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短編小説  作者: ま行
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導火線

 バリバリと音を立てて導火線が燃えていく、柱に縛り付けられた俺は必死になって身をよじって脱出を試みる。しかし頑丈に結ばれた紐がそう簡単に解ける事はない、もたついている間に導火線の火は容赦なく爆弾との距離を詰めていく、どうしてこんな事になってしまったのか、時間は少し遡る。




「どうですかお兄さん、一勝負していきませんか?」


 競馬で負けが込んで肩を落としていた俺に、怪しげな黒服を纏った男が声をかけてきた。


「何だよ一勝負って」


 黒服はニコニコと笑いながら言う。


「貴方最近賭け事で負けが込んでいるでしょう?手当たり次第に打っては負けてお金を溶かしている、そうですね?」

「うるせえな、だから何だってんだよ。お前に何か関係あんのか?」


 俺が怒鳴りつけても黒服は顔色一つ変えずニコニコとしていた。


「負けが込んでいる貴方にいい話がありまして、もう一勝負いきませんか?勝てば大金が手に入りますよ」

「大金だあ?そんな怪しい話に乗るかよ」

「おや、では他の賭け事は怪しくないと?」


 そう言われて俺は黙った。賭け事は大元が儲かるようにできているとよく聞く話だ、実態は知らないがこう言われてしまうと何も言えない。


「簡単な勝負ですよ、貴方は二つの内一つの扉を選ぶだけ。一つは当たりで大金がもう一つは外れです」

「外れって、外れたらどうなんだよ」

「それはそうなってから分かる事です。どうですか?」


 黒服にやるかやらないか聞かれた俺は、迷った末やると言った。負けが込んでいるのだから少しでも取り戻さないといけないからだ。金を少しでも取り戻さないと。


 黒服に連れられてやってきた場所は、人里離れた場所だった。小屋に入ると確かに話の通り二つ扉があった。


「ではどうぞお選びください」


 それだけ言って黒服は出て行った。俺は扉を二つとも開けてしまえと思ってやってみたが、どうやら片方が開くともう片方は開かなくなる仕組みになっているようだった。どちらの部屋も覗いてみても変わり映えはない、薄暗くてよく見えないが、特に変な物は見つからなかった。


「ええいままよ」


 俺は一つの部屋を選んで中に入った。瞬間扉が閉まって天井からガスが噴き出し俺は意識を失った。




 そんな経緯で今俺はここに居る。身動きが出来ずに導火線が走っていくのをただ見ていくしかない、俺はここで死ぬのか、こんな事なら賭け事なんてやめればよかった。


「死にたくない!もう賭け事はやめる!だから助けてくれ!」


 俺がそう叫んだ瞬間導火線は爆弾までたどり着いた。俺はギュッと目を強く瞑る。しかしいつまで経っても爆発音は聞こえてこなかった。


「言質取ったわよ」


 俺が涙目で顔を上げると妻と黒服が目の前にいた。


「貴方が働きもせず私の稼いだ金で博打ばかりやっているから、私もいよいよ堪忍袋の緒が切れてね、こうして一芝居打たせてもらったわ。これに懲りたら私の爆弾が爆発しないように用心する事ね」


 俺は口から泡を吹いて気絶した。

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