ふむ、どうやら力量試しのようじゃの。往生しとくれ。
荷車を置いた広場から移動を。
本来ならば、奥へは進まない。
崖山へ近付けば近付くほど、危険になるでな。
じゃが、今は深層狩人のダリルさんが居る。
彼は積極的に狩るつもりはないでな。
代わりに守りを受け持つつもりのようじゃ。
とは言え、この辺りなれば、シムエル嬢であっても戦えるじゃろう。
まぁ、狩りちゅうより鍛錬に相当するじゃろうがな。
しかも、この者達は、中々にチートじゃからのぅ。
特にダリルさんとカリンちゃんじゃが。
何がチートちゅうとじゃ、その索敵が、じゃな。
辺りの地形もじゃが、生き物の生息有無を察知しよる。
狩人にとって、垂涎の能力じゃろう。
まぁ、付与師にしか扱えぬ力なれば、望んで手に入れれる御業ではないのじゃが。
で、早速、鹿を見付けたようじゃ。
本来ならば風下へ移動して近寄る。
じゃが、風上から向かっておるのじゃが?
『カリンさんが、風晶石にて匂いを上空へ散らしております。
同時に音も、ですね。
そのため鹿に察知されておりません』
なるほどのぅ。
やはり中々のチートじゃてな。
む?
ガンレート嬢とシムエル嬢が離れた?
アレは大丈夫なのかえ?
『二人の周りを風が舞っております。
アレは所謂、風の結界と言えるでしょう。
ただ彼女達が気配を消す技量も、中々のものかと。
風下からであれば、悟られないでしょう』
そ、そうなんじゃなぁ。
たしかシムエル嬢は、商家の娘さんでは?
『コチラへ厄介になってから、色々と鍛えたみたいですね。
なにせ狩場へ同行させる訳です。
彼女のせいで獲物に悟られては堪りませんので』
なるほどのぅ。
じゃが、そがぁに容易く身に付くものかや?
『容易く、では、ありませんねぇ。
まぁ、元々、護身ではありますが、槍術を身に付けてはおりましたし。
それに、ハゲル殿達の庇護を得られねば生きられない状態。
必死さが違います。
ゆえに新人狩人以上には、技量が上がっておりますよ。
まぁ、コチラ側の新人狩人並、ですが』
ふむ。
一応は、狩りが行える技量なのじゃな。
で、風下で身を隠せ、ある程度の身動き可能な場所へとの。
む?
ファマル嬢が、心配そうに後を追っておるな。
ハゲルさんとロゼッタ嬢が、呆れたように苦笑いを。
「ふむ?
あの鹿ていどなれば、二人で十分だと思うが?」
ダリルさんが、不思議そうに。
「ファマルは、ちょっと過保護なんさね。
まぁ、襲撃されていたアノ子達を助けたからねぇ。
情が移ってんだわさ」
「ほぅ。
そう言うものかね?」
そんな遣り取りの間に、二人が定位置に。
で、カリンちゃんが、風上へ香りを、の。
その香りに鹿が反応。
で、ワザと枝を折る音を。
鹿が驚いて、反対側へとの。
数頭いた鹿の内、二頭がシムエル嬢達が潜む場所へと。
ん?
いつの間にかシムエル嬢が槍を構えておるが、槍なんぞ持っておったかのぅ?
『槍は分解して保持しておりましたね。
槍の柄を繋ぎ、穂先を付ければ、槍となります。
ハゲル殿作であり、一般には出回っておりません』
なんとのぅ。
そがぁな品じゃったか。
じゃが、強度的には大丈夫なのかえ?
『そこら辺は、色々と工夫されているみたいですね。
まぁ、普通の槍よりは強度に劣りますが、実用に耐えるレベルかと』
うむ、そのようじゃな。
迫って来る鹿の喉元へ、的確な突きがの。
さらに、ガンレート嬢が躍り出し、トドメを。
で、近くへ居た、もう一頭への牽制もの。
瞬殺、ちゅう感じじゃったが、一瞬、狩られた鹿近くのヤツが、殺意を。
じゃが、ガンレート嬢の構えと、体勢を整えたシムエル嬢。
さらに、複数の気配が迫って来るのを感じたのじゃろうな。
悲し気な声を上げつつ、去って行ったわい。
『どうやらツガイだったみたいですね。
雌を狩られ憤ったようです』
まぁ、鹿にも感情は有ろうてのぅ。
憤るのも当たり前じゃわい。
じゃが、弱肉強食ゆえ、仕方あるまいて。




