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短編小説  作者: ま行
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雨上がり

 降り続く雨の音が窓の外で静かに響く、天気予報を見て家を出たくせに傘を持ってこなかったので雨が止むか弱まるのを待っている。


 部活にも入っておらず委員会活動にも関わっていないので、普段学校にあまり留まることなく帰路につく、ここまで残ったことはなかったので、人が減った校舎の静けさと肌寒さに驚いた。


「あれっ武田まだ帰ってないのか?」


 担任の教師が教室に来て声をかける、傘を忘れた事を話すと学校で貸し出せる傘があると言われて留まる理由があっという間に無くなってしまった。


「しかし武田が学校に残っているのも珍しいな」


 これまた驚いた。担任の教師と言えどもそこまで親しく話したこともない、そもそも教師とのコミュニケーションなんて必要最低限しかとらないのだ。


「俺が直ぐ帰るの知ってたんですか」

「まあ担任の生徒の事だからな」


 自分の受け持つクラスの生徒のことはなるべく知ろうとしていると話す先生にまたひとつ驚いた。


「先生ってそんな熱心な人だったんですね」


 そう話す俺を見て照れくさそうに鼻の頭を掻いている。


「そんな事もないさ、武田は成績が良いし勉学に熱心で偉いな」


 今度は俺が照れくさくなり頭を掻く、他人に誉められるのはどうしてこうもむず痒くさせるのだろう。


「俺は別に熱心って訳じゃないです、勉強も親に塾に放り込まれてやってるだけだし」


 教育に重きを置く両親は、俺が悪い成績を取ることを許さない、そのお陰で与えられる数字だけは良いけれど、いつまで経ってもしっくりこないと感じている。


「いやいや、お前くらいの歳で勉学に励み続けるのは中々にエネルギーがいることだよ」


「何だっていい、やってみてもやらなくても、どんな時間もすべて力になるから」


「その中でも武田は勉強を頑張って結果も出している、誇っていい事だ」


 じんわりと目頭が熱くなる。


「実は今日塾をサボったんです、雨を言い訳にして帰れないからって」


「別に嫌になった訳じゃないです、ただ本当に何となく雨が降るならサボってみようかなって思ったんです」


「今日サボってみてよかったなって思ってます、先生、なんかよかったなって今感じるんです」


 話し込むうちに雨が上がって夕日が窓の雨粒を輝かす、静かに流れる雨上がりの放課後に心が洗われていくように感じた。

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