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短編小説  作者: ま行
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奇妙な殺人

 探偵はとある殺人事件を追っていた。その事件内容はどれも奇妙な物で警察から協力の依頼があった。探偵もどれ程力になれるか分からないが、頼られれば力になりたいのが人情である。


 しかしその殺人を調べれば調べる程奇妙で不可解なものだった。被害者に共通点は少なく、身分の差も様々で関連性はない、老若男女問わず被害に遭っていて絞り込める要素は手がかり不足である、死因についても不可解な点が多くハッキリとしない、被害者に唯一共通している点があるのは、皆顔がにこやかに死んでいる事だった。


 どの被害者も穏やかに満足そうに満面の笑みのまま死んでいる、どの被害者も苦悶の表情を浮かべている者は一人もいなかった。死に際して何か残虐非道な行為があったとは思えない、しかし命を失うというのにそんな事があるだろうかと探偵は頭を悩ませていた。


「どうです?進展はありましたか?」


 助手が缶コーヒーを持ってきて探偵に手渡す。


「さっぱりだよ助手君、現場にも手がかりは一切残されていない。外傷も内傷もない遺体、にこやかな笑顔の死に顔、どれもこれも奇妙だ」

「一体どんな方法で行われているのでしょうか?」

「そこだよ助手君、それが一番奇妙な事だ。遺体には一切他人の痕跡が残されていない、そんな事がありえるかね?自殺や自然死か、その可能性もありえなくないが、そんな予兆が一つも見当たらない被害者もいた。それに加えてこの笑顔だ、絶対に誰かが関わっていると思うのだが」


 手詰まりかも知れないなと思い缶コーヒーを一気に飲み干す。きりっとした苦味が喉を通り抜け腹の底に重苦しい気分が溜まっていくようだった。


「何故笑顔何でしょうか?」


 助手がポツリと呟く。


「何故、何故か、笑顔になる時と言えばどんな時だい?」


 探偵は助手に聞く。


「そうですね、嬉しい事があったりいい思いをしたり気分がよかったり、まあ死とは対極の時ですよね」

「死と対極なのに顔は笑顔、この矛盾点が鍵になりそうな気がするのだが正直もう私にはどうにもならないかも知れないな」


 探偵はがっくりと肩を落とす。そんな様子を見て助手はすかさず言った。


「そんなことありませんよ、先生でなければ分からない事も沢山ありました。それにこれまでも数々の難事件を解決してきたじゃないですか、その輝かしい経歴を僕は知っていますよ」


 助手の励ましと称賛の言葉に探偵は少しだけいい気分になって笑った。その瞬間探偵の頭の中で一つの考えが浮かび上がった。


「助手君、分かったかもしれないぞ。少し調べて欲しい事があるのだが」


 助手は探偵の指示を聞いて動き始めた。探偵も自分の考えを警察に伝える為に動き始めた。




 殺し屋は依頼があって下調べをしていた。今回のターゲットは警察にも協力依頼をされる程の探偵である、正直楽すぎるターゲットだと思った。自分の殺しのスキルにかかればこの探偵は弱点だらけである。


 仕事の為に探偵が事務所に居るタイミングで忍び込む、対象に接触さえできれば仕事は終わったも同然だ。しかし殺し屋を待っていたのは探偵と待っていた警察官達だった。


「やあようこそ、私を殺しに来たのだろうがその依頼を出したのは私だ。上手い事引っかかってくれて助かったよ」


 殺し屋は両手を上げて言った。


「降参だよ、まさか罠にかけられているとは思わなかった。俺の存在は殆ど知られていない筈なのによく辿り着いたものだ」

「私もこの殺人方法を思いついた時にはそんな馬鹿な事があるものかと思ったよ、しかし事実君は現れたのだから、現実なのだな。対象を褒め殺すという方法は」

「褒め殺しという言葉があるだろう?まあこんな方法を使えるのは俺だけだがね」


 死に顔が満面の笑みであったのは相手に死ぬまで褒められたからだった。そんな突飛な殺人方法があるとは誰一人として思いつかなかった。こうして奇妙な殺人事件は終わりを告げるのであった。

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