ハゲルさん?放っておいたら癌で身罷るでなぁ。仕方あるまい。
ハゲルさんは付与師では無いゆえ、悟られることはあるまいて。
じゃが、万が一を考えてな、ちと離れてから微電流をのぅ。
ふむ。
やはり悟られることは無いかえ。
で、体内を確認してみると、ちと悪性ポリープが育っておるな。
それを電撃にて焼き切る。
ふむ、問題なく除去できたようじゃの。
一瞬じゃったからか、ハゲルさんは気付いてもおらぬわえ。
他にも、身体へガタが来ちょる場所を探り、微電流にて細胞を活性化。
ふむ。
これで完全な健康体じゃのぅ。
ついでにロゼッタ嬢もじゃな。
ん?
個人情報の覗き見?
今更じゃろ。
何人の記憶を、覗いたと思っちょんなら?
そがぁなことよりも、ロゼッタ嬢の健康の方が優先じゃわいや。
で、ロゼッタ嬢の状態を、微電流にて精査してみたんじゃがの。
うん、健康体じゃな。
じゃがのぅ。
極度の筋肉疲労に、肩コリみたいな鬱血箇所がな。
そがぁな箇所を微電流にて解してゆく。
ふむ。
滞っておった血流が、スムーズに流れておるな。
筋肉も元気を取り戻しておるぞぇ。
鍛治の効率が、急に良くなっとるなぁ。
二人ともに、急に身体が楽になったでな。
凄く驚いちょるんじゃがのぅ。
鍛治の途中じゃったからか、その侭で作業をな。
ふむ。
プロじゃのぅ。
で、な。
ロゼッタ嬢の記憶がのぅ。
うむ。
幼い頃から身近にハゲルさんが居ったのじゃな。
ハゲルさんの禿頭は、病気ではないが遺伝じゃて。
幼い頃から頭へは毛が生えておらぬ。
これは、戦闘中に髪を掴まれたり、引っ掛かって邪魔になる。
そう考えた一派が、遺伝子に組み込んだ結果らしいわえ。
まぁ、アドバイザーさん調べ、で、じゃがの。
そんなハゲルさんは、昔からロゼッタ嬢の面倒をの。
いやはや。
オムツの面倒から、身体を拭いて清めたりを、彼女が赤子の頃からな。
何せロゼッタ嬢の母は、産後の肥立ちが悪く身罷っておる。
母乳は、弟子の妻がな。
じゃが、自分の子を世話せねばならぬし、他にも仕事がのぅ。
ゆえに、ハゲルさんが、面倒をな。
そんなハゲルさんの事を、彼女は兄のように思い育ったみたいじゃてな。
そして、鍛治や狩りに興味を持った彼女を、教え導いたのもハゲルさんじゃ。
そんな彼へ、何時しか恋心をのぅ。
じゃが、なかなかに言い出せんようじゃて。
まぁ、近過ぎるちゅうのも、なかなかに難儀なもんなのかもなぁ。
じゃがのぅ。
ハゲルさんは、完全に妹。
いや、娘に近い感情をの。
ロゼッタ嬢に対する愛情はあるのじゃが、完全に家族愛じゃて。
この状態にて、彼女の恋心へ気付くのはのぅ。
じゃから、これはロゼッタ嬢から動かねばなるまいな。
踏ん切りが付かないようじゃが、この侭じゃと婚期を逃す。
それにじゃ。
他の女性に取られる可能もの。
ああ見えて、ハゲルさんは結構モテるでな。
何度も言い寄られておるのじゃが、鍛治バカなハゲルさんが気付いてないだけじゃて。
ん?
ロゼッタ嬢の目の色が変わった?
はて?
『マスター!
断片的に、マスターの考えがロゼッタ嬢へ、流れ込んでいる恐れが!』
なぬぅ!
そりゃ、ヤバい!
慌てて微電流を流すのを止める。
もしや、覚醒しちょらんが、ロゼッタ嬢にも付与師の素養があるのやもな。
でな。
ハゲルさんとロゼッタ嬢の二人が、互いに剣を造り終えて槌を置く。
「そろそろ、ダリルが飯を拵えた頃じゃねぇけぇ?」っと。
そんなハゲルさんへロゼッタ嬢がな。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだわさ」ってな。
おや?
「なんでぇい、改まって」
ハゲルさんが、後頭を撫でつつな。
したらな。
「ハゲルは、アタイの事を、どう思ってんだい?」っとな。
おやおや。
「ん?
イキナリなんでぇい?
そんなん、鍛治仲間で、狩人仲間だろ。
まぁ、可愛い妹分だねぇい」
おやおや。
可愛いで、頬を染めなさるかえ。
ウブ過ぎぬかや?




