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短編小説  作者: ま行
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空き巣

 我が家では毎年一回家族全員で旅行に出かける機会がある。何でそれが始まったのかは知らないし、家族の絆を深めるいいイベントなんじゃないかなと個人的には思っている。


 しかし、我々は家を空けるという意味をここで思い知らされる事になる。玄関を開けて第一声、母親の悲鳴で騒動が始まった。


「空き巣よ!い、家の中がめちゃくちゃに!!」


 何事かと全員が集まってみると、確かに玄関からすでに荒らされていた。靴や置いてあった傘、観葉植物の植木鉢が倒されて土がこぼされていた。


「ギャーーー!!」


 姉の悲鳴で全員が飛び上がった。何事かと思っていると、うずくまってボロボロになった靴を拾い上げた。


「私の靴!これ高かったのに!!」


 見るも無惨に片方の靴だけがぼろぼろになっていた。傷だらけで靴底が剥がれかけている。


 呆然としている母と姉を置いて、取り敢えず父と僕は家の中に入った。何かを盗られているのなら確認しなければと思ったし、そうでなくとも犯人が何か手がかりを残しているかもしれない。


「どわーーー!!」


 自室を確認しに行った父の悲鳴が聞こえてきた。急いで2階に駆け上がり扉を開けると、ゴルフバッグに抱きついてメソメソと泣いている。


「あ、あ、あ、あ、穴が空いているんだ!見ろこれ!ここだよここ!」


 父が指さした先を見ると見事に穴が空いていた。そんなに大きな穴ではないけれど、大の大人が涙して絶望するには十分な傷なようだ。


 しかし何か妙だなと思った。家の中は確かに荒らされている、だけど物が壊されたり散らかされているだけで、何かが無くなったという事は一切なかった。ショックから立ち直った父、母、姉も同様に確認したが、やっぱり何も盗られていない。


 変だなあと思いつつ、最後に僕は自室の扉を開いた。金目の物は何も置いていない、だから完全に安心しきっていた。


「みぎゃーーー!!」


 そこにいた小さな影は俺に突撃してきた。びっくりして悲鳴を上げてひっくり返った。


「どうした!?大丈夫か!?」


 駆けつけてきた家族は、床に転がってされるがままの姿の僕を見て驚いていた。飛び込んできたのは犬で、僕の顔を嬉しそうにぺろぺろと舐めていた。


「どうやらこいつが空き巣の犯人らしいな」


 ため息混じりに父がそう言うと、犬は嬉しそうにワンと吠えた。どこから入り込んだか知らないが、誰もいなくなったこの家は、この犬にとって絶好の空いた巣であったようだ。

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