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短編小説  作者: ま行
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初デート

 何度も何度も鏡を覗いては前髪をちょいちょいといじる。触った所で大きな変化がある訳でもないのにどうしてか気になってしまう、顔を色々な角度から見る。どこから見ても隠しきれない嫌な所は消える事はないけれど、ちょっとでもよく見えるようにと願って手を尽くす。


 時計を見て家を出る時間を確認し、どれくらいでつけば好印象か、失礼にならないタイミングはどうか、あまり気持ちを逸らせても相手を引かせてしまわないかと、無性にそわそわと体を動かす。


 こんなにも気分が浮ついているのには理由がある、それは今日が初デートの日だからだ。ついに憧れの人と一日を共にする事が出来ると思うと、心は踊りだし気持ちがぽわぽわと跳ねまわる。それと同時に緊張で頭からつま先まで冷水に浸かったように冷えていくようでもある、相反する感情を抱えて手慰みにスマートフォンを触る。取り留めのないニュースを目で追っていてもちっとも気持ちは落ち着かないが、どうにか時間を潰す事は出来た。


 服装を確認してもう一度鏡を見る、よしと頷いて家を出て待ち合わせ場所へと向かった。晴天の空に、天気予報も太鼓判を押している、何の憂いもなさそうだと胸を撫でおろした。


「待ちましたか?」


 相手はもうその場所で待っていたので足早に駆け寄る。


「いや丁度今来た所だよ」

「よかったです。では行きましょうか」


 肩を並べて歩く、手を繋いでみたいけれど初デートでそこまでの勇気はない、お互いに緊張をしているからか、中々会話を切り出す事なく歩みを進める。


「そ、そういえば今朝見たニュース何ですけど、ちょっと物騒でして」

「そうなの?どんなニュース?」

「はい、犯人は若い男の人らしいんですけど、交際を持ち掛けて親密になった所で相手の女性を殺してしまうそうで、顔や姿をコロコロと変えていて捕まらないそうですよ」

「へー、それは物騒な事だね」

「でもどうしてそんな人と付き合ってしまうんでしょうね、私だったら絶対引っかからないな」


 そんなに怪しい人であればきっと異様な雰囲気を纏っている筈だ。一目見たらきっと分かる。


「今日はどこに行こうか、君に声をかけたあの喫茶店に行ってみる?」

「いいですね、初めて出会った場所に一緒に行けるなんて素敵です」


 行先も決まって二人は揃って歩き始める。そのうちに男の方が口を開いて言った。


「犯人はそんな人を狙っているのかな?」

「どういう事です?」

「まさか引っかかる事はないだろうと思っている人に声をかけているとかさ」

「そんな、一目見ただけでそんな事分かりませんよ」


 男はふっと鼻で笑うとそれもそうだねと同意して、デートの続きを楽しむ事にした。男の懐にはいつでも取り出せるようにしてあるナイフが、ギラギラ光ながら次の獲物を待っていた。

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