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短編小説  作者: ま行
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 私の弟は妹の事を溺愛している、所謂シスコンという奴だった。他の兄妹は呆れたり怖がって近づかないような溺愛ぶりで、私も本当はあまりよく思ってはいなかった。


 だけど誰か一人くらい認めてあげる人がいないと可哀想じゃない、お父さんもお母さんも匙を投げたけれど、他の家族がそうであっても私は彼を否定しないであげようと決めていた。


「ただいま!」


 弟が帰ってきた。出迎えると妹と手を繋いで帰ってきたようだ、恐らく遊びに行くことをせがまれたのだろう、所々泥だらけになっている。砂場遊びが好きらしい。


「ちょっと、家の中が汚れるから二人とも土埃は外ではらってきなさい」

「なんだよ、シャワー浴びちゃえば一緒だろ?」

「廊下の掃除するの誰だと思ってるの?いいからぱっぱとやってきなさい!」


 弟はちぇっと舌打ちしながら妹の手を引いて外に出た。私は大きく溜息をついて急いで準備に取り掛かった。


 お風呂にお湯を張って二人の服を用意する、妹はまだ幼いからか弟と一緒にお風呂に入りたがる、弟は満更でもない様子なのが気になるが、取り敢えず弟の服は適当に引っ掴み、妹の服は慎重に選んだ。


「姉ちゃん!土埃はらってきたよ!」

「はいはいありがと、お風呂用意してあげたから二人で入っちゃいなさい。出たら栓を抜いてお湯は流しちゃってね」

「お、気が利くじゃん!よーしお風呂入りに行こうねえ」


 何歳の子を相手にしている声色なのかとぞっとするが、シスコンというのはそういうものだと私は無理やり納得した。お風呂場からは楽しそうな笑い声が聞こえてくる、私が用意した服を気に入ってくれるといいのだけど。


 私はリビングのソファーに身を預けて目を閉じた。こんな行為を続けていくのは絶対に無理がある、いつかボロが出ると思って冷々している。


 私は一番上の姉、次いで長男、そして次女、そして弟は末の子である。そう、この家に住んでいるのは四人姉弟だ。弟が溺愛している妹など存在していない、いや正確には弟以外は妹の存在など見たことがないのだ。


 それでも弟は誰だか分からない目に見えない妹の事を溺愛している、呆れる程にシスコンの弟が愛でている妹は、一体誰なのだろうか、私はその存在を知るのが怖い、そして弟が妹の事を本当に認識した時何が起こるのか恐ろしくてたまらないのだ。

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