表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血姫の緋唇〜氷の皇子と紡ぐ異種族恋愛譚〜  作者: 猫餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/31

13.必須科目の試験開始

 入学式及びガイダンスの翌日、つまり本日の朝でございます。うう、朝日が眩しい。自国ならば眠りの最中ですのに。


 まだ寝たいと駄々を捏ねる体を何とか起こして、少々寝惚けつつも侍女たちによって体を拭かれた後、日差しを遮るためのフェイス及びボディクリームを全身に塗り込められます。


 これがないと吸血種にとってはより強く太陽の光を感じて、全身に負荷がかかってしまうのですよ。全く何故人間種は昼間に行動したがるのか。


「はあ、まだ慣れませんわね……。やはり日光の元では頭の動きも鈍くなってしまいます」


 しかし、ネモ帝国に留学をして早速良いこともございました。レーヴェさまを始めとしてフロレンツィアさま、アルミンさま、エトヴィンさまとお知り合いになれたのですから。


 さて、侍女たちの手早い動きによってわたくしの衣服もネグリジェから制服へと早替わりでございます。この後はメイクを施されてから朝食を頂き、口紅を少々直してから登校になりますね。


 本日から三日間は必修科目、そして来週五日間は選択科目の教科試験となります。これを合格致しますと、単位の認定が頂けて自由に過ごせる時間が増えるのです。


 ですから、わたくしも本気を出しましてよ。長年王城に引き篭もり、いえ図書館に通いつめて得た知識を全て披露致しましょう。


 昨晩に最新の学術書も読み終わりましたから、古過ぎる内容を回答して不合格、なんてことにはなりませんわ。


 いつもは三日に一度百ミリリットルを摂取している血を、一日三十ミリリットル摂取する形にして体調の管理を致します。一度に摂取するより、小分けにした方が昼夜逆転生活中は体が楽ですから。


 保管された血液ではなく、わたくしにぴたりと合う方の血液でしたらもっと昼間の活動が楽になるのですけれど、そのような方と出会える確率はないに等しいのです。


 なので、大人しく劣化と酸化防止の魔術が施された小瓶に血を入れて胸元に入れておきましょう。仮に転んでもこの胸が緩衝材となりますしね。


「血液の入った小瓶も持ちましたし、そろそろ登校と致しましょうか」


 日傘を差しながら寮を出て、学院高等部校舎入口で侍女から鞄を受け取ります。その代わりに日傘を侍女へ預け、薄いレースで出来たヴェールを顔の半分ほど、目元を隠すようにかけたままクラス室へと向かうのです。


 これは昨日、帰寮してから目がじんわりと痛みを訴えたが故の処置でございます。学院側にもカンニングなどの仕掛けがないことを確認頂き、着用許可を得ておりましてよ。


 尤も試験中はそういったことが出来ないように、魔術封じがクラス室全体に施されると聞きましたけれど。変な言いがかりをつけられることがなさそうで安心致しましてよ。


「フェリ、おはよう」

「レーヴェさま。おはようございます、鮮やかな朝でございますね」


 背後から声をかけてくださったのはレーヴェさま、日光が御髪(おぐし)に反射して少々眩しくはありますけれど、それ表に出すことはいたしません。


 スカートを摘み、軽く挨拶を致します。そうしますと、レーヴェさまもお返しくださりましたので二人でそっと笑みを交わしましたふふ、朝から良きことでございます。


「今日は顔にヴェールを被っているんだな、それは日光対策だろうか」

「ええ、ご明察でございます。やはり目は特に弱いものですから、太陽光から保護するための魔術が施されておりますの」

「成程。……フェリの美しい瞳が確りと見えないのは残念だが、日光対策ならば仕方がないな」

「ふふ、ありがとう存じます。レーヴェさま、クラス室までご一緒しても?」

「ああ、勿論。俺から願い出ようと思っていたところだ」


 そう仰ってわたくしを太陽の光から守るように窓側へ立ってくださるレーヴェさま。気遣いの出来る常春のような皇太子殿下ですわね、民も自慢でございましょう。


 レーヴェさまと並んでクラス室に入り、昨日と同じ席に腰を下ろします。周囲からの視線は刺さっておりますけれど、皇太子殿下と共にいること、そして吸血種という存在が珍しいことからでしょうか。


 こうした視線には慣れておりましてよ。何せ王族、式典には必ず参列せねばなりませんでしたから。外交についてもわたくしも対応を行っておりましたし、臆するものでもございません。


 その後わたくしの隣へ腰を下ろされたフロレンツィアさまともご挨拶をして、お喋りに興じていましたら始業を知らせる鐘の音が鳴りました。


 担任教師であるグライリヒ先生が壇上に上がり、朝のホームルームが開始となります。昨日確りとあった試験についてのお話を掻い摘んでされた後、クラス全体へ激励の言葉をくださり終了となりました。


 こうして必要なことをきちんと説明すれど、不要な長話をしない方はお話を聞いていて苦ではありませんわ。


 さて、本日から休日を含めず八日間、試験漬けでございます。


 必須科目の試験会場はクラス室ですから、特に移動することはなく鞄から筆記用具を取り出しておきましょう。


 主に使うのは万年筆。わたくしのものは家族で揃いのものですから、大切に使っておりますのよ。万が一のために補充用のインク瓶も卓上に起きまして、完了でございます。


 最初の試験は言語学でございますね、わたくし得意ですわよ。試験監督は他学年の担任教師が持ち回りで行ってくださるとのこと。試験中の注意事項を聞きまして、試験開始の合図と共に先に配られていた問題集と解答用紙を開きました。


 ふむふむ、成程。ふふ、わたくしには簡単過ぎますわ。まずは言語学Ⅰの答えを解答欄に書き込み、全て埋めましたら解答終了にチェックを入れます。


 すると瞬時に記述式の問題以外は成否チェックが入りますから、その分で合格点に達しておりましたら次に進めるのです。尚、記述式については解答終了のチェックが入った段階でそれを教科担当教師が総出で見るそうですから、大変ですわね。


 わたくしは当然満点合格、次の言語学Ⅱへと移ります。ふふ、この内容も簡単なものですわ、はい、次。言語学Ⅲ、そして言語学Ⅳ。全て正解——満点での合格です。


 問題集を閉じ、万年筆を起きます。そうしますと、勝手に解答用紙が回収されてそれ以降の解答変更は出来なくなるのですわ。そうなれば後はクラス室から出て、早くテストを終えた者の待合室となる空きクラス室に向かいます。


 暫くすればレーヴェさま方もいらっしゃいましたね。こうして他の方が試験を受けている間にも楽しく会話が出来るのは嬉しいものでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ