46 緩やかな時間
【晴天の四象】のメンバーが揃い、各々が自分にあった鍛錬や勉強を開始する。
彼女たちは基本的に個人特訓を重視し、連携は実戦を通して磨いていくらしい。
「………………」
そんな中、ティオは目を瞑り深い集中状態を維持していた。
以前に俺も教えてもらった、気配探知を習得するための瞑想だ。
無言の圧力が周囲を威圧しているようにすら感じる。
「……ふぅ」
数十秒後。
瞑想を終え、ゆっくりと目を開けるティオ。
そんな彼女に対し、俺はかねてより気になったことを尋ねることにした。
「そういえばティオ、新しい弓は用意できたのか? ここ数日は基礎トレーニングばかりみたいだけど……」
ティオの弓は先の不審者戦で真っ二つにされてしまったようで、今は武器を失っている。
そのため、行える訓練には限りがあるようだった。
俺の問いに対し、ティオは肩をすくめながら答える。
「残念ながらまだね。あの弓はエルフの里で作られた特注品だったし、匹敵する物がなかなかないのよ」
「町の鍛冶師に作ってもらうことはできないのか?」
「それも考えたけれど……金属の扱いはともかく、木の扱いに長けた職人がなかなか見つからなくてね。エルフの里は遠いからそう簡単に帰ることもできないし、何かいい解決策があるといいんだけど……」
はあ、とため息をつくティオ。
彼女にはとても世話になっているため助けになりたいところだが、この世界の知識があまりない俺では難しいだろう。
だからせめて、ティオに天運が回ってくるようにだけ祈っておいた。
そんなこんなで修行を進めている途中。
不意に、モニカがぷくぅと頬を膨らませて言った。
「ユーリ、わたしは不満」
「えーっと、何がだ?」
「アリシアやセレスはユーリと模擬戦をしているし、ティオも一緒に瞑想していたりする。わたしだけユーリと修行できないのはとても不公平」
とのことらしい。
そうは言っても……
「俺には魔力がないから仕方ないんじゃないか? モニカみたいに魔術を撃つのはどう足掻いても無理だろうし」
「それはわかってる。だからわたしは考えた。ユーリが無理なら、わたしが剣を使えばいい」
そういって、モニカは何もないところから木剣を作り出した。
さすがは『碧の賢者』だ。この光景は何度見ても驚かされる。
だが、そんな風に感心する俺に対し、隣にいたティオは呆れ顔で呟いた。




