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短編小説  作者: ま行
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無知

 賢くなる為にはどうすればいいかと岩に座って悩む人が居た。賢くある事は人として優れていると思い込んでいたからだ。無知は罪、聞きかじった言葉が頭の片隅にこびりついて離れない、罪であるならなんとかせねばと思い立ち悩む。


 さりとて賢い人がどう賢くなったかを知らなかった。それに賢い人でもすべての事柄を知っている訳でもない、ではその人は賢い人と言えるだろうか、それでも物を知らぬ愚者よりはるかに賢くて偉い筈だ、ならばやはり賢いと言って差し支えないのだろう、堂々巡りを繰り返しどうすれば賢くなれるのか、賢いとは何なのか、誰に認めてもらえればいいのか、そんな事をずっと考え続けていた。


「何をしているんですか?」


 いつしかその様子を見かねて話しかけてくる者が現れた。


「賢くなる為にはどうすればいいか考えているのだ」

「それはまた何故?」

「無知は罪と聞きそれを嘆きどうにかせねばと思い立ったのである」


 いまいち要領を得ない説明に首を捻りながらも、その真剣な様子を見て質問をした人は頑張ってくれと金を少しばかり置いて行った。そんなつもりではなかったのに、期せずしてそのような事になったので、面白がってその人と問答をしては金を置いて行く人が集まるようになった。




「あそこの人だかりは何ですか?」


 ある人が指差して言う。

「ああ、あそこで何やらパフォーマンスが行われているようです」

「それはどんな?」

「無知である事を恥じた人に色んな事を教えてあげるそうですよ。不思議な事に教えた人がお金を置いて行くそうです。どうしてまたそんなパフォーマンスを思いついたのか分かりませんが、あれが無知の知というやつですかねえ」


 石に座り考える人はどうしてこうなったのか分からないまま、教えられる知識に頷き続けては賢くなりたいと語るのだった。

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