第一異世界人、発見です!
時速的には何キロでているのだろう?
体感的には5、60キロくらいか?
周りが森だし、椅子に座っているから地面に近い。
だから体感的に速く感じているかもしれないな。
そうなると、思ったよりも速度は出てないかも。
『スピードでしたら、時速85キロ前後で推移しております。
視聴者が恐怖を感じないよう調整しておりますので』
あー、映像だったな、これ。
そんなことも出来るのかぁ。
ん?
ウインドウは透明となり、存在が分からなくなっていたんだが、なんかマークがでた?
右前方に何かが潜んでいる?
そなの?
生き物かぁ。
映像だから、俺への危険はない。
なので行ってみることに。
減速したことが視覚的に認識できた訳だが、目標へは着実に接近しているみたいだ。
だが、辺りを見回しても、生き物の姿はない。
はて?
すると、一本の木付近が、光で輪郭をなぞるように。
ええっ!?
人ぉ!!?
木陰へ身を潜めた人がな。
いや、指摘されるまで、全く気が付かなかったんだが?
っか、視線を外すと姿を見失うレベルだ。
輪郭を光らせる感じでマーキングされているため、なんとか気付けるんだが。
近寄ってみると、弓を傍らの木へ立て掛けて潜んでいる狩人だった。
っか、若くね?
ん?
ダリル君18歳?
はい?
もう狩人として働いてんの?
早くね?
ん?
この世界では、16歳から准成人あつかいらしい。
独立することは可能だが、村から出るには儀式を経る必要がな。
今は、その大切な儀式を行っている最中らしい。
いや、何気に詳しくね?
えーっとぉ。
幻送機の機能を使用し、近辺の情報収集を行なっているらしい。
その情報を元にナビゲートしているらしいな。
で、儀式なんだが。
この時期になると、群れから成長したオス鹿が追い出されるらしい。
それが刃鹿と呼ばれる種であり、人里へ現れると危険らしい。
そんな刃鹿が里へ向かわないように、一週間ほど、ここで見張るのだとか。
いやいや。
旅立ちの儀式にしては、過酷じゃね?
近くへ水場があり、狩った獲物も樹上へ隠しているらしい。
ただ、刃鹿以外にも危険生物は居る。
肉食獣などだな。
そんな獣に悟られずに森に潜まないとならない訳だ。
あ、だから、俺が彼を見付けられなかった訳か。
っか、狩人っうより忍もの、忍者みたいだな。
ん?
何かが森から来ている?
ナビさん、マジ優秀。
俺は全く気付かなかったよ。
っか、ダリル君は気付いたみたいだね。
そう、ナビさんが教えてくれる。
あーっと、輪郭を赤い光でナゾっているため、俺にも認識できたんだがな。
それが無かったら、全く分からんぞ、これ。
しかし、鹿なんだろうなぁ。
角が有るし。
だが、鹿のようなツノに刃物みたいなのが、無数に生えているように。
俺の見間違えではないみたいだな。
なに、この危険生物。
普通の鹿が持つ角も危険ではある。
だが、コチラの危険度は、それどころでは無いぞ。
最早、兵器だろう。
ん?
古代文明が遺伝子操作にて生み出した、生物兵器の名残?
いや、なにを造ってんやねん!
群れから追われた若鹿は気が立っているため危険らしい。
なので、村へ来ないように追い払う必要がな。
いや、アレを?
マジで?
若い刃鹿に気付いたダリル君が、スクッと立ち上がる。
っか、背、高ぁっ!
190近くは有るんじゃね?
狩衣を身に纏っているため、正確な体格は分からない。
だが、ゴリマッチには見えないから、細マッチョなのかもな。
顔は凛々しい感じで、十分にイケメンと言えるだろう。
っか、若者特有の、緩い感じや、驕りはない。
ベテランの風格を漂わせているんだが?
本当に彼、18歳?
立ち上がったダリル君は、速やかに移動を。
一切、音がしないんですが?
ん?
なんか、迂回するような移動だな?
あんな大回りが必要なのかねぇ?
『風向きを考慮しつつ、鹿へ風が流れない位置取りにて動いていますね。
匂いで悟られないための工夫でしょう』
はぁ?
そんなことまで考慮して動いてんのか!?
俺には無理だぞ、それっ!