獲物がアチラへ集まった理由?え?ワザとなの?
ダリルさんの話しを聞いた狩人の1人がな。
「そのようなことを、何故した?
辺りの獲物が減ってしまうであろうが」っと、不機嫌にな。
したら、他の狩人がさ。
「それは仕方あるまい。
レテラの阿保が、付近へ獲を集めよったんじゃからの」
そう告げるとな。
「じゃが、ダリルの力量なれば、アチラ方面へ集まらぬように散らせよう。
意図があったように思えるのじゃがな」
1番年嵩の狩人が、そのように指摘を。
すると他の狩人も同じように思えたのだろう、問うような目でダリルさんを。
その眼差しを受け、ダリルさんがな。
「うむ、指摘された通り、意図的にアチラへ集めたな」っと。
「なんでじゃ?
獲が減ってしまうであろうが?」
不機嫌に問われると。
「いや、それが、目的だからな」
そのように。
え?
わざわざ、この辺りの獲物を減らしたの?
なんで?
っか、一部の狩人が殺気立っているんだが?
こえー!
したら1番年嵩の狩人がさ。
「それは、何故じゃな?」
そう静かに問う。
激昂している狩人は、返答次第では襲い掛かる勢いだ。
まぁ、生活に関わるからな。
「里長からの頼まれごとに対する、俺なりの回答、そう考えて貰いたい」
いや、どゆこと?
周りの狩人・・・いや、年嵩の狩人は別か?
中年どころの狩人達は困惑してるな。
「やはり、そうか。
しかし、思い切った手を使ったのぅ」
そう言いつつ、下顎を一撫で。
「い、いや。
納得しとるとこ悪いのだがな。
意味が分からないのだが?」
そう狩人の1人が。
「それなんだがな。
俺は里長から若い狩人が育たないことについての相談をな。
そうだな。
酷い例としては、レテラだろう。
年齢的には中層勢に属するが、この辺りでしか活動できん。
中層での狩りへ同行すると役立たずだけでなく、足を引っ張る。
余りにも獲が獲れぬのにも関わらず、獲物を売りに来たりと挙動がおかしい。
他にも、このような輩がな。
あまりにも力量が低いせいだな。
ゆえに、どうすれば良いかを考えてくれぬか、っとさ」
ダリルさんが告げると、狩人たちが呆れる。
「いやいや。
若いダリルに、何を押し付けておるのだ、里長は?」
まぁ、そうだよね。
したら、年嵩の狩人がさ。
「なにを他人事のように告げておる?
儂らを含め、お主らも当事者ぞ?
若者を導けておらぬのじゃからの!」
あーねぇ。
確かに若者を指導する立場の年齢だわな。
「いや。
その理屈なら、ザーハントさんが力量を得ているのはおかしい。
オルド爺の力量は認めるし、指導者としての力量もザーハント達を見れば分かる。
そして、ザーハントさん達の力量と指導力に問題があるとは、思えん。
だから、ちと調べたんだがな。
昔より、この辺りの植生が良くなったらしい。
その影響で、草食の獲物が増えておる。
だから、獲を狩るのが楽になったみたいだな」
したらな、ザーハントが嬉しそうに。
「おうよ!
知り合いから畑へ撒く肥料の余りを貰い、付近へ撒いとんだ。
森が豊かになれば、獲物も増えるでな」っと、嬉しそうに。
「チッ!
それが原因かっ!
いらんことすんなっ!」
いきなり、ダリルさんが!
いや、なにごと!?
「いいか?
あんたは、良いと思いやったんだろう。
だが、自然を勝手に人が弄るんじゃねぇっ!
最近、刃鹿の群れを抜けて、コチラへ獣や猛獣が抜けて来て居るのを知ってるか?
刃鹿に屈強な牡鹿が増えたのも、そのせいだ。
師匠と俺が駆け回って、中層を落ち着かせはした。
だが、無理が祟って師匠は倒れ、俺の旅立ちは延期だ。
どう、落とし前を付けてくれるんだ?
ああん?」
こ、こえー
本当に18歳か、この人?
「い、いや。
そ、その、なんだぁ。
まさか、そんなことに?」
「いや、コイツも悪気が有った訳ではな」
「もう良い。
終わったことだ。
だが、2度とするなっ!
下手したら、里が壊滅する!
それと、楽に獲物が狩れるから、怠け癖が付いたため、若いヤツらの力量が上がらんのだ!
だから、狩るのに苦労する程度の数、昔の状態が望ましい。
これから暫くは、アンタらが、この辺りの獲物を調整すんだな」
そう突き放すように。
まぁ、旅立つみたいだし、仕方ないかな。