

時間も食事も忘れて、その日は夢中で計画書を作っていた。


「できた!!」


朝日が窓から差し込むと同時に、立ちあがりその掲げた計画書は煌めき輝いていた....



最後までお読み頂きありがとうございます。

初めての投稿で読みづらい点が多々あったり申し訳ありません。

これから、先輩方の作品も拝見して勉強して参ります。

引き続き、ご愛読頂けるよう努力して参りますのでよろしくお願い申し上げます。

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