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短編小説  作者: ま行
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チンピラ

「おうおうおうテメ何ガンくれてんだコラ」


 男は見るからに不良と分かるような服装をして、身につけたギラギラとしたアクセサリーを光らせながら、肩を怒らせて歩いていた。と言ってもその男はどうにも小物感が拭いきれず、因縁をつける相手も如何にも気の弱そうな者や、自分より体の小さい者などで、ちょっとでも見た目が厳つい人やパトカーが通る度に、背筋を伸ばし景色に溶け込むように気配を消していた。


 その男が一人の時であれば正直人畜無害な小童であるが、厄介な事に大層な偉丈夫な強面に気に入られているようで、その男が連れた子分達と一緒に居る時には傍若無人に振る舞う面倒な人間になる。


 そうなると迷惑を被るのは周辺の人間である、治安が悪くなる上に居るだけで景観を損ない、街の評判を大きく下げる。当人たちにその気が有ろうと無かろうと、弁える事が出来ないだけで周囲から異物として扱われてしまうものだ。


 そんなチンピラだが、最近変化があったらしくめっきり顔を見なくなったと、街の人間たちの噂になっていた。曰く親分格の偉丈夫が、何やらよくない事をやらかして警察のお世話になったらしく、パワーバランスが崩れてしまった集団はあれよあれよと散っていった。虎の威がすっかり当てにならなくなったチンピラは、どうしてか鳴りを潜めてしまった。


 どこへ行ったのだろうかと話題になっていたが、それと同時期にある総菜屋が話題になっていた。その総菜屋は今まで老夫婦が細々とやっていただけだったが、どうやら新しく従業員が入ったそうで、料理の質がぐんと上がり、味よし量よし値段よしの店になったと評判になっていた。


 その新しい従業員と言うのが件のチンピラで、やんちゃな見た目はすっかりやめて、清潔感あふれる好青年になっていて、何があったか分からないが更生してしまったようだ。


 ちなみに総菜屋で一番人気になった料理はきんぴらだった。料理上手なチンピラがきんぴら作りで名を上げるとは誰も思わなかった。

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