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短編小説  作者: ま行
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不死身

 とある研究室で博士が開発していた薬が完成した。助手と博士はその完成を喜び高価な酒を開けて一晩中酌み交わした。


「この薬の完成に苦節何年を費やしただろうか、君もよく私についてきてくれたものだ」


 助手は博士の空いたグラスに酒を注ぎ足し言った。


「何をおっしゃいます。この研究は全人類の夢、生命の悲願です。先生の研究開発のお手伝いができて僕はとても光栄ですよ」


 そう言って助手も景気よく酒を一気に口に流し込む、博士もその姿を見て気をよくして一気に飲み干した。


「こうして何を気にする事もなく酒をいくらでもかっくらう事が出来るなんて、何だかとても気分が良いですね」

「ああ、我々にはもうどんなに身体に悪影響のある物質や成分は一切効かない。どれだけ不摂生をしようとも病魔に侵される心配はないぞ」


 博士と助手が開発した物は「不死身になる薬」で、自分たちがまず初めに完成品を飲んでいた。二人の体はもうどんな痛みも感じず、どんな病気も患わず、死を恐れる事が無くなった。不死身になった体を実感するには難しいが、どれだけ度数の高い酒を一気に飲み干そうとも何ともない、二人は薬の完成ににやけ顔で大笑いしながら騒いで回った、




 不死身の体を得て何百年と経った。博士と助手は骨ばってやせ細った腕を懸命に動かして、ようやく念願の薬を完成させた。今度はお互い喜び合う事もなく、我先にと完成した薬を奪い合いそれを飲みほして、あっという間に倒れて死んでしまった。


 不死身の体を得たものの、自分の生命が脅かされない生活を続ければ続ける程刺激が足りなくなっていった。老いても死ぬこともなく、活動に何の支障もない、しかし生きる事にどんどんと飽きるようになってしまった。新しい時代は目まぐるしく変化していく、それに適応する為にはどんどん新しい事を自分に取り入れていく必要がある。三つ子の魂百まで、いかに不死身であろうとも人間性はそうそう変わらない、結局博士達は死なない体で時間に取り残されていってしまったのだった。

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