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吸血姫の緋唇〜氷の皇子と紡ぐ異種族恋愛譚〜  作者: 白瀬 いお


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10.読書サークル

 あの後件のご令嬢と思わしき方は、「レオンの馬鹿!」と言い捨ててクラス室から走り去って行かれました。一体何だったのでしょう。


「自国の皇太子殿下にああいった言葉をお使いになるなんて、何と申しますか……中々見ないタイプの方ですわね」

「全くお恥ずかしいものです。フェリシア姫、どうぞお気になさらないでください。あの方は昔から変わった方として有名なのですよ」

「フロレンツィア嬢の言う通りだ。我が国の恥を見せてしまったな、許してくれ、フェリ」


 ぷんすかと擬音がしそうな怒り方をなさるフロレンツィアさま。あら、可愛らしい。そしてわたくしに眉尻を下げて許しを乞うレーヴェさま、彼に非などないでしょうに、責任感の強いお方なのでしょうね。


「お気になさらないでくださいまし。ああいった方はどこにでもいらっしゃいましょう、わたくしは気にしておりませんわ。さ、そんなことよりも読書サークルについてのお話でございます。サークル長がレーヴェさま、その補佐にわたくしでございましたわね」


 少々強引でしょうが、いつまでもああいった方のお話をしているのも楽しくはありません。ですから、今皆の一番話が合う話題を出したところ、それに全員が乗ってくださいました。


 読書サークルでは、各々本を持ち寄ること。そしてそれを好きに読める本棚を作ること、その本を読み合い感想を語り合うことを主目的として発足致します。


 また、学院祭で文化系サークルでの出し物も考慮して、小説や劇の台本を作る活動も一応行うこととなりました。ええ、一応、でございますよ。


 そして重要なのが、読書サークルへの加入はサークル長を除くサークル員の過半数の賛成が必要であること。そして最後にサークル長の承認があることとなりました。


 これにつきましては、レーヴェさまとわたくしが所属しているが故の処置にございます。警護する者たちにとっても、安全を担保出来る方々のみの方が護り易いでしょう。


「話は纏まったから、早速サークル設立に必要な最後の要素を探しに行こう。顧問となってくださる先生を見つけなければならない」

「確か、サークルの設立規則には顧問となる教職員が一人以上いること、でしたわね。では、職員室でグライリヒ先生を訪ねるのはいかがでしょう」

「そうしよう。フロレンツィア嬢、アルミン、エトヴィンも良いか?」

「勿論ですわ。参りましょう、フェリシア姫」

「良い案だと思います。ねえ、エトヴィン」

「そうだな、それが手っ取り早いだろう。オレも同意します、皇子、姫」

「では決まりだ。早速移動、と行きたいが、この人数で押しかけるのも迷惑だろう。俺とフェリで話をして来るから、アルミンたちはフロレンツィア嬢と共に教室へ残っていてくれ」

「かしこまりました、我が君」

「あら、私もお留守番ですの? もう、皇太子殿下ばかりフェリシア姫を独占なさって狡いわ!」

「……そんなことはない。とにかく! 皆はここで待っているように。行こうか、フェリ」

「はい、レーヴェさま。それでは皆様、良いご報告を持って参りますわ。少々お待ちくださいまし」


 フロレンツィアさまとご一緒出来なかったのは残念ですが、確かに五人で職員室へ押しかけてはなりませんわね。仕方ありません、彼女とのお話はまた今度に致しましょう。


 レーヴェさまと連れ立ってクラス室を出ましたら、廊下を進んで職員室へと向かいます。その間も雑談を交わしておりましたが、道順は確りと覚えておりましてよ。


 少し歩いて到着した職員室の窓口に向かい、レーヴェさまが学年と所属クラス、名前を伝えて担任教師であるグライリヒ先生をお呼び頂くように事務員の方へ伝えられました。


 そうして少し待っておりましたら、グライリヒ先生が出て来てくださいましたので、わたくしたちは用件についてお伝え致します。


「成程、読書サークルか。なら、私よりも言語学の先生が良いな。んー……ああ、ティール先生に聞いてみるか。もう少し待つように」

「はい、先生」


 レーヴェさまとわたくしの返事に頷いてから、グライリヒ先生は一度職員室の中へとお戻りになられます。


「あの、ティール先生とはどのような方なのですか?」

「ああ。言語学の先生で、穏やかな方だ。サークル顧問もしていないから、受けてくれる可能性はある」

「成程、それはようございました。ではティール先生が了承くださるように説得するばかりですわね」

「そうだな、頼りにして良いか、フェリ?」

「ふふ、お任せくださいまし、レーヴェさま。わたくしの弁舌が火を吹きましてよ」


 レーヴェさまとくすくすと顔を寄せて笑い合っていると、扉の前に向かって来る足音を耳が捉えました。ですから、わたくしがレーヴェさまの方へ寄せていた体を正しますと、それでさったしたのでしょう。彼もまた扉へと視線を向けます。


「お待たせしたわね、二人共。読書サークルの顧問になって欲しいという用件で良かったかしら?」


 現れたのは、白髪の美しい人間換算でいう五十代程の女性でした。成程、確かに穏やかな方でいらっしゃるのでしょう、その人生経験の豊富さと優しさが表情と顔の皺に現れておりますもの。


「お初にお目もじ致します。此度は突然のお呼び立てをしてしまい、申し訳ございません」

「あらあら、良いのよお。そんなに固くならないで、フェリシア王女殿下。そしてレオンハルト皇太子殿下も。読書サークル、素敵だもの、顧問の件もお受けするわ」

「まあ、ありがとう存じます」


 説得するまでもありませんでしたわ。ティール先生は優しく微笑みながら、わたくしたちに「サークル室の目処は?」と問いかけていらっしゃいました。


 それに対して、レーヴェさまが一つ頷いてから、言葉を返されます。


「文化棟の三階に使われていない部屋があります。そこをサークル室にしようかと。広い場所ですが日当たりが悪く人気がありません、しかし我が読書サークルには本棚を設置せねばなりませんので、丁度良いかと思います」

「そうね、それが良いわ。サークル室の使用許可についてはわたしが取っておきますから、安心して頂戴。届出資料もここで受け取るわね。それで、いつからサークル活動を開始するの?」


 それにわたくしとレーヴェさまは顔を合わせて、口を揃えて申し上げます。


「本日から」


 読書サークル、活動開始でございますよ。

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