昼時らしいわぇ。飯屋へでも行くのかのぅ?いや、ダリルめし?
ミハガ隊長が工房から去り、ダリルさんとロゼッタ嬢達の用事も終わった。
まぁ、ダリルさんが持ち込んだ素材については、これから扱いをドトマさんが調整するのじゃがの。
一週間を目処に動くそうじゃが、はて、どうなることやら。
で、用は、のうなったでな、店から出る訳なのじゃが。
「昼時だけど、どうするかねぇ?」
「せっかく街に来てんだからさぁ、食べて行こうよー」
ロゼッタ嬢にカリンちゃんがの。
皆は苦笑しておるの。
そんなカリンちゃんにのぅ。
「行くならハバマだね」
そう返しておるの。
ハバマ?
ハバマとは、なんじゃ?
「えー
まぁーたぁ、ハバマなの?
偶には違う店に行こうよ!」
ふむ、どうやら店、飲食店なのじゃろうか?
「こら、贅沢言わないの。
ウチの経済状態は、分かってんでしょうに」
ファマル嬢がの?
「ちぇっ。
また、狩った肉かぁ。
肉も塩振っただけだしなぁ。
あ、パン!
パンは、買うよね!」
思い付いたようにの。
したらな。
「まだ小麦粉が余ってるから買わないよ。
平パンで十分さね」
「うへぇ。
あの薄くてペラペラなの?
ロゼッタ姉ぇは、ケチりすぎぃっ!」
ペラペラ?
いや、それはアル意味斬新じゃわい。
どがぁなモンなのじゃろか?
ソレを聞いていたダリルさんがの。
「ふむ?
ロゼッタ達の中には、料理できる者は?」
ダリルさんが、そう尋ねると、皆が顔を背ける。
「いや、言い訳なんだがよぉい。
俺とお嬢は、鍛治一辺倒でねぇい。
家事仕事は、若い衆に任せてたかんねぇい」
ハゲルがバツが悪そうに。
ロゼッタ嬢は、ソッポを向いておる。
「オイラ、そもそもマトモに食べれるモン無かったしさ」
そうカリンちゃんが、困ったようにの。
まぁ、餓死寸前じゃったそうじゃて、仕方ないかのぅ。
「アタシは狩人の修行が忙しくて」
そうファマルが告げるとの。
「いや、狩った獲物を調理して食すのも、狩人の技量だが?」
そうダリルさんに、突っ込まれておるな。
「はい?
いや、狩った獲物は商品だよ?
普通は、自分で食べないんだけど」
そう困ったようにの。
「いや、納める獲物とは別に狩れば良かろう?
そう手間では無いハズだが?」
不思議そうに返しておるが、ファマル嬢が唖然とな。
「そんな簡単に狩れるハズが無いでしょ!
生活できる貨幣を得る価値が有る獲物を狩るだけで、結構な時間が掛かるのよ?」
そう告げられ、ダリルさんが困ったように。
「ふむ。
里では、浅層の獲物でさえ、数体狩れば数日は暮らせるらしいのだがな。
まぁ俺は、自分で食い扶持を狩り、採取し、育てておった。
ゆえに、獲物を売るのに頓着しておらなんだでな」
既に狩人としてのスタンスが違い過ぎており、ファマル嬢の狩人としての生き方は、ダリルさんには理解出来ぬようじゃ。
残りの二人、ガンレートとシムエルも、やはり料理ができぬとのこと。
「ふぅ。
金が無いなら、自炊が一番であろ。
ならば、俺が作ろう。
ただ、掛かる食費代は貰うからな」
そう告げて席を立つのだが。
「深層狩人が作る料理かね?
私も興味あるのだが、御相伴願えないかね?」
ドトマが、そのような事をな。
「ふむ。
調理場を貸して貰えるならば、構わぬが。
調理器具とかは?
大鍋が必要となる。
有るかね?」
そう尋ねられ、ドトマさんがの。
「ウチも私だけでなく、他にも働き手が居る。
それに、繁忙期には、外から人を雇うのだよ。
だから、調理場は大き目にしてあるし、大鍋も有る。
どうかね?」
「なら構わんか。
ふむ。
庭先にマル芋の葉が出ておるな。
アレを採取しても構わぬかね?」
徐に告げられ、ドトマさんが首を傾げておるな。
「別に構わないが。
アンナ物をどうするのだね?」
不思議そうにの。
「最近知ったのだが、マル芋は調理次第では、美味しく頂けるのだ。
アレと小麦粉で麺と言う物を作るつもりでもだ。
まぁ、食べてみて貰おうか」
そう告げ、席を立つのだった。