自宅に帰って視聴せねば!俺なりに急いどりますよっと!
何時もより早く小料理屋を切り上げた俺は、俺にしたら早足で自宅へと。
まぁ、安普請なアパートだがな。
定年後は地元へ帰るつもりだが、両親は既に鬼籍に入っており、実家は兄弟が引き継いでいる。
友人とも疎遠になっているが、たまたま友人の1人と出会い、仕事を手伝って欲しいとな。
身体のことがあるから一度は断ったのだが、飲んで話しを聞くと仕事の遣り方がなぁ。
今時、そんな不効率な仕事の仕方をするかぁ?
パソコン使用より書類仕事が多いって?
だからさ、安いパソコンの導入と社内LANおよび内部用サーバの設置を、業者を込みで教えたんだがな。
なんで紹介した業者が俺をスカウトに来るんだよっ!
アイツ、何しとんの?
で、ヤツの会社の業務効率が激変したのは良いんだが、システム管理できるメンバーがな。
いや、俺も、そこまで詳しくないのだが?
まぁ、地元の若い衆で優秀なのは、全てとは言わないが大体が県外へとな。
そうでなくても、地元の有力企業へと。
本業に対する人の確保は可能だが、IT関係の人材確保が難しいらしい。
いや、俺くらいの人材なら、掃いて捨てるほど居るんだが?
そう告げても引かないから、仕方なく地元へ帰って手伝うことにな。
ふぅ。
まぁ、再雇用よりは給料が良いみたいだし、住む場所も手配してくれるらしいからな。
なので、定年後は地元へ帰るつもりだ。
つまり、後半年ほどで、この安アパートともお別れ、っと言う訳だな、うん。
そんな得体もないことを、つらつらと考えつつ自宅へ。
部屋へ入り荷を置いたら風呂だ。
シャワーを浴びて、着替えたら幻送機をな。
ヘッドバンドを装着すると、早速アドバイザーさんがさ。
『お帰りなさいませ、マスター。
少々遅くないですか?
後、飲まれておられます?』
いや、オマエは俺の嫁か?
『照れますねぇ』
いや、何処にテレる要素が?
まぁ、良いか。
「行き付けの小料理屋で食事して来たからな」
『ああ、グランドマスターと出会った店でしょうか?』
「そうだが、知ってんのか?」
『はい、グランドマスターから聞いたことがありますので』
なるほどなぁ。
シュウさんが語ってたか。
「それはそうと、アチラはどうなった?」
そう尋ねるとな。
『ダリル殿の動向を録画しておりますよ。
明日もありますので、コチラで編集しております。
ご視聴なさいますか?』
そらぁ、な。
そのため、長居せずに切り上げて帰って来たんだからな。
「むろん見るぞ。
で、なんか有ったのかね?」
『それは、観ていただいた方が良いでしょう。
では』
そうアドバイザーさんが告げると、辺りの景色がアチラへと。
完全に別の場所へ移動した気分に。
相変わらず見事なものだ。
ここは、ダリルさんが住まう里なのだろうか?
数軒の家が存在するが、全て木造だな。
大半が小屋よりデカいか?っと言ったレベルだ。
その中で、一応は家屋と言える感じの建屋がな。
その建屋へとダリルさんが向かっているみたいだ。
『あの家は里長の自宅ですね。
里には、あのクラスの家は数軒しかなく、大半は里の共用施設となります』
つまり里長は特権階級ってか?
まぁ、こんな鄙びた里では仕方ないのだろう。
そんな里長の自宅へと辿り着いたダリルさんが、ドアを開ける。
いや、ノックや挨拶は?
『この里には、そんな風習はありませんね。
まぁ、ダリル殿は師に教えられてはいるみたいです。
ですが、煩わしいゆえ不用、っと里長から告げられているみたいです』
うーん、田舎だからか?
ちと、不用心過ぎんかねぇ。
「里長、来たぞ。
わざわざ今日、呼び出したのには、何かあるのか?
昨日でも良かったであろうに」
そうダリルさんが告げるとな。
「うむ。
こちらは仕事ではないゆえのぅ。
ゆえに日を改めただけじゃて」
「仕事ではない?
なら、なんの用なんだ?」
そう不思議そうに。
っか、ほーんと、何の用で呼んだんだろーなぁ。