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短編小説  作者: ま行
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シークレットボックス

 泥棒とその弟子がいた。その日は目をつけた家に一緒に忍び込み、盗みの技術を弟子に指南する予定だった。


「いいか?準備しておいた場所から入るぞ」

「はい、ついて行きます」


 泥棒はあらかじめこの家に細工をしておいた。出入りは自由に行える。入念な準備と下調べこそが盗みを成功させる秘訣だった。


 難なく家へと侵入した泥棒は、迷うことなく歩みを進める。


「あの?」

「何だ?」

「迷いなく歩いていますが、何処に向かっているんですか?」


 泥棒は弟子の問いに足を止めずに答えた。


「いいか?人間大事な物をしまい込む所ってのは大体似通う。自分では絶対見つからないと思いつつ、ありきたりな場所に隠してしまうものだ。その思考を俺たちは読み、知る必要がある。覚えておけよ」

「はいっ!流石師匠!」

「馬鹿っでかい声を出すな。静かにしておけ」

「…は、はい」


 弟子を嗜めると泥棒はすいすいと家の中を進み、目的の場所に辿り着いた。ガバっとクローゼットの扉を開けて、中を漁り、やがて一冊の本を手に取った。


「それが今回の目的の物ですか?」

「いや違う、見ておけ」


 泥棒は本を見回して小さな鍵穴を見つけると、ピッキングツールを持ち出してカチャカチャといじりだした。そしていとも簡単に鍵を外すと本はぱかっと開いた。


「これは?」

「シークレットボックスってやつだな。一見するとただの本だが、こうして鍵つきの箱になっている。隠しものを仕舞うのにうってつけだろう?」


 知られたくない腹の中をこうして隠しておく、そして厳重に守っているという事は、それが盗られたら困るものだという事を逆にありありと教えてくれている。


「中身はなんですか?」

「これは鍵だな。金庫や倉庫の鍵だろう」

「金目のものですね」


 泥棒はピンときて、近くの引き出しを全部開けてどかした。その奥に、金庫の扉が見える。


「よく分かりましたね」

「隠しものってのは、何度も確認したくなるもんだ。そこにあると知って安心しときたいもんだ。なら鍵の近くに置く筈だ、そしてこの引き出し、何度も何度も開けしめしたせいか下がすり減っている。如何にもな場所だろう?」


 見つけた鍵を金庫に差し込む、ガチャリと音を立てて扉はすんなりと開いた。いよいよお宝とご対面だ、そう思った矢先、泥棒は思わず疑問の声を上げた。


「何だこれは?」


 その金庫の中に入っていたのも鍵だった。恐らくまた何かの扉を開ける為の鍵だろう、しかしこんなに厳重にしているとは、一体何が隠されているんだと泥棒は思った。


「また鍵ですか?」

「ああ、しかし妙だな。シークレットボックス、引き出し裏の金庫とセキュリティを重ね、また鍵が出てくるなんて。少々手が込みすぎてないか?」

「あれっ?その鍵見せてもらっていいですか?」


 泥棒は弟子に鍵を渡した。受け取った鍵を見て弟子が言った。


「この鍵の模様見ました。この家の一階にある部屋の扉に同じ模様がついていました。そこは確か、鍵がかけられています」

「でかした!きっとそこに何かあるに違いない」


 泥棒達は意気揚々と一階へと下りた。そして部屋の扉に鍵を差し込み捻ると、ガチャリと音を立てて扉はまた開いた。部屋の中に入って見たものは信じられないものだった。




「はいこのようにですね、思慮深く計画性のある泥棒でさえも簡単に閉じ込める事が出来ます。ゴキブリを捕らえる罠のようなものですね」


 泥棒達が目にしたのは大きなモニター、そこに映っていたのは、スーツを来たセールスマンのような男と、身なりのいい格好をした金持ちたちだった。スピーカーからはセールスマンの男の声が聞こえてくる。


「どうです?こうして泥棒を捕らえる事が出来て、尚且つここに捕らわれる泥棒は非常に優秀です。どう扱うかを決める事が出来るのはあなたですよ。警察に突き出してしまうのもよし、手駒として使うもよし。これは罠でもあり大切な保管庫でもある、謂わば家そのものがシークレットボックスという訳です」


 セールスマンの売り文句に金持ち達は我が先にと群がって契約を求めていた。泥棒と弟子は、開かない部屋の中でその様子を呆然と眺めている事しか出来なかった。

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