新しい装備、素晴らしいですね。でも重くね?
ダリルさんは革鎧を着込み、剣を腰へ、槍を背に。
肩へ弓を引っ掛かる。
「ふむ。
背嚢との兼ね合いが問題か?」
そう呟いていると、里長がな。
「そうじゃったわい。
ガウランドに頼まれておった品に背嚢もあったわえ」
そう告げ、奥の部屋へとな。
どうやら忘れていたみたいだ。
いや、他には大丈夫なのか?
ダリルさんも呆れたように里長を見送り、その後で槍を背から下ろした。
投擲武器を革鎧へ配置するように収め、矢筒へと矢を。
矢筒は5個あり、それぞれの矢筒が器具で連結出来るみたいだ。
「誰が考えたのかは知らんが、邪魔だ」
困ったようにな。
一見便利そうに見えるが、動きを阻害しそうだな。
一つの矢筒へは30以上の矢が収められるみたいだ。
無理したら、それ以上は入るだろう。
だが、無理に入れても取り出し難いし、矢を傷めるだろう。
だから、そんな無駄なことはしない。
っか、30本入る矢筒の5個すべてが満載となり、ようやく矢が無くなったんだが、そんなに要る物なのか?
全部で150本近くか?
っか、矢だけでも凄い重量なんだが、持てるのかねぇ?
そんなん思っていると、里長が戻って来た。
っか、ヤケに引っ掛ける箇所が多い背嚢だな、をい。
「なるほどな。
その背嚢へ矢筒を引っ掛けるのか。
狩った獲物を吊るすにも使えそうだな。
ふむ、槍を引っ掛ける箇所もか。
簡単に外せ、引っ掛けれるが、ふむ、容易く外れぬか。
この仕組みは素晴らしいな。
良く考えられている。
しかも槍を吊るすことを前提に造ったのか?
この部分へ芯のような物が別に着いてるな。
つまり、この背嚢も装備の一つと言うことかね?」
そうダリルさんが告げるとな。
「そうなのか?
儂ぁ変わった背嚢としか思わなんだわえ」
そう里長が感心している。
その後は背嚢を受け取ったダリルさんが、矢筒と槍を背嚢へ配備し背負う。
「ほぅ。
ヤケに背負い易い背嚢だな。
コレならば、多くの荷が背負えるだろう」
しかし、空荷でも結構な重量がありそうだな。
『そうですね。
おそらくは30キロほどかと。
剣が2キロ、槍が3キロ、弓が2キロ、20グラムの矢が150本で3キロとなります。
そして革鎧が、20キロほどかと。
まぁ、背嚢と矢筒の重力は加算しておりませんが』
いや、空荷の段階で、その重量かよっ!
俺なら身動きできんぞ!
『基礎能力が違い過ぎますから。
彼なら数百キロの荷は、楽々と運ぶでしょう。
まぁ、持てたなら、ですが。
無理すれば1トンをも持ち上げるでしょうね』
そんなん化け物やん。
有り得ん!
『アチラの普通人も無理ですよ。
人造種であり、その混合種であるダリル殿が異常だとも言えます。
まぁ、彼らは気付いておりませんが』
つまり遺伝子操作か何かで生まれた強化生物、そう言うことか?
しかし、その膂力だけでも脅威だわなぁ。
『それもですが、その力を適切に制御していることも素晴らしい。
そもそも、そのような者は力加減ができず、繊細な作業が行えないものです。
ですがダリル殿は繊細な細工を施すことか可能。
狩りの合間に頼まれた細工を卸してもおります』
いやぁ、細工までしとんの?
多芸やねぇ。
『多芸ですよ?
そもそも、彼が使っていた装備は、全て彼が造っていた訳です。
故に革への鞣し加工に武器や鎧の作成に整備。
怪我や病を癒す薬学、まぁ、民間レベルの簡単なモノですが。
調理も行えますし、衣服も自前です。
今住んでいる家も、彼が建てていますね。
まぁ、手伝いはあったみたいですが。
むろん家具も手造りです。
何もない辺鄙な里ですから、出来ることは自分でやる、文化なのが大きいですね。
それゆえ、誰もが技術伝達に寛容です。
鍛治や革加工に服飾など。
様々な分野にて師事していたみたいですね。
まぁ、狩った獲物を対価としていますが。
なにせ覚えが早く、偶に職人仕事の補助までしていたみたいですから。
よく弟子に誘われていましたが、ガウランドさんが出張ると諦めていたみたいです』
ほー
まさに、何でもできる、ってヤツかぁ。
スーパーマンやねぇ。