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短編小説  作者: ま行
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おとなり

 最近となりの部屋から何か物音が聞こえてくる気がする。


 物音と言ってもそれほど大きなものでもないし、気にならないと言えば気にならない、正直考え過ぎかと思うものでもある。


 しかし聞こえてくるのだから、やっぱり音は鳴っているんじゃないだろうか。そう思って録音するためのレコーダーを仕掛けておいた。


 自分の耳は信用ならないけれど、機械ならば嘘はつけまい。音が鳴っているのなら確実にそれをとらえているだろう。


 そう思うと少し楽しみになってきた。仕事を終えて帰宅すると、早速録音されているかを確かめた。


「…」


 鳴っていない、音は録音されていなかった。ならばやっぱり気のせいだったのか。


 だがそんな事を考えていた時に例の音が聞こえてきた。今度は絶対、気のせいなんかじゃあない。音は確実に鳴っている。


 しかしこれはなんの音だろうか、音楽のようにも聞こえるし、ただの物音のようにも聞こえる。実に奇妙な音だ。


 更に奇妙な事に、壁に耳を当ててみたら音は消えた。離すとまた音が聞こえて、当てるとまた音が聞こえた。これは一体どういう事だろうかと、少し気味が悪くなってきた。


 音、音楽、よく分からないけれどこの雑音、テレビの音とも違うだろうし、ラジオの音でもない、オーディオから聞こえてくる音楽でもないような…。


 だが聞こえた事は聞こえた。これならもう文句を言ってもいいだろう、即座に管理人に連絡を取った。


「もしもし、すみません。隣の部屋からですね、何か音が聞こえてくるんですよ。どうにか注意してもらえませんか?」

「はあ」

「はあってそんな呑気な返事、こういう時どうにかするのがそちらの責任でしょう?」

「それはそうなのですが、一体どちらの隣の部屋から聞こえてくるのですか?」


 あっ、そういえばそうだった。この部屋、両隣に部屋がある。確かにどっちから聞こえてきたのか分からなければ、どちらを注意していいか分からない。


 どちらと言われたらどちらかは分からない、断言出来ないからこう言うしかない。


「どちらから聞こえてくるのか分かりませんが、兎に角聞こえてくるんです。どちらにも確認をしてもらえませんか?」

「はあ…、しかしですね」


 またしても難色を示す返事に嫌気が差した。もういいですと電話を切って、直接隣の部屋に乗り込む事にする。


 夜だろうと関係ない、迷惑だろうと知ることか、インターホンを何度も押してやる。しかし一向に出てくる気配はない、何故かと思いもう何度か押してみるもまた出てこない。


 留守だろうか、仕方がない、もう隣の人に言ってみよう。こちらでなければ、留守の部屋から音が聞こえてくるのは確定だ。


 インターホンを押す。出ない。何度か押す。やはり出ない。こっちも留守か、そんな馬鹿な事あるか、そう思い俺はまた管理人に電話をした。


「両隣が留守なんて、そんな事そうそうありますかね?」

「あのですね、そもそもお隣とも部屋には誰も住んでいませんよ。何でそれをあなたが知らないのか分かりませんが、音が鳴るのはおかしいですね」


 いてもたってもいられず、俺は財布だけを持って部屋を飛び出した。今日の所は何処かに泊まろう、後の事は、今はまだ考えたくなかった。一刻も早くここから離れる、今はその事で頭が一杯だ。

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