美味そうだぞ、ダリル飯ぃっ!食えんの?
「なぁ、アドバイザーさん」
『なんでしょう?』
「アチラの料理って、食べたりできんの?」
思わず、そのようにな。
いや、だってさぁ、淡々と食べてる料理からは複雑玄妙な芳香がな。
肉汁滴る肉串は、実に美味そうだ。
出汁が溶け出した味噌汁?も肉入りだな。
味噌汁っうか、具沢山な豚汁だろうか?
芋パンも芳ばしく焼けて、良い香りを。
あんなん、絶対に美味いやろっ!
『今の適合率では無理ですね』
そんなぁ。
思わずガッカリって、ん?
「今の?」
『はい、現在の適合率では不可能です。
適合率が上がると、物質に干渉しているように感じることが、可能となります。
ただし、そのように錯覚するだけであり、実際に触ることは出来ません。
触感や食感に味覚を刺激し、物へ触れたりしているように、感じることが可能となります。
ただし、実際には虚像に過ぎませんから、食べても栄養にはなりません。
ですので、擬似的に食すと、お思いください』
はぁー
触れる映像かぁ。
正確には、触ったと錯覚させるみたいだが、凄くね?
「それって、どうやれば出来るようになるんだ?」
ダリル飯、味わってみたいのだが?
『慣れてください』
はい?
「いや、どゆこと?」
『だから、幻送機を使い続けて、幻送機に慣れてください。
使い続けている内に適合率が上がりますので』
え?
いや、その。
「今すぐは?」
『無理ですね。
そんな簡単に、適合率は上がりませんので』
ノーぉっ!
ガッデム!
ダリル飯ぃ!
ぐっすん。
『そろそろ、映写を終了します。
明日もございますゆえ』
「いや、あと、もうちょい。
ダメ?」
『ダメです。
キリがありませんので』
厳しいのぅ。
チッ、仕方ない、寝ますかね。
で、ヘッドバンドを外してからベッドへと。
ふとんに潜り込んだら、気付いたら朝でした。
え?
いや、待て!
最近は眠りが浅く、何度も夜中に目覚めていた。
小刻みな睡眠となり、疲れが取れない日々だったんだがな。
久々に朝までグッスリ熟睡できたよ。
何時もはベッドから離れるのに時間が掛かるのだが、スンナリと起床でき、洗面所へと。
トイレを済ませてから出社準備を。
っか、何時もより1時間以上早い。
いや、早過ぎね?
食材の買い置きがないため、朝飯を作ることは出来ないが、時間的には調理可能だ。
朝は自分で作るか?
いや、面倒だな。
そんなん思いながら家から出る。
最寄り駅まで、俺の歩みで30分ほど。
まぁ、身体を壊した爺いの歩みは遅い。
若いヤツならば、15分も有れば着くだろう。
駅へ着き、定期で改札を通ってホームへと。
会社の最寄り駅まで辿り着いたら喫茶店だ。
チェーン店だが、ワンコインでサラダ付きモーニングが食える店だな。
スマホの充電が可能な席へと陣取り、朝食を食べつつ時間を潰す。
しかし、あの幻送機てぇのは面白い。
面白いが、オーバーテクノロジー過ぎるだろう。
定年までのカウントダウンが始まっている今、老後の楽しみができた。
まぁ、退職後に食べて行く手段を考えないとならんが、直ぐに働く必要もあるまい。
そんなん考えている間に良い時間帯へと。
席を立ち会社へとな。
で、定時です。
ん?
仕事?
むろんしたぞ。
今日は割り込みの急ぎ仕事が入ったから、ちと忙しかったがな。
まぁ、慣れたもんだよ。
定時内に、することは終わらせてるからな。
では皆さん、お先です、ってな。
で、地元へ帰れば、行き付けの小料理屋へと。
定食だと儲けは減るだろうに、定食を出してくれるからありがたい。
定食のオカズを肴に一杯やって、飯を漬物と醤油を掛け回した湯漬けで〆る。
今日も、ごっさんです!
「ターさん?
えらく早上がりだねぇい?
なんかあんのけぇ?」
源さんがさ、そんなん聞いてくるんでな。
「ちと用事がな。
しばらくは、早く帰るかもしれん」っといた。
だってさぁ、ダリルさんの動向、気になるやんね。
っう、ことで、アデュー!