友からの贈り物。いや、彼さぁ、身罷ってるよねっ!
友人から小包が届いた。
そこまで親しくは無かった友人、飲み友達と言うヤツだ。
近所と言うほどに近くへ住んでいた訳でもない。
だが、歩いて行ける範囲ではある。
そんな距離へ住んでいる者同士であるため、普通なら接点などなかっただろう。
それが行きつけの小料理屋で出会い話すようにな。
まぁ、その程度の間柄だったんだが。
そんな彼が小料理屋へ現れなくなり、数ヶ月が経った今日、彼からの小包がな。
っと言うか、昨日、小料理屋の店主から、彼が亡くなったことを聞いたばかりだったのだが?
死んだ飲み友達からの小包。
そこまで親しくは無かったのだが、はて?
まぁ、受け取り机の上へ置いたが、いつまでも、その侭にしておく訳にもな。
なので開封した訳なのだが、段ボールの中には緩衝材に包まれた木の箱が。
オルゴールか?
ちょっとした小物入れ程度はあるだろうか。
オルゴールとしたら大き過ぎるかな?
段ボールから取り出して蓋を開ける。
すると中には、手紙と腕時計がな。
円盤型時計版の周囲が光っている。
なかなか、オシャレなのではないだろうか。
趣味ではないが。
時計はさておき、手紙を読むか。
なぜ、このような品を寄越したのかが分かるかもしれない。
だいたい、俺は住所を告げていない。
なのに、なぜ俺の住所が知れたのかも謎だ。
そこら辺のことも書いてあると良いんだがな。
手紙を読むと妄言が書かれていた。
いや、マトモなヤツだと思っていたのだが?
この箱は機械らしい。
彼が発明したのだとか。
『幻送機』と命名された機械は、異界の情報を映像として得られるのだとか。
つまり、異世界の情報を映像として観られるらしい。
いや、マジで意味が分からない。
既に老齢であった彼は、実は厨ニ病患者だった?
その不治の病にて身罷ったのか?
まさかな?
そんな阿呆なことを思いながら手紙を読み進める。
彼はアマチュア発明家であり、その手のアドバイザーとして金銭を得ていたらしい。
だが、世に早い技術は明かしておらず、この機械も、そんな発明品の1つらしいな。
木箱の中には、腕時計とは別にヘアバンドも入っているみたいだ。
手紙に従って木箱を探ると、確かに入っていた。
コレを頭へ巻けとのこと。
まぁ、ジョークグッズだろうし、危険はなかろう。
故人の冗談に付き合うのも、また一興か?
俺は指示に従い、バンドを頭へと。
したらな。
『適合者を認識しました。
起動します』って声が。
はぁ?
耳からではなく、脳内へ響いたような?
なんだぁ、これ?
すると、宙にウインドウがな。
はい?
なんなんだ、この怪奇現象は?
おそらくだが、目の前の箱の所為だと思われる。
だが、電源はどうした?
スイッチなど入れてはいないんだが?
それにバッテリーが動力なんだろうが、充電するコードや穴がない。
バッテリーが切れたら終わり、ってヤツかな?
したらな。
『動力は、次元の狭間より汲み上げております。
ゆえに尽きることも無く、自動で補充されます』
そのような声がな。
いや、誰だよ?
っか、俺の思考へ反応してないか、これ?
『装着して頂いたヘアバンドにて、思考派を読み取っております。
私は、この幻送機へ組み込まれたAIであり、アドバイザー兼ヘルプであります。
マスターと成られる方のサポートを、グランドマスターより賜っておりますれば、知りたいことなどを、お尋ねくださいませ』
あ、なら、1番に聞きたいことがある!
彼は、何者だったんだ?
世に知られてないようだが、明らかにオーバーテクノロジーだよな?
それに、なぜ俺なんだ?
『幻送機』だったか?
このような代物を受け取る筋合いはないハズだ。
俺には過ぎた物なんだが?
そう疑問を思うだけで、相手に通じるみたいだ。
『グランドマスターは、ある種の天才でした。
ですが、人に利用され成果を奪われた過去があります。
まぁ、彼にとっては些細な技術でしたが。
ですが、そのため世に出る危険性を察し、隠遁した身でもあります。
なお、この幻送機は、適正がない方は使用できません。
適合できたのは、マスターだけだった模様』
あ、単に適合したから送られて来ただけか。
なーんだ。