トチナの実から灰汁抜きをするようじゃな。
ダリルさんが、先ずは麺をの。
いやぁ、見事な麺打ちじゃわい。
粉代の代わりに渡す麺を打ち、一部を鍋へと。
茹で揚げた麺は、パルマさんとダリルさんの腹の中へとな。
引き上げたあと、軽く炒めただけなのじゃが、なんと言う旨味じゃ。
植物油でニンニクと唐辛子に似た物を炒め、それと麺を絡め胡椒代わりの砕いたゴザの実を振り掛ける。
仕上げに熱した植物油でマル芋粉を炒めて掛け回しておるな。
実にシンプルじゃ。
じゃが、実に美味い。
まぁ、パスタを食べるのがメインでのうて、茹で汁を得ることが目的じゃ。
ゆえに一人分しか湯がいてはおらぬがな。
そして、ダリルさんはトチナの実を鍋へとな。
この実は、小屋へ来る途中に採取しておる。
ほんに、何処へでも生えておるようじゃてな。
しかし、殻も剥かずに鍋へ入れておるのじゃが、はて?
『おそらく、茹で汁も使うのでしょう。
実際、皮へ多くの栄養が含まれる植物は多いですから。
まぁ、灰汁が多く食べ難いため、普通は捨てますが』
なんとのぅ。
トコトン、トチナの実から栄養を搾り取る気じゃな。
さてはて、どがぁな兵糧丸ができるのやら。
ふむぅ。
凄い灰汁じゃな。
鍋の中が、ドス黒くなっておるのじゃが?
それが暗灰色な泡を出し始める。
毒物かな?
いや、アレは、どう見ても人が食べて良い物には思えぬのじゃが?
『そうでしょうね。
人が摂取するに値しない物を、灰汁として抜いているのですから。
しかし、アソコまで灰汁抜きなど、普通は出来ません。
どう言った仕組みなのでしょうか?』
そう興味深々とな。
「ふむ。
その、本国とやらで、再現はできんのかね?」
科学的に合成したり、遺伝子操作したりと、色々な手があるじゃろうに。
『マスター
科学で全てを解決することは、不可能なのですよ。
まぁ、我々が至った科学で、では、ですが。
特に動植物が生み出す効能を、人工的に創り出すことは困難なのです。
出来たとしても、コストに見合いませんね』
つまり、自然界より得た代物を活用した方が良い訳じゃ。
なれば、あの世界から食材を得てはどうじゃね?
本国の技術なれば、映像で無く、あの場へ行けるのじゃろ?
何せシュウさんが、この地へ来ておったのじゃからのぅ。
『お気付きでしたか。
実は、あの地から動植物を得て育てております。
ただ、あの地では、何があるか分からないため、別の地で、ですが。
実は、この屋敷地下でも育てておりますよ』
いや、異世界の動植物を、勝手に持ち込まんで貰いたいのじゃがぁっ!?
『いえ、どの世界で、どの動植物が育成し易いかを知るためにも、様々な環境にて育てる必要があるのです。
現に本国では、ここの五倍早く育ち三倍近く収穫量が上がる穀物もありますが、逆に七倍遅く育ち、収穫量は一割未満の植物もございますから』
ほっへぇ。
世界が違うだけで、そがぁなことになるんかいな。
ん?
ダリルさんが、トチナの実を鍋から引き上げたのぅ。
はて?
鍋の前で顎へ手を添え、何やら考えておる。
どうしたんじゃろか?
したらな、何を考えたのか、マル芋粉を直接鍋へとな。
いやいや、粉を湯へ溶かして、どがぁする気なのじゃ?
投入したマル芋粉が溶けるように鍋を掻き回しておるな。
ん?
手に雷晶石を持っておらぬかえ?
ほっ!?
鍋へ雷を流しておるのか?
いや、いったい何を考えておるのじゃろうか?
え?
殻を剥いたトチナの実と殻を、再び鍋へ。
何故じゃ?
はい?
うわぁっ!?
さっきよりドス黒い灰汁がっ!
マジかぁっ!
さっきので、抜け切っておらなんだ、だ、とおっ!?
はい?
徐々に、湯が透明になっておらぬかえ?
どがぁ、なっておる?
したらな、ダリルさんが、別の鍋へ湯を。
笊のような物で濾すようにの。
ふむ。
真っ白でプルプルなトチナの実と、白くホロホロになったトチナの皮は、分かる。
じゃが、あのドス黒い球体はなんじゃ?
ヘドロをゼリー状にし、球体に固めたような代物なのじゃが?
『どうやらあれは、トチナの実から出た灰汁が固まった物みたいですね』
マジかぁっ!?




