困難な婚活
また駄目だ。僕はがっくりと肩を落として家路を歩く。
婚活を始めてはや五年、いつまで経っても成果は出ず。あらゆる手を打っても人は中々振り向いてくれないのだ。
確かに自分はここに来てまだそれ程時間が経っていない、溶け込めたとは言えないだろう、だけど一目見る度に「ひっ」と声を上げる事もないじゃないか。
僕はコンビニに立ち寄って酒とつまみを買う、店員は僕の姿を見て目を丸くしていた。
「何か?」
「いえ、別に」
ささっと会計を済ませて追い出すように大声でお礼を述べる店員、自意識過剰かとも思うが、婚活を失敗した今は神経が尖っているのも仕方ない。
安アパートのうるさい階段をそっと上がる、音を立てるとがなり立てるおじさんが住んでいるので気を使う。
もしかしたらもっといい家に住んでいる方がモテるのだろうか、分かりやすい財力の指標にもなるから外してはいないだろう。
しかし僕の稼ぎではそこまで贅沢は出来ない、やはり稼ぎが良くなければ婚活は望めないのだろうか、金がなければ結婚してはいけないのか。
駄目だと思い首を振る、マイナス思考に偏るのはよくない事だ。ネガティブ思考は顔に出ると啓発本に書いてあった。女性に与える印象も悪くなる。
「ただいまー」
誰もいない部屋に向かって声をかける、誰もいなくても帰った時には言いたくなってしまうものだ。こんな時返ってくる返事があったらなあと思ってしまう。
買ってきた酒の缶を開ける、ぷしゅっと音を立ててしゅわしゅわと泡立つと、どうしようもなく口につけたくなるから不思議だ。
つまみに買ったスルメの袋を開けた時、母から通信があった。
「もしもし、あんた元気にやってるの?」
「もしもし母ちゃん、ああ何とか元気にやっているよ」
母の顔が映る、大分シワも増えてきた。早く安心させてあげたい。
「それであんた地球はどうなの?」
「ああ、火星と比べると大分環境が違うけど何とかやっているよ。地球と友好を結んでまだまだ短いけれど、溶け込めるようにしている」
「結婚の方はどうなの?」
「活動はしているけど、中々上手くいかないよ。僕達を見ると皆小さく悲鳴を上げるんだ」
モニターに映る母の顔は、地球の生物タコに似ている。勿論僕もそうだ、多様性を重視していると聞いてきたのに、どこの国でも同じ反応をされるのだから、聞いて呆れるよ。
僕は酒をあおってスルメをかじった。




