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吸血姫の緋唇〜氷の皇子と紡ぐ異種族恋愛譚〜  作者: 白瀬 いお


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12.サークル活動に必要なもの

 昼食を皆様と共に終えて、食後のお茶の時間でございます。はあ、やはり血は美味しゅうございますね。わたくしは魚より獣の血が好みですわ。


「食事も終えたことだし、皆に提案がある。我らが読書サークルでは、各々本を持ち寄ることに決定した。だが、それを置くための本棚がなければ話にならないとは思わないか」


 レーヴェさまの尤もなお言葉に、わたくしたちも同意を示します。まさか用意した本を机の上に積むわけにも参りませんからね、本棚は絶対に必要なものでございます。


 そしてその本棚を置くための場所、つまりサークル活動室も確保済みでございましてよ。レーヴェさまもその件について言及なされましたから、ここはわたくしからの提案を致しましょう。


「皆様、この後実際にサークル活動室に向かってみるのは如何でしょう。本棚を置くと致しましても、どの程度のサイズ感でなくばなないのか、きちんと確認せねばなりませんから」

「ああ、俺はフェリに賛成だ。皆はどうする?」


 早速同意をくださったレーヴェさま。そしてその問いかけに、残りの皆様も頷かれました。


 やはり本棚のサイズもですけれど、どのような部屋が割り当てられたのか、気になりますわよね。


 そういったわけで、お茶を終えてから皆でサロンルームから文化棟の三階へと移動致します。とはいえ、サロンルームがあるのもまた文化棟、その二階でございす。


 ですから、上の階への移動だけで済むのはようございますわね。さて、移動はレーヴェさまとわたくしを先頭に——もしやこの先、ずっとこの並びで移動となるのかしら。


 ともかく、三階へと階段を昇って向かいます。サロンルームを出てからずっとレーヴェさまにエスコートを頂いておりますから、階段もまた寄り添って昇ることとなりますわね。


 読書サークルが希望し、許可を得たサークル活動室は三階の隅にあるそうで、わたくしもまだ見てはいないのです。


「——その時に読んだ本がとても面白かったので、皆様にも是非お読み頂きたいのです」

「それは楽しみだ。是非本棚に置いて欲しい。——ああ、着いたな。ここが扉で、ここから角までが全てサークル活動室となる」


 階段から少し歩いたところにある扉を示したレーヴェさまに従い、わたくしたちも足を止めます。それにしても、まだ廊下が続いておりますのにこれで一室となるのですか。


 エトヴィンさまが扉を開いてくださいましたので、レーヴェさまとわたくしが先に室内へと入りました。あら、本当に広く日当たりの悪いわたくし好みの部屋ですわね。


「窓が全て北向きだから、一日中日当たりは悪い。だがきちんと換気もされているし、本にとっては良い環境だろう」

「姫にとっても、でしょう? 皇子は姫にとっての環境も気にされていましたから」

「エトヴィン」

「ははっ、本当のことじゃないですか」


 じろ、とエトヴィンさまに視線を向けられるレーヴェさま。そしてそれを意に介さぬエトヴィンさまに、苦笑されるアルミンさま。フロレンツィアさまはただ楽しそうに微笑まれております。


 皆様、仲がよろしいのですね。その輪にわたくしも入ってよろしいのかしら。いえ、入れてくださったのですから、そのようなことは考えないことに致しましょう。


「ふふ。確かにわたくしにとっても好ましい場所でございます。ただ、皆様には少々暗いかしら。折角の読書サークルですもの、明かりは上部からより手元で本を照らす方がよろしいと思いますわ」

「まあ素敵、是非そうしましょう! フェリシア姫、私とルームランプを選びませんこと?」

「ええ、是非。フロレンツィアさまとお出かけですわね、嬉しくてよ」


 わたくしとフロレンツィアさまがそう盛り上がっておりますと、微笑ましそうにレーヴェさまが見つめていらっしゃいます。あら、もしかしてフロレンツィアさまとお出かけなさりたいのかしら。


「レーヴェさま。もしフロレンツィアさまとルームランプをお探しに向かわれるのでしたら、わたくしは辞退致しましてよ?」


 そうこっそりと囁きかけますと、彼は思ってもみなかったと驚きを顔に出されました。あら、間違えてしまったのかしら。


「……では、フェリ。フロレンツィア嬢のみならず、俺とも出かけてくれるだろうか?」

「あら、ふふ。喜んで。折角ですから、皆様と共にお買い物が出来る日を設けるのもよろしいのではないでしょうか」

「ふ……、はは。そうだな。では、予定を決めて買い出しというものを皆でしてみようか。どうだ?」


 最後の言葉は皆様に向けてでございますね。それに対して、同意が返りました。わたくし、このような大人数でのお買い物は初めてだわ。


 既にサークル活動室にはソファやテーブルなどの家具類や装飾品の類いも運び込まれておりますけれど、ここから更に不足しているものを買いに向かうのね。


 勿論今日すぐというのは難しいでしょう。何せ、わたくしは一国の王女。そしてレーヴェさまは皇太子であり、フロレンツィアさまたちも高い身分ですから。


 相応の警備というものが必要になりますし、迎える店も一つでしょうね。民のように自由にお買い物というものとは無縁でございますが、ふふ、それでも楽しみですわ。


「見た限り、ソファもテーブルもありますわね。そうなりますと、やはりルームランプと本棚だけが必要なのでしょうか?」


 わたくしの言葉に、皆様がぐるりと周囲を見回されます。そうしてから各々これはどうだろうか、あれは必要だろうかと案を出し合いまして、追加でタイプライターとそれに用いるインクリボンを買うことに決定致しました。


 費用は学院から活動費として各サークルへ渡されるお金から出すとのことですから、学院への請求として買い上げるのですね。


「それでは、買うものは決まったな。次は日程だが……来週まではテストがある。皆、どうする?」

「わたくしはいつでも問題ございませんわ。皆様がよろしいようにお決めくださいまし」

「私もフェリシア姫に同意しますわ。勉学に不安なぞありません、いつでも構いません」


 レーヴェさま、わたくし、フロレンツィアさまの順で言葉を発します。それからアルミンさまとエトヴィンさまも「問題ありません」とのことでしたので、一同の視線はレーヴェさまへと向かいます。


 それに頷いた彼は、「では、今週の日曜日にしよう」と予定を決められました。それまでに安全の確保をなさるのでしょう、一切をお任せしてわたくしたちは頷いたのでございます。

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