激突、刃鹿!の、ハズ、ハズだよね?あれ?
刃鹿に気取られないように移動するダリル君。
いや、年齢的には君だが、その風貌や風格から鑑みるに『さん』だな。
そんなダリルさん、なんだがな。
潜んでいた場所から離れ、さらに木々が密集している地点へ。
良く、あんな所をスルスルと動けるものだ。
俺ならば、木々に引っ掛かって身動きできなくなっているだろう。
俺は気付いて無かったのだが、いつの間にか弓をな。
木へ立て掛けていたヤツだろう。
いつの間に?
無駄な動き無しに、矢筒から矢を取り出す。
弓へ矢を番えると、キリキリと引き絞り放つ。
うや?
外したんだが?
見た目より技量は劣ったのか?
『アレは、ワザと外しておりますね。
刃鹿が厄介なのは、同族意識が強いことです。
例え群れから放逐した個体であろうと、格下が害したとなれば群れにて報復いたします。
群れ個体を狙った場合、格上であろうと付け狙いますからね。
人族は個体としては刃鹿より格下あつかいとなります。
ゆえに害すると、群れで里を襲うでしょう。
それにて壊滅する里が年に1つは出るそうです。
ですので、注意を引く程度に矢を放った訳です』
いや、倒したらダメって、なんてぇ無理ゲー?
矢が顔を掠める感じで通過したため、流石に刃鹿もダリルさんに気付いたようだな。
角を振り上げて、彼へ向かって走りだしている。
凄い迫力だな、をいっ!
あれさぁ、角以前に体当たりされただけでダメだろ?
車に轢き殺されるようなもんだぞ、アレ。
っか、なんで逃げない?
佇むように立ち、手のひらを上へ。
指を手前に。
来い来いってか?
人にとったら挑発だが、鹿に分かるハズが・・・
あ、イキリ立った!?
分かるのかよっ!
猛スピードで、ダリルさんへ突っ込んで行く。
っか、もうダリルで良いわっ!
なにしとんねんなっ!
余裕こいとる場合かっ!
早よ避けな、死ぬでぇっ!!
ん?
はい?
はぁ?
あー、うん。
とりあえず、刃鹿がバカなのが分かった。
っか、気付かなかった俺も、似たようなもんか?
軽く後退したダリルを追った刃鹿なんだがな。
刃が木々に突き刺さり、刃の根本から折れて角から剥がれている。
無数の刃が取れており、普通の鹿みたいにな。
いや、角自体も、何箇所か折れて地へ落ちてるみたいだ。
っか、なんか急に、おとなしくなった?
『この刃鹿ですが、角の状態にて危険度が異なります。
角の大きさ、および刃の数にて交戦的になる模様。
群れを率いる場合は抑制されますが、そうで無い場は交戦的になります。
まぁ、それが群れを出される原因ともなる訳ですが。
で、この鹿は倒れる際に断末魔を上げます。
それが群れへ届くと、群れによる報復が始まる訳です。
まぁ、断末魔を上げる隙なしに倒せば、群からの報復はありませんが、普通は不可能ですからね。
あと、刃と角へダメージを負ったくらいでは、群れからの報復はありません。
まぁ、そうなった個体は大人しくなりますし』
解説ありがとうございます。
っか、刃を失い、角へダメージを負った鹿が、明らかにショボクレてなぁ。
気落ちしたように去って行くんだが?
なんか哀れになったよ。
で、ダリルさんなんだがな。
木々に刺さった刃鹿の刃を採取している。
つか、根本を持ち、刃を這わすようにすると、木が軽く切断されるんだが?
んだぁ、アレ?
下手な包丁やナイフなんぞ、比較対象にもならん切れ味だぞ。
しかも、結構な数が得られたようだ。
それを布へ包み皮袋の中へ。
って、え?
なにか投げた?
『蛇をナイフを投げて仕留めましたね。
なかなかなの早業でした。
ですが、同時にウサギを仕留めてもおります。
素晴らしい技量だと言えるでしょう』
は、いぃっ!!?
今の一瞬でかよっ!
っか、何が起こったのか、分からんかったわっ!
で、倒したら蛇とウサギを解体してんな。
内臓を除去して埋めた後、近くの小川へ布袋へ入れて沈めている。
流れが速い場所へ放り込んだようで、血が川下へと流れて行く。
血抜きも兼ねてんのかね?
そこんとこは、素人だから分からん。
しかし、これで18歳か?
年齢詐欺じゃね?