35/38
35話 宿命
1987年 松花振興会
「殺せ!」
「千田様!それはあまりにも‥」
佐倉雅人は、上司である千田に1歳になった息子〝来人〟の命を奪う事を命ぜられた。
「〝言霊〟を使える者は、二人いらん!それとも、貴様が自ら命を断ち、預けるか我に?幼子を?」
「いえ‥」
佐倉雅人の妹、佐倉幸代は、目を閉じていた。
松花振興会で詰問される〝兄〟雅人の情景がまざまざと見える。
〝千里眼〟
幸代は、兄から預かり、抱いている〝来人〟の顔を見つめる。
横から、婿養子である夫の佐倉正和が尋ねる。
「見えるのか?」
幸代は黙って頷く。
「この子は、殺されてしまう!正和さん私とこの子を連れて逃げて!」
佐倉正和と幸代は、甥にあたる〝来人〟を連れ、佐倉邸を後にした。
鞄に身近な荷物だけを持って‥




