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短編小説  作者: ま行
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贈り物

 綺麗な青い空の下に居た。じりじりと肌を刺す日差しを受けている、つばの広い帽子を被り、男の子と女の子は隣り合って座っている。ジャングルジムの頂点で足を投げ出して、お小遣いで買ってきたアイスキャンディーを齧ると熱くなった体が少しだけ冷えた。


「暑いなあ」


 男の子が空を眺めてぼやく。


「夏だからね」


 女の子はそんなぼやきを笑う。


「そりゃ夏だけどさ、そんなに暑くならなくてもいいと思わない?調度いい気温になってくれればさ、電気代がとか言うお母さんの愚痴とか聞かずに済むんだぜ?」

「そんな季節に文句言ったってしょうがないでしょ?夏は夏をありがたく思わないと」


 男の子もそれは分かっていた。夏になれば楽しい事が沢山ある、長い夏休みに自由に使える長い時間、お祭りや花火スイカにかき氷、思いつく事は山ほどあった。それでも男の子は浮かない顔をしている、女の子もまた同じように浮かない顔ではあるが、どこか諦めているような雰囲気を纏っていた。


「そろそろ行っちゃうのか?」

「うん、夏が終わるころには」


 二人の会話が止まると同時にセミが元気よく鳴き始める、けたたましく鳴り響く音は夏の空に広がっていく、二人は暫し黙り込んでアイスキャンディーを食べた。


「なあこれ貰ってくれないか?」


 男の子はポケットからプレゼント用の包装をされた物を取り出して女の子に差し出した。


「これは?」


 女の子はそれを受け取って男の子に聞く。


「プレゼント、遠くに行っちゃうから選んだ」

「開けていい?」


 その問いに男の子は頷いて答える、女の子は丁寧に包装を取って中身を取り出した。


「わあ綺麗」


 それは髪を結う為の紐だった。夏の空のように青い色の紐の先に飾りで小さなガラス玉が付いている。


「今までずっと一緒に居たのに、居なくなっちゃうなんて何か信じられなくて、俺の事忘れないでいてくれる?」

「うん、絶対に忘れない」


 女の子は贈り物をぎゅっと胸に抱いた。ジャングルジムから先に飛び降りると、男の子に向かって言った。


「ねえいつかまた会えた時、私必ずこの紐で髪を結ってるよ。もし見つけてくれたら絶対に声をかけてね」


 男の子も隣に飛び降りて言う。


「うん、絶対忘れない。必ずまた会おう」


 大きく広い青空の下で交わした約束に、二人は笑い合って気持ちを確かめ合った。




 時が経ち、男の子は高校生になった。入学して初めての夏を迎える頃、転校生が来るとクラスが浮足立った。


 皆が盛り上がっている中、夏が近づく度にあの約束を思い出す。そうすると何だか混ざる事が出来ずに廊下で一人佇んでいた。


「暑いなあ」


 独り言をぽつりと呟く、誰にも聞かれていないと思ったら不意に声をかけられた。


「もう夏になりますから」


 驚いて振り返る。そこには女子が一人いた。


「びっくりした。一人だと思ったから」

「突然ごめんなさい、何かちょっと懐かしくなってしまって」


 懐かしいとはどういうことだろう、それを聞こうとして顔を上げると後ろに纏められた髪を結んでいるのは、あの時渡したプレゼントだった。それを目にしただけで分かった。二人はお互いの手を取り合って再開を喜んだ、夏の別れが結び付けた夏の出会いは、しっかりと彼女の髪に結われていた。

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