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短編小説  作者: ま行
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パンチングマシン

 とある古びたゲームセンターの一角に置かれたパンチングマシンは、あちこちにガタがきていて殴っても正確なデータが出ず、きちんと遊ぶ事もできないポンコツである。


 しかしポンコツはポンコツでも、古くて雰囲気の悪いゲームセンターで一番の人気ゲームで、時には行列ができて順番待ちに一時間かかる事もあるという、何とも不思議な話だがそれには立派な理由があった。


「ああクソ!また駄目だった!」


 前の男がパンチングマシンで出した数値は999だった。しかしその数値は驚くべき数字でも何でもない、パンチを打った男もガリガリで腕も細く、隠された筋力を持っているようなガタイでもない、何故最高値が出るかと言うとパンチングマシンが壊れているからだ。一番よく出る数値が最大値という出鱈目ぶりだ。


「おい!終わったならさっさと退きな!」


 列の後ろからヤジが飛ぶ、男は渋々とグローブを外して列から退いた。そしてまた最後尾に並ぶのだからもう訳が分からない。


 次に出た数字は80、筋骨隆々な大男が出した数値は中々珍しい物だったが、珍しいだけで意味はない、次にパンチを打ちこんだ女子高生は900だった。その次もその次の次も、どれだけ打ち込もうとも正しい数値を出す事のないパンチングマシンが何故こんなにも人気があるのかには理由があった。


 ゲームセンターの店長は、もう時代遅れのゲームしか置いていない店を畳もうと思っていた。昔の栄華はもう遥か遠く、小奇麗で豪華な直営のゲームセンターに皆集まる。古い機体はもうサポートは終わっている物も多く、自分で修理するのも限界だった。最後に何か面白い事が出来ないかと考えて思いついたのが、ポンコツのパンチングマシンを使ったある遊びだった。


「このパンチングマシンで777を出す人が居たら、入れられたお金はすべてあなたの物です」


 そう喧伝した。まともに数値を出さないのなら、それを逆手にとって遊びに変えてしまえばいいと、半ばやけくそのような宣伝だった。初めこそ見向きもされなかったが、一人が面白そうだとパンチしたら1が出た。そんな馬鹿なと連れがパンチをすると879が出た。ちょっと小突いただけで999が出て、思い切り殴りつけると10が出る。一人また一人と挑戦者が増えていき、ワンプレイの小銭も馬鹿に出来ない程の額になってきた。あれが手に入るならと思うと、客は客を呼んで集まり始めたのだ。


 当の店長はゲームセンターの運営はそっちのけで、待ち時間を潰すための商売に、つまみや飲み物、漫画本の貸し出しや他の娯楽を提供するなどで大儲けすることになった。


 我も我もとポンコツパンチングマシーンは次々に挑戦者を集める大人気ゲームとして稼働し続けている。

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