さて、小悪党退治かのぅ。ミハガ隊長!よろしくですじゃっ!
二人の返事を聞き、ダリルさんが頷くとじゃ。
「決まりですな。
では、私はキャツを捕える手配を致しますので」
そう告げ、工房から去ろうとしたミハガ隊長へダリルさんがのぅ。
「待て」
「はて、なんでしょう?」
「貴兄、本当に門番の隊長か?」っと。
「はて?
なんのことでしょうな?
では、急ぎますので」
これ、誤魔化しておらぬかや?
『まぁ、バツが悪かったのでしょうね。
今更、本当の身分を告げるのも、なんでしょうし』
だろうのぅ。
じゃがの、ドトマさんや、空気読めんかえ?
「はい?
ミハガ隊長は、騎士隊の隊長ですが?
むろん貴族様ですよ。
庶民とも気楽に接してくださるので、人気がある方ですなぁ。
なぜ門番の隊長と?」
不思議そうに尋ねられておるの。
「俺が街へ着いた時に対応した門番の隊長が、ミハガ殿だったのだよ。
っと言うことは、門兵達も実は騎士だったのか?
意味が分からん」
そう告げるとハゲルさんがの。
「あー
恐らくだがねぇい」
「ん?」
「ダリルを迎えるために、配属されたんじゃねぇけぇい?
一般にゃぁ、御伽話ってぇ流布されちゃぁいるがょい。
深層狩人てぇのは、ある程度の身分や地位がありゃぁ、事実って知れんだよい。
オレも武具を造ったかんねぇい。
当然、知ってたわなぁ。
そう言う輩はなぁ、深層狩人を怒らせちゃぁなんねぇ、てぇのが、共通の認識さね。
そして、危険人物ってねぇい。
まぁ、一人で国落としできる人材さね。
そりゃぁ、警戒すんな、ってぇのが、酷てぇもんだ。
だから、騎士隊が門にてダリルを出迎えたんだろうぜぇ」
まぁ、そうなるだろうのぅ。
っか、シーリングされた超小型核弾頭を、個人で持ち歩いておる輩が、国へ来たようなもんじゃて。
何時暴発して国を滅亡させるか?
出来たら入国拒否したいが、したら国が滅ぼされる。
仕方なく入国させはしたが、何時爆破されるか。
こんな気分なのじゃろか?
『例えが極端ですが、まぁ、領主にしたら、そんな感じでしょうね。
少なくとも、激怒させて良い人物ではありませんので』
ダリルさんにチョッカイ出すのは、ゲスな貴族じゃと、思っておったのじゃがのぅ。
まさか、庶民である武具職人じゃとは。
『いえ。
彼は武具職人としての腕前はありません。
見習い未満でしょうね』
はい?
それでは、素人と変わらんのじゃが?
『そうですよ?
工房主の息子であるだけで、職人の技術はからっきしです。
まぁ、才能からして皆無ですが、ヤル気も皆無ですから。
それで威張り散らすので、害悪そのものです』
はて?
工房主は職人ゆえ、子育てしとらんと思うが、母親は?
『ジャミガを産んだ後、産後の肥立が悪く身罷っておりますね。
そのため、見習いなどが子守していたみたいです。
そう言う環境であるため、周りからチヤホヤされながら育ったみたいですよ。
まぁ、環境で成るように成ったとも言えますね』
人の育成環境は、重要じゃのぅ。
『実は、ロゼッタ嬢は知りませんが、ジャミガはロゼッタ嬢家系の血筋ではありません』
はぁ?
意味が分からんのじゃが?
『ジャミガの母は後添えです。
ロゼッタ嬢を産んだ母ではありませんね。
そしてジャミガは、彼女が職人と浮気して設けた子供です。
つまり、あの工房とは血の繋がりはありません。
とうぜん、人造種の血族でもない訳です。
人造種の血族であることを才能とするならば、全く適正がありませんから。
アレで跡継ぎ称しているのですから、滑稽ですね』
い、いや。
アドバイザーさんも、結構、辛辣じゃの。
そんなに嫌いかや?
『ええ、それは、もう。
私は色々と彼の悪行を調べましたから。
小悪党ですが、やってることは弱者イジメです。
彼に財産を奪われたり、操を奪われてて泣き寝入りした者が多数おります。
工房の権力、って言うか、深層狩人を恐れて泣き寝入りしていますね』
ゲスか?
まぁ、捕まった後、どがぁなるのか、楽しみじゃてな。