愚か者の末路って、悲惨だなぁ。
徐に指笛を鳴らすダリルさん、なんぞ?
『近くで待機している狩人たちを呼んだようですね。
本来、この試練は里から旅立つ若者の技量を試す場です。
ゆえに、不測の事態が発生した際に支援する人員が、配備されているのです。
ただ、去年は適応年齢に達する者は居らず、今年は試練へ挑める技量を有する者が居りませんでした。
ゆえにダリル殿へ依頼が回った経緯がございます。
どうやら、支援者たちが来たみたいですね』
アドバイザーさんが告げると、狩人と思われる方々がな。
年配のベテランばかりのようだな。
「どうしたダリル?
ん?
撤収準備が出来ておるようだが?」
「すまんが、荷を運ぶのを手伝って貰えぬか?」
あれ?
レテラは?
俺が、そう思っているとな。
「ふむ、そう言うことか?」
「おそらくはな。
確かでは無いが、昨日、この付近でキャルカを狩ったとのことだ。
この一点で考えても、この者は信用ならん」
ん?
駆け付けた者達が、一斉ににレテラを見る。
同時に見られて、レテラが怯んでいるな。
「な、なんだよ」
「何故、キャルカを狩った?」
そう狩人の1人がレテラへと。
「はぁ?
そんなん、アレが高値で売れるからだろ?
何が悪いんだ?」
当たり前のようにな。
「里長からは、ダリルが狩った獲物を持ち帰る以外は禁止されとるハズだ。
キサマは、帰りに獲物を狩っておるな?
何故だ?」
そう尋ねられ、レテラが不思議そうにな。
「おりゃぁ、狩人だぞ。
獲物を狩って、何が悪い?」
あー
禁止されてるのに狩ってたのか?
そらぁ、ダメだろ。
「では、聞き方を変える。
何故、ダリルが狩った獲物の一部を、自分の獲物として売った?
返答次第では、狩人としての資格を剥奪する。
心して答えよ」
はい?
こ、こいつ、そんなことしてたの?
盗っ人やんね!
「はぁ?
なんで、俺がダリルの獲物を奪ったことになってんだよ!
証拠があんのか?」
「ある」
「はぁ?
なにを?」
「で、やはり?」
そうダリルさんが告げるとな。
「うむ。
あらかじめ決められた符牒が刻まれた皮を売っておった。
おそらくは、里では皆へ報じられておろう」
「い、いや、う、嘘だろ?
そんなバカな!」
「バカはキサマだ。
以前にも他人の獲物を奪ってただろ、キサマ。
その疑いもあっての、この度の任務なんだよ。
類は親類縁者に及ぶと知れ。
全く、バカなことをしたものだ」
呆れたように告げられるとな。
「くっ!」っとか言って駆け出したのだが?
誰も追わないんだが?
『まぁ、里へは帰れませんからね。
とは言え、他の里へも情報が回るでしょう。
そんな罪人を迎え入れる里はありません。
深層へ繋がる森は、人が1人で過ごすには過酷だと言えます。
まぁ、彼程度では、3日も持たないでしょうね』
「む?
アヤツ、刃鹿の群れが居る方へ向かわなんだか?」
そう狩人の1人がな。
「ああ、刃鹿が里の守りであることを教えたからな。
ヤケにでもなったか?」
そう、なんでも無いように。
「いや、ソレは不味いのではないか?
追わねば!」
狩人の1人が慌てるのだが。
「いや、今、アチラへ行かぬ方が良いだろう」っと、ダリルさんがね。
「はて?
それは、何故かね?」
そう問われ。
「アチラへは今、猛獣が集まっているからな。
死地へ飛び込むようなものだ。
行くなら、俺以外で行ってくれ」
そのようにな。
っか、なんで、そんなことが分かるんだ?
「ぬ?
なぜヌシに、そがぁなことが分かるんじゃ?」
老齢の狩人がな。
したらさ。
「あのバカのせいで集まった獣を、アチラ方面へ追い立てたからな。
獲物の存在が濃いため、ソレを狩る猛獣もアチラへ集っている。
獣同士の争いも起こっているみたいだ。
コチラは俺が居るし、奥には刃鹿の群れだ。
挟まれて拡散仕切ってれおらん。
そんな密度が高い場所へ行きたいかね?
俺は遠慮するが」
あー、そんなんなってんだな。
って、ん?
じゃ?レテラは?
あ、察し。
成仏してね。