スマホ依存症の織田信長はバ先の光秀とズッ友
織田信長は燃え盛る本能寺を歩きスマホをしながら自害の場所を探していた。
(戦国時代までWi-Fiを繋ぐとはな)
「流石は後の千利休よ」
信長はあまりに現代に転移し過ぎた。
信長はあまりにも転移者と交流を持ちすぎた。
令和から平成初期に転移した時は「えっ?スマホないの?」とも言った。
「殿。最後にマルチプレイしませんか?
」
「貴様なぁ」
明智光秀はスマホでひっぱりハンティングアプリを楽しんでいた。
「これから貴様のせいで何十人が自害して何十人が討ち死にすると思うとる?あっつ!火がまわってきた!」
「いいではないですか。未来では殿は人気者。私は卑怯者の三日天下男……あっ。今日はログインだけでガチャ引けますよ」
「マジで?」
信長はひっぱりハンティングをアップデートしてログインする間にこれまでの人生を振り返った。
平成の世で教師になったり、令和にコンビニでバイトしたり。
転移してきた高校生が信長に入れ替わったり、シェフがお抱え料理人になったり……。
「……そしてワシに関わるどいつもこいつも」
『織田信長は明智光秀に裏切られて本能寺で殺されます!』
と訴えかけてきた。
最初は衝撃だったが、何回も言われすぎて信長も光秀もリアクションが薄くなっていた。
元々信長も光秀も真っ直ぐな性格ではない。
やたら歴史を変えようとする転移者達にはウンザリした。
特に光秀は転移者から嫌われる事が多く拗ねてしまい、そんな光秀を慰める内に信長と光秀はズッ友になった。
お互いのスマホには二人で指ハートポーズで撮ったプリクラまで貼っている。
「いいですなぁ。殿は。どのアプリでもいつもレア度の高い強キャラ。私はハズレ枠です。えっ?このオナゴが私!?」
「未来人達は女人化が好きよのぉ。大体巨乳にされるよな。ワシかて人気では坂本龍馬には勝てんよ。それより転移者はみんな現代に送り返したか?」
「ええ。千利休が開発したタイムマシーン『茶の湯1号』でね。記憶も消しておきました」
「うむ。では死ぬか」
「ガチャは?」
「お前が引いとけ。では!」
「いってらっしゃいませ。私もすぐに秀吉に殺されるので地獄でお待ちくだされ」
あぐらをかいて腹を小刀で切り裂いた。
そこら中で唸り声が聞こえる。
信長に合わせ、家臣や家族達も次々と自害仕出したようだ。
「光秀……平和だったな。未来は」
「はい」
「……いい奴らだったな。転移者達は」
「はい」
だから自分は死ななくてはならない。
信長が望んだ平和な未来は信長が歴史通り死ななくては訪れないと考えていた。
光秀は信長を殺さなくてはいけないし、光秀は秀吉に殺されなくてはいけない。
タイムマシーンを発明した千利休も切腹しなくてはならない。
光秀はホロホロと泣きながら信長のスマホでガチャを引いていた。
「光秀……はやく逃げろよ」
「ええ」
「……人生僅か五十年。是非に及ばず……」
「の!信長様!出ましたぞ!」
「今辞世の句を読んで……えっ?ワシか?」
「いえ。フェルンとフリーレンです。コラボ中みたいですね」
「……葬送のかぁ」
天正10年6月2日早朝の事だった。
・
「転移魔法成功よ!」
「えっ?」
たった今、秀吉に討たれたはずの光秀はエルフを名乗る少女に魔法で転移させられた。
「勇者光秀様!どうか魔王ノブナガを倒して下さい!あの男を殺せるのはあなただけと歴史書にありました!」
「……やれやれ」
(今度は剣と魔法の異世界か。まるでラノベだな)
光秀は剣を担ぎ時空と時を超えた友。
ノブナガの待つホンノージ城へと旅立った。
「おい。この世界にはスマホはないのか?」
「スマ……ほ?」
「まだシュタルクを引いてないんだ」