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短編小説  作者: ま行
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山頂

 とある高く険しい山があった。


 その山の頂を目指して多くの登山家達が挑戦したが、そこに辿り着く者は中々現れなかった。命を落とす者、諦める者、遭難し心挫ける者、理由は様々であるが、とにかくその頂は遠く高く人が登り立つのを頑なに拒み続けた。


 どうすればそこに辿り着けるのか、登山家達は専門家も交えて意見を出し合い、ルートの検討に装備の種類を精査して頂上を目指す。何度も挑戦を続けるも、結果を出す事が出来なかった。


 そうして皆が頭を悩ませていると、山岳についての取材を続けている記者が現れ、その山の地元に住む一人の女性が山頂に登った事があるという話をした。そんなまさかとは思いながらも、それが本当であるなら登山家達の面目は丸つぶれである。すぐにその女性の元に赴いて話を聞く事になった。


 女性の元を訪れた登山家達は驚いた。女性はすっかり老齢で、山登りが出来そうな見た目でもない、体型は大柄でずんぐりとし、階段を下りるだけでも息が上がるような人だった。


「貴女があの山の山頂に辿り着いた事があるという話は本当ですか?」


 一人の登山家が堪らなくなって聞いた。


「ええ、本当ですよ」


 女性の言葉に皆信じられないというように顔を見合わせた。


「やはり大変な苦労をなされました?」

「いえ、別に大変な事はありませんよ。私はサンダルでそこまで行きましたし、日帰りで降りて帰ってきました」


 ますます信じられる話ではなかった。そんな事はありえない、皆が口々にそう言葉を交わして、中には女性に罵声を浴びせる者まで現れ始めた。興奮した人を皆で取り押さえて、非礼を詫びると学者の一人が聞いた。


「ちなみに登頂したのはいつですか?」

「私がまだ子供の頃です」


 それを聞いて学者は納得がいって皆に説明を始めた。この辺の山岳地帯は地殻変動が激しく起きていて、百を超える高齢の女性が登頂した時の高さは小高い丘程度だったのだ。女性が登頂を果たしたのも家族とのピクニックだった。


「皆さんあの山を登るのに実に苦労しているようですね、もう何十年早く登っておけばよかったのに」


 女性がそう言ってけらけらと笑うのを見て、そこに集まった者は皆肩をがっくりと落とした。


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