トチナの実を灰汁抜きしよう。さて、どうなるかな?
「俺の師匠は、深層素材にて灰汁抜きをしておった。
それでも三日は掛かったのだがな。
さて、この煮汁では、どうだろうか?」
そう言いながら、ダリルさんがトチナの実を鍋へと。
当然、ダリル麺を湯がいた釜だ。
っか、うわぁぁっ。
ドス黒い泡がががっ!
異臭もするため、ダリルさんが風晶石で異臭を散らしておるな。
そのヘドロのような泡を除去。
先程入れたトチナの実を取り出すと。
「し、信じられん!
この短時間にて、完全な灰汁抜きが?
いや、見た目だけやも」
そう告げ、トチナの実を切ると口へ。
「こ、コレはっ!
今まで食べた、どの食材よりも美味いやも。
信じられん!」
いや、これほど驚愕するダリルさんは、初めて見たのじゃが?
ん?
ダリルさんが食べたトチナの実?
ああ、映像ゆえ用意可能なのじゃな。
さて、せっかくアドバイザーさんが出してくれたゆえ、試してみるかのぅ。
っか、酷く芳しい香りなのじゃが?
う〜ん、腹が鳴る。
何故じゃ?
十分に食っておるゆえ、腹は減らぬハズなのだが?
むむっ?
いつの間にか、口へ。
無意識と、言うヤツじゃな。
薫りに釣られて、思わずのぅ。
ぐわっ!
な、なんじゃぁっ!
美味い、てぇ、もんじゃねぇぞっ!
何の味だ、これ?
肉や野菜に魚介類にキノコ。
俺が食べた事がある食材で、コレに勝る物はない。
食感もザク、コリカリ、モチモチ?
いや、表現が。
先程のダリル麺が霞むのじゃが?
っか、もったいなくて、飲み込めん!
ずっと、咀嚼していたい。
っか、は?
あれ?
消えた?
溶けるかの如く消え去ったのだが?
俺のぉ、俺のトチナの実ぃ。
ぐっすん。
ハッ!
そうだ!
そうだった!
これ、映像だから、幾らでも食えるじゃん!
『ダメです。
素の侭で食すのは一日一回といたします』
まさかの、アドバイザーさんからダメ出しがっ!
なぜじゃっ!
『マスターのご様子を鑑みるに、かなりの依存性があるものかと。
もはや中毒と言って良いでしょう。
普通に食べて良い物では無いと判断いたしました』
そんなぁ、殺生なぁ〜
っか、ハッ!
まさか、麻薬みたいな代物なのか!?
『ある意味では麻薬より質が悪いですね。
麻薬とは違い、身体に良く、精神を犯すこともありません。
活力を与え、体調を整える効能もあります。
体内毒素の排出を促し、新陳代謝も促進しますね。
テロメラーゼとなる成分を含んでおり、テロメアの修復や活性化を促進します。
もしかしたら、修復し成長させるかもしれませんね』
ん?
テロメラーゼ?
テロメア?
なんじゃな、それは???
『生き物の寿命を左右すると言われている者ですね。
テロメアが短いと老化し易く、ガンなどにも罹り易いと言われています』
はい?
ある種の万能薬的効能に聞こえるのじゃが?
はて?
『依存性が無ければ、ですね。
長く健康に生きられるようになっても、トチナの実なしには生きられなくなりますよ?
生活の大半をトチナの実へ費やすことになるでしょう』
身体に異常は無く健康であり、しかも活力を持った中毒者かぁ。
そんな輩がトチナの実欲しさに暴れたら、堪らんな。
『まぁ、暴利を貪りたい者に知られたら、搾取される者が絶えなくなるでしょうね。
ダリル殿は、その辺りに気付いてないみたいですが、他者へ分けるつもりは無いみたいです。
しかし、ダリル殿には依存症状が出ていませんね。
やはり、身体の造りが違うのでしょうか?』
なんとも規格外な。
パルマさんとカーナさんが興味を示しておるが、ダリルさんは渡す気が無いようじゃな。
しかし、そのような効能がのぅ。
『マスターには関係ありませんが』
はい?
何故じゃ?
俺もトチナの実を食したであろうに。
『映像ですならねぇ。
実際に食べた訳ではありませんので』
あっ!!
そうじゃったわい!
普通に食べれておったから勘違いしたが、アレは虚像であり実際には食べておらなんだわい。
悔しいのぅ!




